民主法律時報

《書籍紹介》萬井隆令著『労働者派遣法論』――原理原則から語る労働者派遣の本質論

弁護士  村田 浩治

1 本書の内容

このたび、民法協会長の萬井隆令先生の著書『労働者派遣法論』が出版された。4つの章で構成されているが、第1章「戦後労働法と労働者派遣」のタイトルをみるだけでも本書がこれまで労働者派遣を扱ってきた他の本と全く違うことは分かるだろう。

「労働者派遣」をテーマにした本を探すとノウハウと行政解釈を解説するだけのものが目立つなかで、原理原則に溯って労働者派遣制度から説き起こそうとする本は異色である。

第1章では、労働は商品ではないと宣言した「フィラディルフィア宣言」から「直接雇用の原則」を考え、直接雇用の原則からその例外である「労働者派遣」制度を批判的に検討する。偽装請負と、違法派遣、労働者供給の解釈をめぐる学説、黙示の労働契約をめぐる学説、団体交渉における使用者概念と派遣先使用者をめぐる論点を自説を展開するだけでなく、判例、学説における反対説に対し目配りをして丁寧に説き起こされておりそれが1章から4章にわたって展開される。

2 本書の魅力

本書は、労働者派遣制度を「物心ついた頃にはすでに派遣という働き方が当たり前に存在した」若い学者が「それをネガティブにみることには」「違和感しか感じない」として、労働者派遣を「価値中立的」概念として疑わない姿勢を批判し、原理原則に溯って検討する萬井先生の自説を丁寧に説き起こすため、少々難しいかもしれないが、しかし、労働者派遣を考えるときの基礎的な論点は網羅されている。

労働組合の方々(弁護士も)その多くが働き始めた時は「すでに労働者派遣があった」ため違和感を感じていないであろう。そのような労働者派遣を根本から疑うという姿勢で逃げることなく、その違法性の根本に光をあてて議論をすることは、きわめて重要だ。労働者派遣の事件の取組が大変な中で、この本が多くの方々に読まれ、議論されることを期待している。

但し、日頃議論をしていない者が通読するのは簡単ではないと思われる。じっくり議論をしながら読んで頂きたい。労働組合役員の方々には少なくとも第1章と第4章を読んでいただければ、「労働者派遣」の相談にも必要な知識と観点をもって、事件相談に当たれるようになること間違いない。今後派遣研究会でも通読教材とする予定である。

旬報社 2017年7月25日発行
定価 4600円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。

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