民主法律時報

なくそう! 官製ワーキングプア 第6回大阪集会報告

弁護士 和田  香

 2018年10月13日土曜日、エル・おおさかにおいて「なくそう!官製ワーキングプア大阪集会」が開かれました。
この集会は、公務労働に従事する非正規労働者が置かれた現状とその問題、今後の取り組みなどについて、当事者の労働者、支援者、研究者らが報告し合い、議論するというものです。
私は、全体会の司会を小野順子弁護士と一緒にさせて頂いたのですが、とても盛り沢山の報告があり、終わりの時間に間に合うよう進行に一生懸命になり過ぎて、肝心の集会の網羅的な記憶ができていません。そこで、ここでは、集会全体のご報告ではなく、特に印象に残ったことについてご報告したいと思います。

 公務労働に非正規労働者が多く利用されているということは、報道等で聞いていました。
しかし、特に専門的な技量を要するといえる対人支援業務の職員や、失業者の方に職、とくに正規公務員の職を見つける機関であるハローワークの職員に非正規労働者が多いとは知りませんでした。
集会では、パネルディスカッション「公共サービスの在り方と担い手を考える」として、非正規の公務労働者の方が報告をくださいました。

私は、その報告者の方々の仕事を聞いて、本当にびっくりしました。コーディネートをしてくれた西村聖子さんは家庭児童相談員です。何かしらの問題に直面したお子さんやご両親の相談を受け、アドバイスをしたりするお仕事です。その他の登壇者の方も、生活困窮者自立支援事業の相談員、そして、ハローワークの職員です。
まず、専門的な対人支援業務の職員については、担当している業務の内容が専門的であり、経験すればする程に技量が上がり、より専門職として能力を発揮されるはずのところ、非正規公務員として一定の期間がくれば契約満了となってしまいます。これでは、住民サービスもままならないはずです。しかし、コメンテーターとして登壇された上林陽治先生(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事、公益財団法人地方自治総合研究所研究員)によると、対人支援業務は「しんどい」仕事であり、元々職員から嫌厭されていた業務である面があり、そのような業務は非正規の職員を導入して担当させるという流れがあるということでした。

また、ハローワークの職員の方については、正規公務員の職員同様、失業者の方に正規公務員の職を見つけなければ業績として評価されず、契約更新に響いてしまうそうです。ところが、自分自身は非正規労働者ですから、何ともいえません。
登壇された当事者の方々のお話からは、費用も出ないのに研修に出かけたり、契約終了が見えていても住民の方のために知恵を絞ってアドバイスをされたりしながら仕事をされているのがよく分かりました。このような姿勢で公務労働に従事している方を短期間のサイクルで次々に取り替えていく非正規公務員の制度は、長い目でみれば経済的にも非効率のように思いました。

 集会では、その他、現に雇い止め等を争って闘っておられる方からの報告、非正規労働者の公務員に公務災害制度の適用ができない条例となっていた北九州市の事案の現状の報告や全国各地の条例の現状の報告、脇田滋龍谷大学名誉教授からの韓国における非正規公務労働撤廃の運動と成果の報告などがあり、非常に充実した内容でした。

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