民主法律時報

日本放送協会事件(不当労働行為救済申立事件)中労委勝利命令のご報告

弁護士 野矢 伴岳

1 事案の概要及び争点

本件は、被申立人である日本放送協会(NHK。以下、「協会」という)が、全受労からの団体交渉の申し入れに対し、協会が外部の者であるとする坂元氏(組合の特別執行委員で堺労連事務局長)の出席を理由として団体交渉を拒否したことが不当労働行為にあたるとして申立人組合(全日本放送受信料労働組合堺支部)から申立てを行った事件で、初審大阪府労委において、協会の団交拒否があったとして文書手交が命じられたことにつき、協会側から中労委に再審査の申立てがされた事件です。
本件の争点は、1.組合員である地域スタッフは協会との関係で労働組合法上の労働者と言えるか、2.平成23年11月2日団交申し入れに対する協会の対応は、正当な理由のない団交拒否にあたるか、の各点でした。

2 中労委の判断

平成27年12月7日付命令では、結論として、いずれの争点についても組合の主張が容れられ、再審査申立てを棄却するとされました。
争点1に関しては、INAX、ビクターの最判事例と同様の基準による検討を行い、(ア)事業組織への組み込みについては、協会が地域スタッフの目標数達成のために強い働きかけを行い、取次件数や集金額等につき法人委託に比較しても地域スタッフが相当大きな比率を占めていること等、(イ)契約内容の一方的・定型的決定については、統一様式の契約書が用いられていること等、(ウ)報酬の労務対価性については、出来高性を基調としつつも基本給的な性格が加えられた給与体系であることや、報奨金や餞別金など労務の供給に着目した制度があること等、(エ)業務の依頼に応ずべき関係については、地域スタッフは協会から目標数を設定され、その達成のために強い働きかけがされている実態があること等、(オ)労務提供に係る拘束や指揮監督については、協会のマニュアルが詳細にわたっていたこと、目標数達成のために強い働きかけが行われていたこと等、(カ)顕著な事業者性については、再委託は補助的なものに留まること、その他顕著な事業者性を認める要素が存在しない等、各々の考慮要素について、ほぼ組合の主張するとおりの事実を認定し、地域スタッフの労組法上の労働者性を肯定しました。

争点2については、坂元氏を地域スタッフではない部外者とし、同人がいなければ交渉を受けると述べ、同人が出席する余地を与えない明確かつ強固な姿勢を一貫して示していることからすれば、協会は本件団交申し入れに対し、坂元氏が出席することを理由に団交を拒否したとみるのが相当、としています。
この点につき協会は再審査段階において、出席者について双方了解のうえで決定するルールが「事前了解」されていたとして、本件団交申し入れに対する団交拒否の正当な理由になると主張しましたが、協会が提出した事前了解を示唆する書証は客観性が高いとは言えず、協会側の一方的な見解を記載したものであり、むしろ全受労側は合意をしたものではないとの立場を表明していたとして、協会主張のようなルールについての合意は認められない、と判断しました。

その他注目すべき点として、救済利益についても、本件が今後も行われる協会と組合との団交における出席者の問題に係るものであることや、協会が今後も同様の行為を繰り返す可能性は否定できず、その防止を図ることが必要であり、救済利益が失われているとはいえない、とされています。

3 本件命令の持つ法的・実践的意義

本件は、NHKの地域スタッフからなる諸組合にとって、使用者側が、不当にも長年に渡り争って来た労組法上の労働者性に関し、委員会の命令においても、最高裁判例の枠組みに従って正当な判断を示したものであり、今後の当該組合の活動にとって重要な意義があるといえます。
また、団交拒否の点についても、組合の交渉担当者は組合が決定すべき事項であることを明言し、これを制限する正当な理由を認めなかったことは、当然のことではありますが、これからの交渉を行う上での実践的な意味を持つと思われます。
上記に関しては初審でも同様の判断がされましたが、本件命令においては、救済利益についても付言された点には、労働者にとっての団交の価値について再確認したものとして、新たな意義があると考えています。

4 最後に

現段階で事件確定には至っておらず、協会側から取消訴訟が提起される可能性も高いと思われます。弁護団としても、手綱を緩めず、さらなる労働者の地位向上に向け、奮闘を続けます。

(弁護団は、河村学、井上耕史、西澤真介、野矢伴岳)

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