民主法律時報

民法協・労働法研究会――「ジョブ型正社員」「限定正社員」の導入で解雇法理は変わるのか?

弁護士 野 条 健 人

 限定正社員制度の導入目的は、間違いなく解雇規制法理の緩和にある。
 第二次安倍内閣が限定正社員制度を推奨する理由は、「多様な働き方の実現」というものらしい。しかしながら、これは本制度を容易に導入するための建前にすぎない。仮に、「多様な働き方の実現」を実現するのであれば、正社員を二分化し、序列化を招く限定正社員制度を導入しなくとも、現在の正社員制度の充実をもって達成されるからである。
むしろ、「限定正社員」制度を導入する意図は、菅野先生の報告にあったように、「ワークライフバランス」という旗印のもと、無限定正社員とは異なる解雇法理が適用される正社員を導入する点にある。
 このように、解雇規制法理の緩和を主眼とする「限定正社員制度」によって、解雇規制法理の枠組みが変容するのか。本問題をいかなる視点で考察すべきかに関して、米津先生から話をいただいた。
 米津先生は、「仮に」限定正社員制度が導入されたとしても、①解雇規制法理自体が「緩和」されることはないが、②解雇の相当性判断の考慮要素として、労働契約の内容、就労実態には反映されるということを、スカンジナビア航空事件やワキタ事件等、具体的事案に即して指摘され、非常に実務に直結する話を伺えた。
もっとも、先生は、現政府が「限定正社員=解雇しやすいもの」というイメージが形成されることに警鐘を鳴らしていた。「限定正社員」の定義が明確に定められないまま、このようなイメージが先行すれば、裁判所も従来の規範とは異なる裁判規範を定立する恐れがある。そのようなイメージが形成されないように、絶え間なく集会やデモを通じて運動を展開することが重要であると感じた。
 労働組合の方の報告によれば、労働現場では、「仮に」ではなく「既に」限定正社員制度が導入されており、労働条件や社会保障における正社員との差別化が現実に生じている。
 現政府の「限定正社員制度」の導入は、通過点にすぎない。限定正社員制度の導入により、これを突破口として、正社員制度の二分化を図り、最終的には、正社員全体の解雇規制緩和にあると強く考えるに至った。
労働者と労働弁護士がともに必死に取り組んだ結果、形成された解雇規制法理を崩されないためにも、改めて市民、労働組合の方々と連帯して闘っていく一躍を担えるように、日々邁進していきたい。

 

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