民主法律時報

ワークルール教育推進法の成立に向けて

弁護士 清水 亮宏

 電通の過労死事件等をきっかけに、若者の中で働き方に対する関心が高まっています。しかし、ワークルールに関する知識や、トラブルに直面した場合の対処法が十分に浸透しておらず、職場で何か困ったことがあったとしても、労働組合などに相談せずに泣き寝入りしてしまう人がほとんどという状況です。基本的なワークルールの知識のみならず、問題が生じたときの解決手段や労働組合の役割を含めた実践的なワークルール教育を学生が受けられる環境を作らなければなりません。

さて、ワークルール教育推進法が国会に提出される見通しであるとの報道が2017年末頃からなされるようになりました。ワークルール教育推進法は、労働法の知識や活用法に関する教育を推進するための法律です。超党派の国会議員による非正規雇用対策議員連盟が2016年にワークルール教育推進法案検討チームを結成し、法案提出を目指してきました。2018年2月には、ワークルール教育推進法の制定を求める院内集会が開催され(筆者も参加・発言してきました。)、国会議員や経営者団体なども含めた参加者間で、早期の法案提出を目指すことを確認しました。また、働き方改革関連法の成立に際しても、「多様な就業形態が増加する中で、経営者あるいは労働者自らが労働法制や各種ルールについて知ることは大変重要であることを踏まえ、ワークルール教育の推進を図ること。」との附帯決議がなされました(附帯決議41項)。

しかし、残念ながら、現段階では、ワークルール教育推進法が国会に提出されるには至っておりません。法案の提出と成立には、世論の力と私たちの運動が欠かせません。
ぜひ、ワークルール教育に関心をお寄せいただき、情報発信や学習会の開催等を通じてワークルール教育推進法の制定に向けた運動を盛り上げていただければ幸いです。

なお、各地の弁護士会ではワークルール教育の講師派遣を行っています。会員弁護士の多くが所属している大阪弁護士会でも講師派遣を行なっているほか、労働法出張授業PTを立ち上げて教材を作成するなどの取組みも始めています。興味のある方はぜひ筆者までご連絡ください。

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