民主法律時報

書籍紹介 前澤檀著『あなたと家族は大丈夫? ブラック企業に泣き寝入りしないための労働相談Q&A』

弁護士 中 森 俊 久

あなたと家族は大丈夫? ブラック企業に泣き寝入りしないための労働相談Q&A 民法協会員である前澤檀さん(東京地評 東京労働相談センター所長)が書かれた著書をご紹介します。
本書は、「パートⅠ トラブルは、法律でこう解決できる」「パートⅡ しゃべり場 労働組合って一人でも入れる?」「パートⅢ 労働組合これまで・これから」の3部構成に分かれている。大部分の頁数をパートⅠが占めており、労働に関する様々な疑問につき、Q&Aで回答している。何と言っても分かりやすいのが特徴で、実践の場で直ぐにでも役に立つツールといえる。筆者によると、前著「すぐに役立つ 元気の出る労働相談 一問一答」の活用・実績を踏まえ、ブラック状態の下で苦しむ多くの当事者とそのご家族および関係者、さらにこの問題に取り組まれる全国の多数の労働相談担当やオルグの方、これに連帯される法律家、さらに学生や生徒の補助テキストとして、多年の労働相談と労使交渉の実践の中からの、時機に合った情報を届け、問題解決への一助としたいと考えたとのことである。
私としては、上記の「多年の労働相談と労使交渉の実践の中からの情報」に大きな魅力を覚える。また、単なるQ&Aだけではなく、言葉の定義や条文を明記したり、コラム等の形で実は重要な情報をちりばめ、挿絵や表の掲載など視覚的な点にも配慮した本書の随所からは、読み手の立場に立って、実践を分かりやすく「形」として伝えようとする著者の思いが伝わってくる。そして、その思いの根底には、日々寄せられる切実な労働問題を可能な限り解決し、弱い立場にある労働者の労働環境を少しでも改善したいとのひたむきな願いを感じる。さらには、「ロウドウクミアイのこと、もう少しくわしく教えてくれますか?」「うちには、組合があるみたいなんだけど、非正規の私には関係ないみたい。」というような会話から、労働組合の意義を伝えるとともに、最後には、その歴史的経緯を簡潔かつ正確に伝え、今後の展開にも触れる本書の斬新な進行によって、労働者の権利の実現における労働組合の役割の重要性が浮き彫りにされている。
本書は、私でさえも最初から最後まで一気に読める大変工夫された書籍であり、労働者の権利ないし労働組合の基本的な理解を深めることはもちろん、長年の経験から裏打ちされた実践を肌で感じることができる貴重な内容となっている。具体的な相談先もリスト化されており、一冊手元に置いておくことをお勧めする次第である。

2014年10月10日
学習の友社 発行
定価 1100円+税
*民法協でお求めいただけます

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