民主法律時報

エミレーツ航空事件報告

航空連・航空一般労組スカイネットワーク大阪支部 委員長 赤 田 克 彦

1 組合結成

エミレーツ航空西日本支店予約発券課に、2012年2月、5名の新入社員が配属されたが、その5名に対し、上司から皆の前で叱責などが繰り返された。そのため、体調不良やストレス疾患となり、パワハラに耐えられず、5名中2名が退職してしまった。残された3名は、この事態を打開するため、日本支社、さらには労基署にも相談した。翌2013年1月、航空連スカイネットワーク大阪支部に労働相談があり、労働組合を結成するに至った。

2 団交で要求前進

組合は、エミレーツ航空西日本支社に対し、労組結成通知と団交申し入れ書を提出し、パワハラ問題、サービス残業を議題とした第1回団体交渉が、2013年2月22日、本社の人事担当の責任者出席の下で開催された。3回の団交によりパワハラを認め、サービス残業改善にも一定の前進があった。また、2013年5月に中国・広州コールセンターが開設され、大阪コールセンターへの電話が転送されるようになり、組合は業務量減少に伴うリストラの可能性を危惧し会社に問いただしたところ、会社は「雇用は保障され、配転もない」旨回答した。

3 職場閉鎖―ロックアウト―解雇

しかし、この頃、日本支社長が来阪しスカイネットワーク大阪支部と懇談する機会があった際に、支社長は、「支社長は日本支社における総務全般の責任者で、人事、労務については本社の担当となっているので、労使間の問題については口出しできない。」といいながら、「予約発券課の3名は職場でわがままを言っている。」などと非難する一方、組合員には、労働組合(スカイネットワーク)を誹謗・中傷する言動で分断を図ってきた。

その後、労組との窓口だった日本支社の総務担当者が退職したころから、会社は、組合に対する立場を変えてきており、団交が開かれない状態が続いた。新しい総務担当者が着任し、2013年11月にようやく団交が開催されたが、団交には出ないはずの日本支社長が出席し、これまで諸問題を話し合ってきた到達点を覆してしまった。さらに、この直後支社長は退職し、パワハラ問題、サービス残業問題は宙に浮いた状況となってしまった。

問題解決のため労組としてたびたび団交を申し入れたが、開催されず、後退回答の状態が続いた。そして、支社長空席のまま翌2014年5月20日に、会社は、事前協議もなく突然「日本路線の赤字」を理由に3名の組合員が所属する職場を閉鎖し、希望退職等を提案してきた。その後、数回の団交を行うも、全く前進はなかった。雇用継続を求めた組合員3名に対し、会社は、閉鎖以降「就業する職場はない」とロックアウトを行った。そして、2014年9月1日付で解雇通知が届いた。

4 法廷闘争へ

労働組合は、ロックアウトそのものが不当労働行為に当たるとして労働委員会への申し立てを準備していたので、解雇も含め大阪府労働委員会に申し立てを行った。続いて、大阪地裁に仮処分申立、地位確認訴訟を行った。結果は、勝利の仮処分決定、地位確認は、解雇無効の勝利判決(会社は高裁へ控訴、その後取り下げ)、大阪府労委は、「自宅待機及び解雇は不利益取扱いとして解雇がなかったものとする」との勝利命令を出した(会社は中労委へ再審査申立、現在審議中)。

5 一刻も早く職場復帰させ正常な労使関係の確立を

会社は、大阪高裁判決直前に控訴を取り下げた。すなわち、会社は、自ら非を認めたことになる。あわせて、労働委員会において不当労働行為が認められている以上、会社は、原告を希望職場に復帰させ、労使関係の正常化のために、労働組合の解決に向けた要求を全面的に受け入れるべきである。

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