民主法律時報

ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ

弁護士 足立 敦史

1 2019年3月のブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ
2019年3月28日18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 労働判例研究ゼミが開催されました。労働組合の方や会員弁護士にご参加いただきました。今回のテーマは「休職と復職(特にリハビリ出勤の点について)」です。

2 検討した判例・裁判例
まず、休職と復職の前提知識、特に復職の要件である「治癒」=(休職事由の消滅)該当性の判断基準について検討しました。

その後、NHK名古屋放送局事件(名古屋高判平成30年6月26日 労判1189号 頁)について、筆者から報告させていただきました。テスト出局(いわゆるリハビリ出勤)中は、期間によって無給であるとする就業規則があったものの、テスト出局中の労務は労基法上の「労働」に当たるとして、最低賃金相当額は支払われるべきだと示された裁判例です。リハビリ出勤の対価は、最低賃金では労務対償性を欠くため、予め業務内容に応じて賃金額を規定しておくことが重要であると確認されました。

続いて、西川翔大弁護士から、東京電力パワーグリッド事件(東京地判平成29年11月30日 労判1189号 頁)について報告いただきました。労働者がうつ病であることを認めず、リワークプログラム(うつ病による休業からの復職を目的とした医療機関のリハビリプログラム)への出席に積極的でなかった等の理由から、休職期間満了時に「治癒」したと認められなかった裁判例です。裁判所は休職事由の消滅の判断にリワークプログラムへの出席を重視していることから、うつ病であることを否定することに固執しすぎても労働者が救済されない場合があることを学びました。

最後に、清水亮宏弁護士から、綜企画設計事件(東京地判平成28年9月28日 労判1189号 頁)について報告いただきました。リハビリ出勤後に休職事由が消滅したかどうかを判断するに当たっては、従前の職務を通常程度に行うことができるかのみならず、相当期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込めるかどうかの検討を要すると判断した裁判例です。本件では、使用者からの通知の意味も争われ、休職期間の満了による退職なのか解雇なのかは、就業規則の定め方次第であることも確認されました。

本日のゼミでは、参加者から、リハビリ出勤中の賃金について最低賃金では到底生活できないこと、労災給付との関係も問題になること、うつ病による休業の場合、通勤するだけでも相当な精神的負担がありうること等の意見も出て、現場の声を踏まえた有意義な議論となりました。

3  さいごに
次回のブラック企業対策! 労働判例研究ゼミは2019年6月11日(火)18時30分~@民法協事務所を予定しています。皆様のご参加をお待ちしております。

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