NPO法人 働き方ASU-NET 喜多 裕明
NPO法人働き方ASU-NET第33回つどいは2026年3月27日、エルおおさかで開催されました。今回は「公益通報(内部告発)者は本当に守られているか? ~問題だらけの公益通報制度を考える~」のタイトルで、内部告発者が苦しめられた実際の事件をもとに公益通報制度の現状と問題点についてシンポジウムをおこないました。会場とオンライン合わせて46名、うちマスメディア(新聞社)からも7名参加され、この問題への関心の高さが窺えました。ASU-NET共同代表の岩城穣弁護士が「公益通報者保護法の第一人者である奥山教授から講演とコメントをいただき、みんなで考えるシンポジウムにしたい」と開会挨拶しました。
1 内部告発者保護法制の「米国流」「英国流」「日本流」
シンポジウムの基調講演は、奥山俊宏さん(上智大学教授)による「公益通報制度の現状と問題点-兵庫県内部通報制度の現状と問題点にも触れて-」でした。最初に、公益通報制度の歴史を新聞報道などで振り返り、日本では2000年代に入って企業の不祥事が内部告発によって相次いで発覚したことから、2004年に公益通報者保護法制が初めて制定されたが、米国では1970年代から内部告発者保護法制が発展していたことを、スペースシャトルチャレンジャーの爆発事故などの事例を挙げて紹介されました。
内部告発者保護法制には「米国流」と「英国流」があり、アメリカは告発者の保護を図ったうえで外部行政組織(労働省)による強力な権限に基づく取り締まり、報奨金の授与、行政や報道機関等への告発を奨励し、内部告発者をモデルにした映画が公開されるなどヒーロー扱いをする風潮にあります。一方、イギリスは公益開示法(1998年)以降、組織内部での自浄作用を促し、ナチスドイツ下の密告社会の再来をけん制する事情から、行政や報道機関等外部組織への通報に対しては抑制的であり、報奨金制度は設けていないとの説明でした。日本は英国流の「公益通報者保護法」を2004年に制定したが、2020年と2025年改正を経て米国流を取り入れていく方向です。兵庫県内部告発文書問題について、「内部告発者は自分を犠牲にしても『公共の利益』のために告発するのに対し、密告者は『御上の利益』のためにそれをおこなう」と喝破されました。
2 公益通報後の過酷な配転人事で自死した青年職員
事例報告の1番目は和歌山市職員公益通報後自殺事件。原告の岩橋啓子さんから、和歌山市役所職員だった長男が旧同和地区にある児童館で永年に渡る不正な補助金取得を目的とした捏造や不正な書類作成を上司から指示された事を理由に体調不良となり、休職願の中で「公益通報」を行ったにも関わらずに取り上げられず、逆に復職後の人事でその上司と同じフロアーへの配転を命じられたことを苦に自死されたことについてご報告いただき、支援を訴えられました。また、弁護団の芝野友樹弁護士から、事件の概要について詳細な報告があり、労災認定基準に「公益通報」がない事を指摘されました。
3 報復的な配転人事やハラスメントへの規制がない
事例報告の2番目はK大学附属高校のM教諭から、産業医による職場巡視の法定回数未達に関する是正要求に対する大学執行部の拒否に関連して、学内窓口への内部告発による報復人事がおこなわれたことが紹介されました。法律による罰則と実際の運用が乖離しており、対象が解雇・懲戒に限られ、報復的な配転人事やハラスメント等への規制がない等、現行制度の構造的な問題点について指摘されました。
4 韓国のように改正要求の声をあげよう
参加者の討論では、堺地域労組からは「20年前の『いずみ市民生協事件』を現時点から振り返り教訓としたい」、ASU‐NET理事の脇田滋龍谷大名誉教授からは「日本と韓国の公益通報者保護制度を比較すると、韓国では市民団体の改正要求が反映されて大幅に改正されている」との発言がありました。また、奥山教授がすべての報告・発言に対してコメントを述べられました。閉会の挨拶をASU-NET理事の川西玲子さんがおこない、労働組合などの力で制度改正を進めていきたい」と締めくくられました。







