民主法律時報

「働き方ASU―NET」NPO法人移行記念 第18回つどい開催

弁護士 楠   晋 一

 2006年にホワイトカラーエグゼンプション法案阻止のために結成された働き方ネット大阪が、2013年7月にNPO法人「働き方ASU―NET」に移行しました。そして、働き方ネット大阪から通算して第18回目のつどいは、NPO移行記念講演として「アベノミクスにどう立ち向かうか」というテーマで、同志社大学教授のエコノミスト浜矩子先生にお話しいただきました。
 アベノミクスは富国強兵を目指すもの、すなわち経済的に再び世界制覇を試みようとしつつ(「富国」)、憲法改正によって再び日本を戦争のできる国にしようとするものであり(「強兵」)、決して貧困を抱える人を包摂して格差を是正しようとするものではない。頑張る人は頑張って下さいと包摂性を低める方向ではデフレは解消しない。アベノミクスはいずれ自壊すると看破されました。
 そして、アベノミクスの問題点として、①「異次元」緩和、②市場至上主義、③「みぞの鏡」病という3つのキーワードを挙げました。
 ①は、2%の物価目標を達成するために日銀に異次元緩和を行わせ、国債を買い支え、現金を市場に流入させている。そのため、目標を達成すれば異次元緩和を収束させる必要が出てくるが、収束させれば国債相場が大暴落するために収束させられない。そのうち、市場から財政赤字を隠すことが異次元緩和の真の目的であることがばれて、日本は国際的信用を失うことになる。
 ②は、政府はアベノミクスによって株価を上げ、為替相場を円安に誘導しようとしているが、誘導するためには常に新しいイベントを打ち出していく必要があり、イベントが尽きたときには終わってしまうという脆弱性を抱えている。
 ③は、「みぞの鏡」とは自分の一番欲しいものを手にしている姿が写る鏡のことで、みぞの鏡病とは、鏡を見た者が現実を直視できずに、鏡に写る姿の虜になって鏡から離れられず死に至る病です。安倍総理は永遠の若さを手に入れた(つまり高度成長期の伸び盛りの)日本の姿を取り戻そうと躍起になり、現実が直視できていないので現実への対応力がまるでない、と指摘します。
 そしてアベノミクスへの対立軸として「シェアからシェアへ」というキーワードを提示されました。世界一を目指して市場占有率(シェア)を奪い合う発想から、分かち合い(シェア)に発想を転換する必要があると述べて講演を締めくくられました。
 
 続いて、ASU―NET代表理事の森岡孝二先生が「雇用改革と限定正社員」と題して、この  年で正規労働者はほとんど増えていないのに非正規労働者だけが増えその傾向が若者において特に顕著であること、若者の労働所得が減少する一方で正社員の労働時間はこの  年ほとんど変わっていないことをデータに基づいて説明されました。安倍政権の成長戦略の目玉は雇用労働改革ですが、この改革は、企業が世界で一番活動しやすい国すなわち労働者が一番働きにくい国を目指すものです。そして、既に事実上存在している限定正社員、ホワイトカラーエグゼンプション(残業代の支払を受けない管理職)を例に取り、実際はこれらの制度が労働条件を悪化させるものでしかないことを示しました。そして、最後に過労死防止基本法を制定して労働時間規制に踏み込むことと、サービス残業の解消による雇用創出を訴えました。

 浜さんの講演は非常に歯切れが良くてあっという間に時間が過ぎました。森岡先生の講演は、図表や具体例をベースに分かりやすくお話しいただきました。また、質疑応答もたくさんの質問が集まり、もう少しいろんなお話しを聞きたいところでした。
 講演はASU―NETのホームページから録画が見られますので、そちらもご覧下さい。
 最後に、働き方ASU―NETは趣旨に賛同いただける会員の方を募集しております。詳細はASU―NETホームページをご覧いただくか、当職までご連絡下さい。

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