民主法律時報

日本労働弁護団2020年全国総会の報告

弁護士 安原 邦博

2020年11月13日~14日、日本労働弁護団2020年全国総会が開催された。今年は、コロナ禍のため完全オンライン(現地会場なし)開催である。長時間のオンライン会議は集中が切れやすいからか、各日とも予定開催時間はほんの2時間 分ずつであった(実際には両日とも終了時には3時間程経過していたが)。

さて、1日目(11月13日)は、和田肇名古屋大学名誉教授による記念講演「労働法・社会保険法の持続可能性」があった。法律上または事実上労働法や社会保険法(各種社会保険の法制度)の保護の「枠外」に置かれた就業者に特に大きなコロナ禍の影響が出ていることを受け、これら制度に係る諸々の問題を明らかにして提起をする講演であった。また、この日に、フジ住宅ヘイトハラスメント事件の第一審判決(2020年7月2日言い渡し)について原告弁護団が日本労働弁護団賞を受賞したため、同弁護団長である村田浩治弁護士及び原告本人が受賞スピーチをおこなった。

2日目(11月14日)は、労働者性に係る問題について報告と討議がなされた。日本労働弁護団労働者概念研究会の2020年10月21日付「『雇用によらない』働き方と労働者概念に関する提言(第一次試案)」等について報告がされ、討議においては、同提言における「独立事業者」や「使用従属性」の扱い等に関して特に議論がなされた。また、均等均衡待遇問題に関し(旧)労契法20条裁判の各弁護団から報告があり、大阪医科薬科大事件については当会の谷真介事務局長が報告をした。その他、パワハラ防止法及び指針の活用や、教員、医師の働き方等について報告がなされ、「解雇の金銭解決」問題については当会事務局である冨田真平弁護士が報告をした。

ところで、今年は、例年開催されているスタディーグループの代替として別日に「プレ企画」も実施された(11月3日に「技能実習生の労働問題」、11月7日に「コロナ解雇事件への対処」)。各地から大勢が一か所に集まる催しで別日にプレ企画を設けるのは難しいので、これはオンラインの利点であろう。また、通常の集会では同時に複数の者が発言するのは難しいが、この度の労働弁護団総会では、報告者等が発言をしている最中にチャット上で質問や意見等が書き込まれ、総会出席者間で議論をすることができたり、それら書込みを執行部が取り上げることができたりしていた。これらオンラインの利点は、コロナ禍が落ち着いた後も活用し続けるべきであろう。

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