弁護士 上 出 恭 子
2014年6月に念願の過労死等防止対策推進法(以下「防止法」と略すこともあります。)が制定され11月から施行されたことを受けて、毎年11月が「過労死等防止啓発月間」と定められ、今年は、全国各地で初の厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進 シンポジウム」が開かれることになりました。
大阪では、2015年11月9日にグランフロント大阪のコングレコンベンションセンターにて開かれ(後援・大阪府、協力・過労死防止大阪センター他)、207名という多数の方が参加されました。企業の人事担当者にも防止法のことをもっと知ってもらいたいということで、大阪府下の相当数の企業にDMを送った結果、普段の集会ではあまり見慣れない企業からの参加者も多数見受けられました。
大阪労働局労働基準部の高井吉昭部長による開会挨拶で始まり、続いて、岩城穣弁護士(過労死防止全国センター事務局長)による基調講演Ⅰ「過労死防止大綱の内容と企業にもとめられるもの」、そして、過労死問題の実態を理解してもらうために6名の過労死・過労自死遺族から遺族の思いをお話いただきました。過労死問題の解決に向けての原点である大切な家族を奪われた遺族の身を切るような痛切な訴えは、会場の参加者の胸に響き、会場のあちらこちらですすり泣きされる声が聞こえました。参加者の中には、遺族のお話を初めて聞かれた方もいらしたようで、この問題の実態を知っていただく貴重な機会になったと確信します。
その後、基調講演Ⅱとして、過労死等防止対策推進協議会の委員もなさっていた山崎喜比古日本福祉大特認教授より、「過労死を出さない職場づくりをどうするか」と題してお話をいただきました。山崎先生ご自身が前任校で過重労働に従事されたご経験がおありだったようで、過労死遺族のお話に大変共感された中でのお話でした。
後半では、各分野からの報告ということで、岩城弁護士の司会でリレートーク形式で、 鈴木成美氏(茨木地域産業保健センター・コーディネーター)、 西野方庸(氏(関西労働者安全センター事務局長)、 寺西笑子氏(全国過労死を考える家族の会代表、 柏原英人氏(過労死防止大阪センター事務局長)からこれまでの取組についてご報告をいただきました。松丸正弁護士(過労死防止大阪センター代表)の閉会の挨拶で3時間にわたる充実した シンポジウムを終えました。
会場の横断幕に書かれた「主催:厚生労働省」の文字に、過労死事件の認定を巡っては、時として、敵味方の関係にあった経過を思い起こすと、少々、大げさですが隔世の感がありました。何よりも、始まったばかりの国を挙げての過労死防止の取り組みが実効性あるものとなるよう、新たな一歩に向けて日々の取り組みに尽力せねばと、参加者それぞれが思い返す貴重な機会となったことを願ってやみません。