民主法律時報

認知されつつある求人詐欺(ブラック求人)問題

弁護士 清水 亮宏

 ①「基本給30万円」「完全週休2日制」などの魅力的な条件の求人に惹かれて入社したが、入社してみると、基本給は20万円で、残り10万円は固定残業代として扱われていた。②正社員との求人を見て応募したが、入社してみるとアルバイトとして扱われていた。
このように、好条件の労働条件を示して労働者を獲得し、実際にはより悪条件で働かせるという採用手法は、「求人詐欺」「ブラック求人」などと呼ばれ、社会的関心を集めています。

この「求人詐欺」は、応募した労働者本人が不利益を被るのはもちろんのこと、求人全体の信頼が損なわれることで採用活動・就職活動が停滞するなど、社会全体にも悪影響を及ぼすものです。
特に、求人に固定残業代についての十分な記載がなく、入社後に固定残業代が導入されていることを知るというトラブルが頻発しています。実際に、2015年度に全国のハローワークの窓口やハローワーク求人ホットラインに寄せられた相談や苦情は1万件以上に上るそうです。

そのような中で、厚生労働省は、青少年の雇用の促進等に関する法律(いわゆる「若者雇用促進法)の公布(2015年9月18日)を受けて、同年9月30日に、「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」を告示しました。この指針は、求人者に対し、求人段階において、固定残業代についての十分な記載をするよう求めています。
ところが、求人段階において固定残業代の記載が不十分なものはまだまだ存在します。私が担当している事件の中にも、求人に「基本給に〇時間分の残業代が含まれている」という記載がなかったという事案があります。

そもそも、この問題の根幹には、入社するまで労働契約の内容がわからないという日本の実態が根幹にあるように思います。内定段階から、使用者に一定の労働条件を通知するよう求めていくことが、今後の運動の課題ではないかと思います。

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