民主法律時報

2・3陣訴訟が和解 メーカーが謝罪と解決金 1陣最高裁判決以来の大きな前進

 弁護士 江藤 深

関西建設アスベスト大阪2・3陣訴訟は、2025年8月8日、控訴審大阪高等裁判所第5民事部(徳岡由美子裁判長)において、原告と被告建材メーカー21社との間で和解が成立しました。一審大阪地方裁判所の判決で法的責任を認められた12社(ノザワ、エーアンドエーマテリアル、エム・エム・ケイ、ニチアス、太平洋セメント、日本インシュレーション、パナソニック、日東紡績、大建工業、神島化学工業、日鉄ケミカル&マテリアル、積水化学工業)が、被害者67人について解決金総額約12億4600万円を支払うほか、10社が謝罪し、その他の会社も哀悼の意を表するといった内容であり、国と建材メーカーの基本的責任を確定させた1陣訴訟最高裁判決(2021年5月)以来の大きな前進となりました。

この日の法廷(非公開手続)では、出席した原告を前に、和解条項が読み上げられた後、徳岡裁判長が「石綿関連疾患により極めて過酷な被害にあった被災者とご遺族のみなさまに対し、裁判所からも、心より哀悼とお見舞いを申し上げます。本日の全体和解の成立に向けたプロセスを糧にして、一日も早く全体解決が果たされることを期待しています」と述べました。また2陣遺族原告代表は「やっと夫に良い報告ができると思うと感無量です。被害者の皆さんが一日も早く解決の日を迎えることができるよう願っています」と挨拶し、村松昭夫弁護団長も「原告らにとって決断が求められた局面もあったが、今なお闘病生活を送る被害者もいる中で、早期の救済を最優先に判断した」と続きました。

本和解は、今年2月に大阪高裁が和解案を提示した後、5ヶ月あまり協議が進められた結果、原告被告の双方が、多くの被災者が亡くなったことなどの事実を重く受け止め、紛争の早期解決の観点から和解に至ったものです。前日8月7日には、同じく和解協議が進んでいた首都圏建設アスベスト東京1・2陣訴訟でも和解が成立しました。東京と大阪の大規模な解決により、全国の関連訴訟の被災者のうち約3割強の救済が実現したことになります。

一方で、一審判決と同様に、外装材を取り扱う職種の被災者や改修・解体作業関係に従事した被災者については、建材メーカーらの責任が否定されました。私たちは早期解決の見地から和解案を受け入れたものの、これらの被災者らについて建材メーカーらの責任が問われないことは、救済に分断を招くもので承服できません。建設アスベスト訴訟では今も、大阪4・5陣訴訟をはじめ、全国各地で多数の原告らが裁判を続けています。私たちは建材メーカーに、現在進行中の訴訟も含め、全てのアスベスト被害者の早期救済に向けた取組みを強く求めるものです。2・3陣の原告のみなさんも含め、引き続き、多くの支援をよろしくお願いします。

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