民主法律時報

派遣労働者の利益は法的保護に値しない!―パナソニックエレクトロニックデバイスジャパン事件不当判決(福井地裁平成23年9月14日)

弁護士 河 村   学

  1. はじめに
     「労働者派遣法で守ろうとしている派遣労働者の利益は、…不法行為法上、法的保護に値する利益とはまでは評価できない」。福井地裁は、派遣労働者の切実な訴えに対してこのような判断をした。しかも、「被告ら(派遣先・パナソニック、派遣元・ケイテム)が労働者派遣法に違反する状態であることを知りながら(…)、原告を派遣労働者としてパナソニックのもとで就業させ、さらにその労働関係が終了するに至った」と認定した上での判断である。
     同法が守ろうとしている派遣労働者の利益は、「派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進」であるから(同法1条)、判決は、雇用の安定が違法に害されても、違法行為によりその福祉が図られなくても、裁判所は派遣労働者を救済しないと判断したことになる。

  2. 本件事案の概要
     ①本件の原告は、パナソニック若狭工場での工員の募集に応じて、2005年1月21日から同工場で機械のオペレーター等の業務に従事した。ただ、その募集は日本ケイテムという派遣会社が行っており、パナソニックが採用を決めた後、形式的には、原告とケイテムとの間で雇用契約書が作成されている。また、被告らの関係は、請負契約とされていた。その後、2006年11月1日からは、契約書の文言が派遣労働であるかのような体裁のものに変えられている。
     ②2008年12月18日、原告の申告により、福井労働局が労働者派遣法違反の是正指導を行った。偽装請負状態であったことや派遣受入期間制限違反の認定を行い、原告の雇用の安定を図る措置をとりつつ、労働者派遣を中止することを求めたものである。
     ③その後、パナソニックは、原告ら派遣労働者に対し、3ヶ月の期間雇用(継続雇用期間は最大2年11ヶ月まで)、賃金は時給810円とする提案を行った。ここの提案は継続雇用も保障されず、給料も大幅減額を伴うというもので、まさに断らせるために行ったような提案であった。

  3. 本判決の内容
     判決は、パナソニックが原告の就労当初から原告を指揮命令し業務に従事していたことを認めたが、黙示の労働契約の成立について否定した。その理由は、パナソニックが原告の採用に関与したとは認められないこと、原告の給料額をパナソニックが事実上決定していたと認められないこと、入退社の管理などをケイテムが行っていたことなどからである。
     また、労働者派遣法40条の4による労働契約成立の主張に対しては、同条の規定は、「間接的な方法で労働契約締結の申込み(意思表示)を促すという制度を採用しているに止まる」として、これを否定した。
    さらに、損害賠償の請求については、冒頭のような判示を行って、その救済の一切を否定した。

  4. 今後の取り組みについて
     本判決は、その事実認定自体に大きな問題があり、また、松下PDP事件最高裁判決の判示にも適合しない判断を行っており、控訴審では、これらを覆すことが重要になっている。
     さらに、根本的には、労働者派遣法は労働者を保護するものではないと割り切り、派遣先・派遣元が違法行為の限りを尽くしても、そのために労働者が企業の手前勝手な都合だけで路頭に迷っても、不安定な状態での就業を余儀なくされても、裁判所は労働者を救済しないとの態度を表明することについて、厳しい社会的批判が必要である。
     近時、日本トムソン事件大阪高裁判決(平成23年9月30日)やNTTアセットプランニング事件大阪高裁判決(平成23年10月6日)など、同旨の下級審判決が続いている。派遣労働者の権利救済の取り組みに裁判所が極めて否定的役割を果たしている。今後、さらなる実態告発と運動が求められる。

    (弁護団は、海道宏美、吉川健司、村田浩治、河村学)
     

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