民主法律時報

有期労働契約の無期転換をすすめよう!

弁護士 河 村  学

 みなさんは、労働契約法18条の無期転換ルールについてはご存じでしょうか。アンケートでは、名前すら知らない労働者が約4割いるとされておりまだまだ浸透していません。では、この無期転換ルールについて厚生労働省で見直しが議論されていることはご存知でしょうか。2013年法改正の附則によって、施行後8年を経過したときに見直し検討をすると定められており、厚生労働省の「多様化する労働契約のルールに関する検討会」でその議論が始まっています。しかし、このことはほとんど知られていません。

ではさらに、民法協がこの議論に対して2021年12月に「無期転換ルールの見直しに関する意見書」を発表したことはご存知でしょうか。民法協会員なら知っているはずですが、その内容になるとちょっと妖しくなります。

さらにさらに、上記検討会の報告書(たたき台)が出されたのはご存じでしょうか。これは今年2月21日にホームページに掲載されたもので、ほとんどの人は知らないでしょう。ただ、この報告書に基づいて、おそらく立法等がすすめられていきます。

労働者の権利についての大事な規制が人知れず改変されようとしているのは恐ろしいことです。

 無期転換ルールとは、大雑把にいうと、有期労働契約を更新するなどして5年を経過した場合、労働者が求めれば無期労働契約に自動的に転換するというものです。使用者は拒むことができないので、雇止めの恐怖にさらされてきた有期契約労働者にとって、その雇用や収入の安定を図る上で重要な規制といえます。

この無期転換ルールの見直しに際して発表された民法協の意見書は、有期労働契約規制のあり方は本来どうあるべきかを論じた後、無期転換ルールをもっと労働者に利用されやすく、権利を保護するものとするための諸施策を提言しています。具体的には、①無期転換申込み機会の確保と労働者への周知の徹底、②無期転換前の雇止めの防止、③通算契約期間の短縮及びクーリング期間の廃止、④無期転換後の労働条件の規制です。それぞれの項目について具体的に提言をしていますので、民法協のホームページから取得いただき、有期労働契約に対する理解を深めて欲しいと思います。

 先般出された検討会のたたき台では、上記①に関しては、無期転換権が発生する契約更新ごとに申込み機会(別段の定めをした場合、転換後の労働条件の内容も)の通知を使用者に義務付ける、②に関しては、雇止めの有効・無効に関する考え方を周知する、更新上限の有無・内容の明示を使用者に義務付ける、③に関しては、通算契約期間5年、クーリング期間6か月は見直ししない、④に関しては、就業規則の合理性判断に委ねる、無期転換労働者と他の無期契約労働者(いわゆる正社員など)との均衡についても特に立法せず、⑤有期雇用特別措置法についても触らない、という方向で提案されています。いろいろ書いていますが、無期転換権の通知を義務付ける以外、現状のままというに等しい内容です。

対応して言えば、①については、別段の定めによる労働条件低下を許容している、②については、更新上限設定の合理的理由を不要としている、無期転換権を行使したことによる不利益取扱いの禁止も規定しない、③については、有期労働契約を現状どおり温存するものである、④については、無期労働者同士では、パート・有期法8条、9条のような規制すらしない、⑤については、一定の要件を満たす労働者については 年間無期転換できないとか、定年後の有期契約労働者は無期転換できないとの「特例」を温存する、などの問題があります。

生活や雇用の不安定さに苦しむ労働者は多いはずで、もっと、もっと声を上げる取り組みが必要です。

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