民主法律時報

《寄稿》 社会変革(社会主義を含む)について

島根大学名誉教授 遠藤 昇三

 私は、『民主法律時報』565号(2020年6月)「将来社会を論じる際の留意点」において、将来社会を(さしあたり)福祉国家と設定したが、この将来社会について、民法協における一層の論議の手掛かりを示したいということで、以下の文章を作成した。

私はかつて、表題の課題・問題につき、社会主義理論学会の会報(75号、2018年10月)に「社会主義理論学会会員への一会員からの問題提起」と題して、投稿したことがある。そこで主張したことは、第一に、社会主義を目指す人々の「社会主義像・社会主義論」に関する合意形成がなく、また抽象的に過ぎるあるいは具体的な内容がない、従って社会主義という目標の実現性に欠ける。第二は、社会主義を革命により実現することは、不可能である、社会変革路線が未確立・未成熟ではないかということである。第三は、(社会主義ではなく)言わば「よりましな資本主義」という社会変革が目標として、「福祉国家」については上記『時報』で論じたような問題があること、(「福祉国家」ではない将来社会を目指すとしても)日本においては「企業社会」の克服が、避けて通れない課題であるが、そのためには「戦闘的労働組合運動の再生・再構築」(『2019年権利討論集会特集号』で論じた)、「大企業労働者の主体形成」(『時報』568号、2020年10月で論じた)が必要である(第四の日本共産党に対する批判や要望については、省略する。ちなみに、この投稿への学会員からの反応は、全く問題提起の意味を理解していない一件を除き、皆無であったが)。

以上を踏まえて、第一に主張したいのは、社会主義革命や社会主義的変革の道は、放棄し、「よりましな資本主義」を目指した社会変革に、本格的に取り組むべきことである。民法協の中で社会主義を目指す人々や団体がいるかどうかについては知らないが、たとえいたとしても少数派であろう。それらの人々・団体と社会主義的変革や社会主義それ自体のあり方等を論ずることは、無用なエネルギーと時間の消費であり、それを避け、議論の焦点を「よりましな資本主義」を目指した社会変革に、合わせるべきである。資本主義から社会主義への直接の移行は、想定しがたく、言わば「よりましな資本主義」への移行の結果としてある段階が、社会主義と捉えられるということになろう。その程度の構え方で、十分と思われる。

第二は、その社会変革路線の意味・内容である。どのような将来社会を描くとしても、その変革過程は、徹底して民主主義的なものでなければならない(民主主義の意義・内容が多岐にわたり、必ずしも大方の一致があるわけでないことについては、別に論述したい)。「よりましな資本主義」像についての多数の人々による合意が形成され、その実現を目指して社会のあらゆるレベルでの民主化の取組み(企業とりわけ大企業がその焦点であることは、言うまでもない)がなされ、その集大成として国家の民主的変形がなされる、それらによって 「よりましな資本主義」が実現されるのである。

第三は、「企業社会」の克服の問題である。ここでの問題は、将来社会を福祉国家と想定した場合、社会(市民社会)が既に一定水準にありそれを土台として、現在の非福祉国家を福祉国家に変革するという筋道は、日本においては直接的には想定しがたい。何故なら、社会(市民社会)は企業社会に包囲されそれに取り込まれているからである。即ち、将来社会としての福祉国家は、企業社会の変革の結果としてあるいはその上に構築されるか、(より可能性としては低いが)福祉国家の構築がなされた上でそれにより企業社会が克服されるか、言わば二重の課題の解決が、求められるのである。

いずれにしても、日本における社会変革は、困難な課題であるが、それだけにやりがいのあるものである。真摯なかつ粘り強い取組みを進めて行ければと思う。

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