民主法律時報

書籍紹介 『高速ツアーバス乗務員は語る 家族は乗せたくない!』自交総連大阪地連編

紹介者・自交総連大阪地連 松 下 末 宏

 東京―大阪間で4000円。このような低下価格への驚きもなくなり、すでに激安バスの存在は当たり前になりつつある。しかし、苛酷な労働が低価格を支えていると、本書は指摘する。
 とくに、問題となった高速バスツアーを含む貸切バス運転者による座談会は生々しい。運転中に宿泊先に電話をせざるえないほどの過密なスケジュールが居眠り運転を招く。語られる労働実態は深刻だ。旅行会社にもの言えず、低価格で仕事を請け負わざるをえない業界構造にも言及している。2012年4月の群馬県から出発したバスの乗客7名が居眠り運転の犠牲になった。この事故の運転手も非正規で、きちんとした休息を取れずにハンドルを握っていた。
 副題は「家族は乗せたくない!」。ここまで労働環境が悪化したのは2000年の規制緩和以降だ。当時は規制緩和によりサービスが向上すると唱えられたが、現実には過当競争が進んで最低の安全性すら担保されずにいる。本書は政府・国交省の検討する事故防止では解決しないと指摘し、必要な法規則を具体的に提示している。バス業界を熟知し、交通の安全と労働者の生活を守るために警鐘を鳴らし続けた自交総連が新たな犠牲者が出る前に抜本策を講ずべきと提起している。

日本機関紙出版センター
2012年11月30日発行
定価 900円

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