民主法律時報

第2次安倍政権による労働法制の大改悪を振り返って

事務局長・弁護士 中 西   基

1 アベノミクスの「成長戦略」

2012年の総選挙で誕生した第2次安倍政権は、「デフレからの脱却」、「日本経済の復活」を目的とする「アベノミクス」と称する経済政策を打ち出しました。①金融緩和、②財政出動、③成長戦略の「3本の矢」がその中身です。3本目の矢である「成長戦略」については、2013年6月に閣議決定された「日本再興戦略」、2014年6月に閣議決定された「日本再興戦略改訂版」にメニューが列記されています。しかし、そのほとんどは抽象的なスローガンにすぎません。12月1日にアメリカの格付け会社が日本国債の信用格付けを引き下げましたが、その理由の1つが「成長戦略に具体性が欠けている」というものでした。
「成長戦略」のなかで、唯一、具体的なメニューとして書かれているのが、労働法制の規制緩和です。「柔軟で多様な働き方の実現」という名の有期雇用や、派遣労働の拡大、解雇規制を緩めるための「多様な正社員」構想、「時間ではなく成果で評価される働き方」という名の残業代ゼロ制度、「予見可能性の高い紛争システムの構築」という名の不当解雇金銭解決制度などなど、きわめて具体的な労働法制の大改悪が並べられています。
そして、この2年間、安倍政権は「異次元のスピード」でこれらの大改悪を進めようとしてきました。

2 安倍政権による労働法制の大改悪

(1) 有期雇用
有期雇用の5年無期転換(改正労契法18条)を骨抜きにする「研究開発力強化法改正」は2013年12月に成立し2014年4月から施行されています。さらには、先の臨時国会の解散直前に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」が成立して2015年4月から施行予定となっています。

(2) 派遣
常用代替防止原則を撤廃して派遣を永続化・固定化する労働者派遣法大改悪法案については、2014年3月に国会に上程されましたが、通常国会では一度も審議入りすることなく6月に廃案となりました。9月からの臨時国会に再上程されましたが、11月21日の解散によって再び廃案になりました。政府提出法案が2度も廃案となるのは異例のことです。

(3) 解雇
2014年7月に「多様な正社員の普及・拡大のための有識者懇談会」が報告書を取りまとめています。いわゆる限定正社員の導入を推奨し、結果的に、解雇規制の緩和が狙われています。さらに、現在、解雇事件における金銭和解の水準についての調査が進められており、2015年1月頃にも報告書が取りまとめられる予定です。これを受けて、2015年中に労政審で法案化作業をすすめ、2016年の通常国会に金銭解決制度法案を提出するというスケジュールです。

(4) 労働時間
第1次安倍政権のときに世論の反対で頓挫せざるを得なかったエグゼンプション(残業代ゼロ制度)について、2014年8月から労政審で審議が進められています。2015年1月にも建議が取りまとめられ、2015年春にも通常国会に法案が提案される可能性があります。

(5) 外国人労働
奴隷制ともいうべき技能実習制度について対象拡大と期間延長を2015年度中に実施する計画です。また、オリンピックに向けた時限措置という名目で、建設分野・造船分野における単純労働者の受け入れが2015年1月にも始められようとしています。さらには、大阪を含めた国家戦略特区において、外国人の「家事支援人材」を受け入れる計画もあります。

3 民法協の取り組み

労働法制の大改悪が、同時並行で、しかも、「異次元のスピード」で進められている中、民法協では、他の在阪法律家団体と共闘して、2014年4月に「STOP!! 派遣法大改悪」集会(380名参加)を、10月には「STOP!! 残業代ゼロ」集会(210名参加)を開催しました。
 また、 民法協と大阪労働者弁護団の共催で、10月以降に大阪市内各所で合計5回の街頭宣伝を行いました。ハンドマイクや宣伝カーで宣伝をおこなうとともに、日本労働弁護団が作成した労働法制改悪反対のチラシやリーフレットを配布しました。
派遣法の国会審議が緊迫した状況にあった11月6日には、派遣法改正法案の問題点を街頭宣伝で通行人に分かりやすく伝えるために、フリップボードなども用意しました。大阪府職労の皆さんは、「生涯ハケン!!   そんなバナナ」、「派遣法改悪はイカんぞ!!」、「労働者の使い捨て、もうケッコー!」と書かれたボードを掲げつつ、バナナやイカやニワトリのかぶり物で参加し、大阪労連、大阪争議団共闘会議、自交総連、JMIUなどなど多数の民法協会員にも参加していただきました。

 経済活動は、すべての市民が豊かに暮らしていくための手段にすぎません。経済成長のために労働法制を破壊して、市民の暮らしを犠牲にするなんて、本末転倒です。
「人間らしく働き生きる」、そんな当たり前の世の中を目指して、引き続き、労働法制の大改悪を許さない取り組みを続けていきましょう。

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