弁護士 江藤 深
一般社団法人徳島新聞社(社団)で2024年4月に分社化が強行されたことをめぐり、全徳島新聞労働組合(山口和也委員長、組合員86名)が不当労働行為(不誠実団交)の救済を申し立てていた事件で、今般、徳島県労働委員会において和解が成立した。分社化に至る団体交渉で労使間の対立が生じたことについて、社団が「遺憾の意」を表することをはじめ、組合側の完全勝利と評価できる内容だ。
今年8月20日付で締結された和解協定書ではほかに、組合から団体交渉の申入れを受けた場合、社団は不当に遅延することのないように開催日時を回答し、誠実に応じることや、今後の団体交渉で合意に達した事項については協定書を作成すること、当事者双方が健全な労使関係の構築に努めることなども盛り込まれた。同時に組合が申し立てた昇進差別(社団が2024年4月1日付の定期異動において、非組合員のみを昇進させ、昇進要件を満たした組合員を一切昇進させなかったこと。支配介入に当たるとして、昇進していた場合の賃金との差額の支払いとポストノーティスを求めている。)についての救済申立事件は、今秋にも命令が出される見込みで、今回の和解も大きな追い風となる。
発端は2023年11月、社団が編集部門を分社化し、翌年4月に業務を始める株式会社徳島新聞社(KK)に同部門の職員を出向させる提案をしたことだ。案によれば、以後はKKのみが新規採用を担う上、KKの賃金水準は社団の従業員の65%とするという深刻な内容だった。
組合側は、社団とKKの賃金格差が不合理で、若手の離職に拍車がかかるとして、ビラ配りや団体交渉といった分社化反対の活動を展開した。これに対し、社団は、労組が求めた経営資料を一向に開示しない、幹部が組合ニュースの記載に不当に修正を迫る、「出席者には他業務等の傍ら時間を捻出してもらっております」というメールを事前に送信し団交の時間を2時間に制限する、団交中に小休止を挟み、再開後に突然打ち切りを宣言する―といった行為に出た。
組合の活動は2024年3月14日、29年ぶりのストライキ実施という形でピークを迎える。会社の垣根を越え、徳島県内外のメディアでも広く報じられたことに強い忌避感を抱いたのか、社団は3月26日、編集局に所属する組合員に対し新設したKKへの出向を命じるとともに、4月1日付の定期異動において、前述のようなあからさまな昇進差別に及んだ。
2025年3月に申し立てた2事件ではまず、5回の調査期日において、双方から書面での主張反論が展開された。今年4月14日の審問期日では、全国から集った新聞労連の組合員ら約40人にも見守られる中、分社化反対活動を率いた委員長(当時)、昇進差別の対象となった組合員の一人が証言に臨み、組合に対する当時の社団の不誠実な姿勢やその時抱いた理不尽さ、報道機関における労組のあり方など、それぞれの考えを整然と語った(驚くべきことに、申立て翌日の朝刊で「当社は、不誠実団交や組合差別等の不当労働行為は一切行っていません」などと長文の見解を論じ、あらゆる論点で徹底的に争ってきた社団は、一切の証人を立てなかった)。6月に双方代理人が最終意見陳述書を提出した後、労働委員会により和解の模索がされていた。
(補佐人に西村誠・新聞労連委員長(当時)、伊藤明弘・同書記次長、日比野敏陽・関西新聞合同ユニオン委員長、廣瀬睦季・同徳島新聞グループ支部長ら、申立代理人に西川大史弁護士、筆者)。








