民主法律時報

労働者派遣法「改正」後こそ権利闘争を強めよう

弁護士 村 田 浩 治

1 まるで「解釈改憲」の2015年派遣法改悪

2014年から二度にわたって廃案とされてきた労働者派遣法改正案が当初の施行日を10日も過ぎたため施行日を9月30日にずらすために衆議院の再議決を経て9月11日に成立した。今回の「改正」のポイントは3点である。
(1) これまであった派遣受入可能期間の制限がある業務と制限のない業務の区別がなくなった。
(2) 派遣可能な業務で派遣先が受け入れる期間は、原則一律3年以内と決まったが、その制限は、派遣先企業が派遣先労働者の過半数代表に対する意見聴取だけで延長が出来る。つまり事実上、派遣先企業のフリーハンドとなった。
(3) 派遣労働者は、派遣元で無期雇用されない限り、3年以上同じ業務には派遣労働者として就労出来ない。つまり3年毎にクビか派遣先(部署もしくは企業)の変更を強いられる。

法改正で常用代替禁止の原則(派遣法制定時から)が変更されたわけではないが、派遣先企業が意見さえきけば、無制限に派遣労働者を受け入れることが可能となったことで事実上放棄された。建前と規定がこれだけかけ離れ、派遣法があくまで働き方として例外であるということを示していた原則が放棄されたことは、集団的自衛権を否定していた政府の憲法解釈を変えてしまったのと同じくらいの暴挙だ。戦後守られてきた理念を掘り崩す改正であり安保法と同じくらいの暴挙だと言っても過言ではない。

2 2012年改正法との関係

2015年改正派遣法がなぜわずか19日で施行されたのか。それは2012年改正法の「派遣受入期間の制限違反による直用申込みみなし規定」の適用を回避するためだ。
従来は、政令で指定された26の業務(通訳や放送機器の操作、事務機器の操作、ファイリングなど)については派遣先企業の受入期間が制限されず、期間制限違反の違法派遣が横行していた。労働局などに申告して、「直接雇用を含む雇用の安定をはかりなさい」という「指導」がされることが後を絶たない。しかし「指導」では、直接雇用が強制されない。裁判に訴えてもきわめて権利保護には不十分だった。2012年法は10月1日から、このような期間制限違反の場合、派遣先企業が「直接雇用の申込みをしたものとみなす」ことになるから派遣労働者が「承諾」さえすれば、地位が保障されることになるから10月1日以降は裁判で勝つことが容易になるはずだった。

3 附帯決議を生かした権利闘争を

参議院では、法改正以前からの派遣期間制限違反の場合、過去の契約が続いている場合には、みなし規定の適用はないとの政府見解が表明された。しかし、10年以上も法違反があった場合でも、法律が出来たらリセットされるというのはどう考えても道理がない。参議院で、すでに長年にわたって派遣で働いている労働者の声があつまり大きな議論となり、衆議院での再可決となった成立時には  項目もの附帯決議がふされ、雇用の安定をはかる措置をとることが盛り込まれた。
2012年法は、受入期間制限違反の旧規定なのだから、旧法時代の期間制限違反の場合にも「みなし規定が適用される」という解釈も成り立ちうる。この解釈で裁判所に訴えたり、附帯決議を活用して交渉したりできる。また派遣法が施行されたことで、実際に3年後の首切りという契約書を示されてる派遣労働者の声が寄せられている。派遣労働者の権利がないがしろにされる危険が高まった今こそ、闘いを強めるべきだ。

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