民主法律時報

日本労働弁護団第57回全国総会

弁護士 増 田   尚

 2013年11月8日・9日、福井県芦原温泉にて、日本労働弁護団第57回総会が開催された。冒頭に、鵜飼良昭会長のあいさつ、来賓あいさつに続き、水口洋介幹事長より、今年度の活動方針案が提起された。
方針案では、安倍政権のもとですすめられている派遣法、労働時間規制、解雇規制などの労働法制の規制緩和に対し、各地で、労働者や労働組合の運動を全面的に支援し、規制緩和の実現を阻止することが呼びかけられた。さらに、労働裁判改革として、各地の裁判例や労働審判の運用についての情報を収集して分析し、労働者の権利が保障される制度設計に向けた提言を行うことも確認された。このほか、勤労権・労働基本権など労働者の権利を身につけさせる「ワークルール教育推進法」の制定や、ブラック企業を根絶する取り組み、大阪維新の会など公務員への権利侵害などに対抗する運動などが提起された。

次に、根本到・大阪市立大学教授より、「雇用規制緩和と労働者の権利擁護」と題する講演が行われた。根本教授は、産業競争力会議や規制改革会議の掲げる「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型へ」、「多様な働き方の実現」などの提言について、企業の競争力強化の観点のみを強調し、労働者の要求をいっさい考慮しない不当なものと指摘された。いわゆる限定正社員については、菅野和夫教授が朝日新聞のインタビューで、限定されているからといって当然整理解雇が有効になるわけではないと述べていることを紹介され、解雇規制緩和に結びつけようとしている動きを批判された。また、国家戦略特区の中で、有期雇用の特例を設けようとしていることを改正労働契約法の無期転換権を奪うものであるとともに、契約期間を長期化すること自体にも退職制限との関わりで問題があると指摘された。
さらに、派遣法改悪の動きについては、実質的に「正社員ゼロ」を目指す政策であると批判された。常用代替防止の建前の放棄を迫る規制緩和論者に対しては、派遣は一時的・臨時的なものに限り例外的に許されるものであるとする原則をなし崩しにするものと厳しく批判され、EUやドイツで派遣の上限規制がないとの指摘に対しても、同時に、派遣が臨時的なものとされて脱法を厳しく規制していることを無視するご都合主義の国際比較であると反論された。一方、さらなる派遣法改正に向けて、均等待遇と団交応諾義務を含む派遣先の責任強化について言及された。

2日目には、各地から報告があり、民法協からも中西基事務局長が、大阪市の組合事務所・アンケート訴訟の進捗や、大阪地裁労働部の審理の状況等について発言した。
最後に、役員改選があり、水口幹事長、佐々木亮事務局長が退任し、高木太郎幹事長、菅俊治事務局長が新たに選任された。
労働規制緩和や、ブラック企業、ワーキングプアなど、労働者をめぐる権利闘争が正念場を迎えつつある中、労働者の権利擁護に徹底してとりくむ専門家集団として、いっそうの奮起が求められる情勢であることが確認された。民法協としても、おおいに労働規制緩和阻止の運動や労働裁判改革への取り組みを強化したい。

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