民主法律時報

労働契約法20条についての労働法研究会を開催

弁護士 須 井 康 雄

 2014年10月4日、「学ぼう! 使おう! 労契法20条」と銘打って大阪弁護士会館で労働法研究会が開かれた。まず、労働契約法 条の解釈について弁護士の菅野園子会員より報告があり、続いて提訴したばかりの郵政産業ユニオン事件と一審判決が出た法テラス奈良事件の報告が、それぞれ担当弁護士である河村学会員と兒玉修一会員よりあった。以下、研究会で出た意見などを紹介する。

労働契約法20条は、①有期労働契約を締結していること、②期間の定めのない労働者の労働契約の内容である労働条件と相違すること、③その相違が期間の定めがあることを理由とすること、④その相違が不合理と認められることという要件が満たされる場合に、そのような有期雇用労働者の労働条件を禁止する。④の不合理かどうかの判断は、(ⅰ)業務内容、(ⅱ)当該業務に伴う責任の程度、(ⅲ)職務内容及び配置の変更の範囲、(ⅳ)その他の事情を考慮して決められる。

労契法20条により、有期契約労働者の労働条件の定めが無効になる場合、基本的には無期契約労働者と同じ労働条件が認められ、また、不法行為を理由とする損害賠償も認められうるとされている。
不合理であることの立証は労働者側が負うため、労働条件の格差の理由を団体交渉や労働条件に関する説明義務の履行(パートタイム労働者法 条参照)によって使用者側に求めていくことが重要である。合理的な説明がなされない場合は、立証責任の転換を主張することもありうる。

労契法20条の根底には同一労働同一賃金という考え方があるが、日本では正社員の賃金体系に扶養など労働内容以外の要素も含まれているので、合理的な修正をしたうえで同一労働同一賃金の原則を主張する必要がある場合もあるのではないか。
同一労働同一賃金に関しては、丸子警報器事件(平成8年3月15日長野地裁上田支部判決・労働判例690号32頁)がある。この判決では、賃金が8割以下の場合、公序良俗に違反するとされたが、労契法 条ができる前の事件である。労契法 条ができた今、不合理かどうかは100%を基準とすべきである。

労契法20条も比較対象となる無期契約労働者の労働条件が低く抑えられてしまうと意味が薄れてしまう。限定正社員制度は、無期契約労働者の労働条件を低くしかねない。限定正社員制度には注意を払う必要がある。

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