弁護士 安原 邦博
余命三年時事日記運営者(運営母体である一般社団法人やまとの代表を務めたり、その活動を内部で担ったり、経済的利益を受けたり等している者)に対する法的責任追及において一定の成果を得たので報告をする。
1 余命三年時事日記による大量懲戒請求事件と、それら懲戒請求の名義人になっていた者らの法的責任
余命三年時事日記とは、在日コリアンの「有害性」等、在日コリアン等に対する差別意識を不特定多数の者に訴えかけ、協力者を募る等しながら、在日コリアンまたはその協力者とみなした者等を日本社会から排除するための具体的活動をおこなってきたインターネット・ブログである。
余命三年時事日記運営者は、日弁連の2016年7月29日付け「朝鮮学校に対する補助金停止に反対する会長声明」や各地の弁護士会における同様の意見表明を受け、在日コリアンまたはその協力者とみなした弁護士に対する懲戒請求を企て、そのブログ読者を煽動して懲戒請求者として名乗りを上げさせ、その者らを名義人とする懲戒請求書を用意し、一人の被害者弁護士につき約千名分もの懲戒請求書を取りまとめ、それらを各地の弁護士会に送りつけた、いわゆる「大量懲戒請求事件」を起こした。その主張する懲戒理由は、「違法である朝鮮人学校補助金支給要求声明に賛同、容認し、その活動を推進することは、日弁連のみならず傘下弁護士会および弁護士の確信的犯罪行為である。利敵行為としての朝鮮人学校補助金支給要求声明のみならず、直接の対象国である在日朝鮮人で構成される在日コリアン弁護士会との連携も看過できるものではない」などというものであった。同事件については、2018年12月16日毎日放送「バッシング~その発信源の背後に何が~」(斉加尚代記者)等で報道されてきた。
弁護士への懲戒請求が事実上又は法律上の根拠を欠く場合において、請求者が、そのことを知りながら又は通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに、あえて懲戒を請求するなど、懲戒請求が弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められるときには、違法な懲戒請求として不法行為を構成する。余命三年時事日記に煽動されて自己の名で懲戒請求をおこなった加害者らに対しては、各地の被害者弁護士がこれらの者の法的責任を訴訟等で追及してきた。このうち北海道の弁護士3名が原告となり提起した訴訟で提出された意見書として樋口直人教授が執筆された「『余命ブログ』による弁護士大量懲戒請求事件に対する意見書」がインターネット上で公開されているので、この問題の分析の参考に参照をされたい。
2 大量懲戒請求の中心人物である余命三年時事日記運営者の法的責任を認めさせた勝利解決及びその意義
大量懲戒請求事件を引き起こした余命三年時事日記運営者は、上記の違法な大量懲戒請求において在日コリアン弁護士を主な標的としただけでなく、それ以降も、「先日の安倍総理私邸襲撃を我々は総理暗殺未遂事件ととらえている。あきらかに、背景には在日コリアン弁護士協会と反日連合勢力の存在がある。これは、戦時には全員が敵国兵あるいは便衣兵となる集団で、当然、殲滅対象である。本稿は、その主力である在日コリアン弁護士協会に関する資料である」、「在日コリアン弁護士協会(LAZAK)は日本と日本国民にとってプラスになる存在にはなり得ない。日本国憲法を遵守しない反日政治活動を目的とする外国人勢力は早急に駆逐すべきであるとして、ここに外患罪適用を求めて告発するものである」などとしながら、それらとともに在日コリアン弁護士協会(LAZAK)会員弁護士の姓名や事務所名称・所在地等を記載したリストをそのブログに掲載する等の名誉毀損や差別煽動等をおこない続けた。
そのため余命三年時事日記運営者の法的責任を追及すべく、2021年4月頃、LAZAK会員弁護士を中心に弁護団を結成した。以降、幾年にもわたって連日のように投稿されてきた余命三年時事日記の精査を開始し、投稿記事における記載等の手がかりから23条照会等による調査をおこなって、それまで運営者として判明していなかった鈴木金三及び上村直を割り出した。このうち鈴木金三は、2023年3月26日毎日放送「バッシング 陰謀論と情報戦」(斉加尚代記者)においても余命三年時事日記に関わったとして報道されている者である。そして法的検討も積み重ねて、2022年秋にLAZAK会員弁護士が原告となって東阪で訴訟を提起した。
東京訴訟では、余命三年時事日記の運営母体である一般社団法人やまとのみを被告として大量懲戒請求の取りまとめを請求原因に損害賠償請求をした。そして2024年10月23日、東京高裁第12民事部(梅本圭一郎、工藤正、浅岡千香子各裁判官)において、「その姓名から朝鮮半島に出自を有するように見える弁護士であることをもって懲戒請求の対象に選定されている」、「本件懲戒事由では、『確信的犯罪行為』、『外患罪』、『利敵行為』、『売国行為』などの強烈な表現が用いられていることも勘案すると、本件懲戒請求は、控訴人が在日コリアンという範疇に属する弁護士であるとの民族差別的認識を背景として、弁護士懲戒請求制度をその趣旨を逸脱して利用し、背後に多勢を頼む態様で行われた少数者に属する者に対する侮辱的、威迫的かつ攻撃的な人格権侵害行為に及ぶものであった」、「本件懲戒請求は、民族差別的認識を背景として、背後に多勢を頼む態様で行われた少数者に属する者に対する侮辱的、威迫的かつ攻撃的な人格権侵害行為であって、控訴人は、これによって人格的矜持を傷つけられ、また、見ず知らずの第三者から不当な害意を向けられるという恐怖感を与えられたものといえ、これによる精神的苦痛は多大なものであった」と認定して損害を請求どおり55万円満額で認容する判決を勝ち取った(確定)。
大阪訴訟では、一般社団法人やまと、鈴木金三及び上村直を被告とし、LAZAK会員弁護士をリストアップしておこなった名誉毀損及び大量懲戒請求の取りまとめを請求原因に損害賠償請求をした。そして2025年11月20日、大阪地裁第17民事部(堀部亮一裁判長)において、次の内容の勝利和解を勝ち取った。
① 被告らは原告らに対し、本件にかかる活動により原告らが精神的苦痛を被ったことにつき謝罪する。
② 被告らは、本件投稿(その転載記事を含む)の削除に異議はなく、その速やかな実現につき誠実に対応する。
③ 被告上村及び被告鈴木は、原告らに対し、本件和解金として、連帯して、合計200万円の支払義務があることを認める。
(略)
⑥ 被告法人は、原告ら各自に対し、本件和解金として、300万円の支払義務があることを認める。
このたび法的責任を認めさせた鈴木金三及び上村直は、余命三年時事日記運営者のうち、上記大量懲戒請求の名義人になることもなく、さらに余命三年時事日記上で自己の名等の身元を明かすことも決してせずに、これまで法的責任の追及を逃れてきた者である。このたびの勝利は、インターネット等で少数者に属する者への差別意識を扇動し、多数の他者を利用して、標的にした者を社会から排除することを目的とした活動に関して、その活動を担ったり経済的利益を得たりしながらも自らは安全圏に身を置いてきた者らの法的責任を認めさせた点で大きな意義がある。実働弁護団のうち民法協会員は、今春博弁護士及び安原邦博である。








