民主法律時報

ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ 「労基法上の労働者性」

弁護士 西 田 陽 子

1 はじめに

6月20日、ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミが民法協事務所とZoomの併用で開催されました。
今回は、「労基法上の労働者性」がテーマ。ネットを通じて仕事を請けるギグワーカーなど、働き方が多様化する一方で、労働者とフリーランスの線引きが曖昧になっているところ、労働者(雇用)か労働者以外(業務委託・請負など)かによって、主張できる権利は大きく異なります。今回のゼミでは、労働者性を主張する際のポイントを労基研報告や裁判例の検討を通じて学びました。
今回のゼミも、幅広い年代や職種の方々15名程度が参加し、活発な議論が交わされました。

2 ゼミの内容

①労働基準法研究会「労働基準法の『労働者』の判断基準について」(いわゆる「労基研報告」)
新人の松本亜土弁護士から、労基研報告の内容を端的にまとめた分かりやすい報告がありました。松本弁護士の報告の後、豊川義明弁護士から、労基法における「使用」は、すなわち「支配」することであるとして、労基研報告は狭すぎるのではないかという問題提起がありました。独禁法研究会で活躍する加苅匠弁護士からは、アメリカのカリフォルニア州のギグワーカー法の紹介もあり、充実した議論になりました。

②NHK事件(東京高判平成15年8月27日労判868号75頁)
発表担当は若手の脇山美春弁護士で、9ページにもわたるレジュメを用意してくれました。脇山弁護士から、本判決は、「NHKだから敗訴した」という要素が強いように思う、との指摘がありました。青木克也弁護士から、①の労基研報告に沿った判断がなされていないことの問題性の指摘がありました。

③イヤシス事件(大阪地判令和元年10月24日労判1218号80頁)
発表担当は若手の川村遼平弁護士。リラクゼーションサロンの中で施術業務を行っていた方々の労働者性が認められた事案で、川村弁護士から、業務時間が8時間に満たない場合に報酬が減額されていたことが大きなポイントになったのではないかという指摘がありました。

3 次回ゼミ日程

次回は9月6日(火)午後6時半からの開催を予定しています。テーマは未定ですが、今回もみなさまに関心を持っていただけて勉強になるようなテーマ設定をしたいと思いますので、民法協MLでのご案内をお待ちいただければと思います。みなさまのご参加をお待ちしております。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP