民主法律時報

ストップ! 働かせ方改悪法案 第2ラウンド ――ASU-NET・民法協共催集会

弁護士 須井 康雄

2018年3月9日、ASU―NETと共催で「ストップ! 働かせ方改悪法案 第2ラウンド」の集会をエル・おおさかで開いた。

POSSE代表の今野晴貴さんの講演。人不足でも業種によってはブラック企業は増えている。やり口の1つが選別型。合法的に退職させる仕組を弁護士や社労士、人材会社が企業に売り込み。解雇の金銭解決制度が議論されているが、現場では解雇規制はないに等しい。あるIT企業では「なんでお前ここにいるの」「なんでお前に給料払わないといけないのか」と研修で問い詰め、何をしても評価せず、生まれてからこれまでの反省文を書かせ、「大学受験失敗したのは、さぼり癖あるから」と労働者の人生まで否定し、うつ病に追い込み、自己都合退職させる。権利行使の主体としての人格を破壊する民事的殺人といえる。解雇された労働者が立ち上がらなければ、使用者の勝ちという認識。

もう1つのやり口が使いつぶし型。日本海庄やの事件は、大卒月給19万4500円に80時間分の残業代を含んでいた。求人時に固定残業代の表示義務がなかった。再三厚労省に問題提起し、今年の1月から表示が義務付けられた。
雇止めの問題も社労士が「できるだけ早くすることが重要」と宣伝。ある社労士会の法教育のスローガンは「第1に義務、第2に権利」。社員をうつ病にり患させる方法をブログに挙げた社労士が処分された例もある。

裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度は、ブラック企業、ブラック士業に都合のいい口実を与える。うつ病、過労死がますます増える。条文の要件が抽象的で、適法かどうかわからないまま、どんどん広がる。労基署も何日も業務を見ないとわからない。1075万円という要件も、支払を見込んでいるだけで適用可能。
裁量労働制ユニオンを立ち上げ半年で相談件数 件。裁量労働制の問題を明るみにして、恒久的な廃案に追い込みたい。

続いて、基礎経済科学研究所の高田好章さんが雇用によらない働き方について講演。間接雇用が拡大してきた経緯に触れつつ、フリーランスでは労基法、労組法の保護を受けないことによる問題点を具体的に解説。副業推進も、低賃金、低年金を補うため、働けるだけ働かせる制度。

続いて、リレートーク。過労死家族の会の寺西笑子さんは、衆議院予算委員会での意見陳述や、裁量労働制のデータ問題を受けた野党による厚労省ヒアリングへの立会、厚労大臣との面会など、同会のめまぐるしい活動を報告した。
ブラック企業被害対策弁護団の清水亮宏弁護士は、入院中でもLINEで指示が来て、既読表示がつくと対応を迫られる例などを紹介。残業代を払っているという意識を使用者が持つことで労働時間の把握がなおざりになるという問題を指摘し、労働時間の適正把握の義務化を訴えた。泣き寝入りする労働者も多く、企業主導の改革では不十分と指摘。
官製ワーキングプア研究会の川西玲子さんの話。労契法は公務非正規に適用なく、民間以下。吹田非常勤裁判も民間なら完全に勝利する事案。無理な人員削減で、サービス残業、持ち帰り残業が常態化。非正規の予算は物件費で、予算が底をつくと不支給。15分勤務時間を短くしたら、非常勤にできる。正規職員と同じ9時5時勤務なのに、昼休憩を長くして非正規にする。公務災害は職権で開始され、申請権もない。憲法順守という立場で毅然として仕事できるような身分保障がない。自分の権利もおぼつかない状況で自治体の仕事を担う。2020年に会計年度任用職員制度が始まる。何年働いても1年のみの任用が繰り返されるとのこと。

いずれの方の話も、聞く者に事実が持つ圧倒的な重みを突き付ける。労働法制の改悪反対を訴えている今この瞬間にも、法の光が及ばないところで苦しんでいる労働者がいる。その人たちにいかに私たちの思いを届けるか。その人たちの思いを社会に届けるか、私たちは常に考えていかなければならない。

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