民主法律時報

九条の会・おおさか 赤川次郎さん講演会 「エンタテインメントの中の戦争」

弁護士 大 前   治

 2013年5月17日(金)、中之島公会堂にて「九条の会・おおさか」の講演会が開催された。メインプログラムは、作家の赤川次郎さんによる「エンタテインメントの中の戦争」と題する講演。会場には1200名が集まり、盛会となった。

講演に立った赤川氏は、冒頭で「想像力が欠けていること」の恐ろしさにふれた。ある研究者が「一番楽しいのは兵器の開発研究。なぜなら、予算やコストを考えなくていいから。」と語った例をあげ、「その研究対象が『人を殺すもの』だという想像力が欠けている。そして、そのような例は、最近の文学界にも見受けられます。」と指摘。「残酷な戦闘シーンや暴力シーンを生々しく描写する小説が文学賞をとることがある。私には最後まで読み切ることができない作品もある。それはエンタテインメントの限界を超えている。『戦闘』を描くことと『戦争』を描くことは違う。本当の戦争の怖さは、戦争が人間の内部の何を破壊していくかを描くことで表現できる。そこを描くのが作家の仕事だと思う」と語りました。
ごく普通の人間が、戦争によって恐ろしい考え方や行動をとることがありうる。それが本当の「怖さ」である。社会悪や権力批判という観点をもつことによって、そうした表現ができる。個人の狂気を描写してハラハラさせる小説が増えているが、いま一度、想像力を働かせて社会を見つめていきたいと思う。――― このように講演をしめくくった赤川氏に、大きな拍手が送られた。

講演会の冒頭では、「九条の会・おおさか」呼びかけ人の松浦悟郎氏(日本カトリック正義と平和協議会会長)が開会あいさつに立ち、「憲法  条改正が叫ばれているが、憲法は国民ではなく権力者・支配者が守らなければならないルールである。そのことが、徐々に広がり始めている」と述べた。また、宮本憲一氏(大阪市立大学名誉教授)による閉会のあいさつでは、大阪市・橋下市長の言動への批判が広がるなか、さらに平和と民主主義を守る運動を発展させようと呼び掛けられた。
廣澤大介さんのヴァイオリン演奏も参加者を魅了した。平和憲法を守ろうという思いを確認しあえる充実した講演会であった。

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