民主法律時報

マイナンバー違憲訴訟 大阪地裁判決の報告

弁護士 辰巳 創史

1 はじめに

大阪府内に居住する住民を中心とした145名の原告が提起したマイナンバー違憲訴訟につき、大阪地方裁判所第24民事部(池上尚子裁判長、山根良実裁判官、楠本康太裁判官)は、2021年2月4日、マイナンバー制度は憲法13条に保障される権利を侵害するものではないとして、原告らの請求を棄却する判決を言い渡しました。しかし、以下に述べるとおり極めて不当な判決です。

2 根拠となる憲法 13条の解釈について

原告らは、憲法13条によりプライバシー権が認められるとして、これを根拠に本請求を行いました。これに対し判決は、プライバシー権自体は認めなかったものの、住基ネット最高裁判決の「個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由」を踏襲したうえで、「個人に関する情報をみだりに収集、保有、管理又は利用されない自由を内容に含む」としました。その意味において、住基ネット最高裁判決より一歩踏み込んだ内容となっています。

また、プロファイリングについても、「個人情報が漏えいした場合に、漏えいした特定個人情報の名寄せにより、本人の関与しないところで、その意に反した個人像が勝手に作られるというプロファイリングの危険性」などとして、その危険性自体は認めています。

そして、これを前提として、判決は、①制度に法律・条例の根拠が存するか、②番号制度の目的が正当と言えるか、③番号制度がその目的に適合するといえるか、④個人番号及び特定個人情報の収集等により個人の人格的自律が脅かされる具体的危険性が生じているか、について「慎重に判断して決するべき」としています。しかし、その判断は慎重さからはほど遠いものです。

3 番号制度がその目的に適合するといえるか――手段の正当性について

判決は、原告が様々に指摘した行政手続における問題点などを具体的に検討することなく、番号制度が目的に資するとしています。

特に、原告らが具体的にその問題点を指摘した「費用対効果」についても、「その導入及び運営にかかる費用と番号制度による経済効果を比較した結果のみをもって目的適合性を否定することはできない」などとしており、まともな判断すらしませんでした。

4 個人番号及び特定個人情報の収集等により個人の人格的自律が脅かされる具体的危険性について

この点についても原告は具体的な事例を挙げてその危険性を多く指摘しましたが、判決はこれらを何ら考慮することなく具体的危険性はないとしています。

特に、「番号法」19条14号が「刑事事件の捜査」について個人情報保護委員会の監督も及ばないことを認めていることから、原告らは本訴訟において捜査機関による濫用の懸念を繰り返し主張しました。この点、判決は「令状審査や公判における証拠能力の判断の場面において、裁判所の審査が及ぶ」から具体的な危険は生じていないとして被告の主張を認めました。しかし、GPS捜査やイスラム教徒に対する情報収集にみられるように、そもそも捜査機関は司法機関に気付かれないように行うことも多いのであり、このような判断は、まさに司法の役割を放棄したものと言っても過言ではありません。

5 具体的な危険性は生じていないとした不当性

判決は、上記のような理由付けをもって、マイナンバー制度により原告らの権利を侵害する具体的な危険は生じていないとしてその請求を棄却しました。

しかし、現代社会におけるプライバシー権の重要性、そして飛躍的に発達したデジタル化の技術がこれを大規模に侵害する可能性を省みない、極めて不当なものであると言わざるを得えません。

原告及び弁護団はこのような不当な判決に抗議すると共に控訴により大阪高裁に舞台を移し引き続き闘い続けます。

(弁護団は、大江洋一、坂本団、小林徹也、向井啓介、服部崇博、辰巳創史 外)

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