民主法律時報

第71回定期総会・70周年記念行事のご報告

事務局長・弁護士 清水 亮宏

はじめに

2026年8月29日、シティプラザ大阪において、第71回定期総会を開催しました。会場とZoom配信のハイブリッド開催で、会場参加97名、Zoom参加16名、合計113名の会員にご参加いただきました。民主法律協会は1956年6月に結成され、本年をもって結成70周年を迎えました。そこで、本年は総会に引き続き、70周年記念行事と記念レセプションを行いました。記念行事には114名、レセプションには80名にご参加いただきました。午後2時から午後7時半までの長丁場となりましたが、多くの皆さまと1日をともにすることができました。

第71回定期総会

記念行事を実施するため、総会は例年の半分ほどの時間での開催となりました。2026年度の活動総括と2027年度の活動方針案を提案し、承認されました。トランプ政権による他国への軍事介入とICC赤根所長らへの制裁、公明党の連立離脱を経た高市政権の誕生と2026年2月の総選挙での自民党大勝、高市首相による「馬車馬のように働いていただきます」発言(発言当時は首相ではありませんでした)、時間外労働の規制緩和の検討指示、裁量労働制の「見直し」表明など、1年間の情勢を振り返りました。民法協は、談話・決議・声明を通して意見を表明し、2026年5月には裁量労働制に反対する緊急集会を開催するなどして、このような情勢に対抗してきました。そのほか、労働相談活動の実績などについて紹介しました。

2027年度は、①悪法・規制緩和の動きに時期を逃さず対抗すること、②相談活動が各研究会の取組みに繋がる体制をつくり、次世代を担う人がより関わることのできる組織にすること、③3度目の大阪都構想住民投票に反対の声を広げ、大阪市の存続をめざすこと、を柱とする方針を提案しました。時間の関係で討論の時間はほとんど取れませんでしたが、藤木邦顕弁護士から、8月5日に自民党が公表したスパイ防止法に関する提言の危険性や、民法協を含む法律家5団体の共同行動について発言をいただきました。

決算報告と予算案、会計監査報告はいずれも承認されました。(カンパが例年ほど集まらず収支は厳しい状況です。労働事件を解決された際には、ぜひ民法協のことも気にかけていただければと思います。)

決議は、①3度目の「大阪都構想」住民投票及び統一地方選と同日の住民投票の実施に対して強く抗議する決議、②アメリカ政府によるICC赤根智子所長らへの制裁に抗議し、その撤回と日本政府の毅然とした対応を求める決議、③トランプ政権による国際法を無視した軍事攻撃及び日本における改憲と軍拡の動きに抗議する決議、④高市政権による立憲主義を軽視する法案の強行成立に抗議する決議、⑤労働基準監督署の「月45時間以内一律指導」見直しに抗議し、過重労働の根絶を求める決議──の5本を採択しました。全文をウェブサイトに掲載しておりますので、ぜひご活用ください。

本多賞

本年度の本多賞は、門真市職員懲戒処分取消訴訟弁護団と、大阪大学非常勤講師雇止め無効事件弁護団が受賞されました。

門真市職員の事件は、1971年の結成以来長年認められてきた勤務時間内の組合活動について、市当局が事前の注意も指導もないまま秘密裏に半年間の離席記録を作成し、執行委員長を減給、書記長を戒告とする懲戒処分を強行したものです。本年3月30日、大阪地裁は、長年黙認されてきた実態がある以上、事前の警告や適正な注意指導の段階を踏むべきであったとして、市の措置は信義則に反し裁量権の逸脱濫用に当たる違法なものであると断じました。弁護団の増田尚弁護士からスピーチをいただき、公務員の時間内組合活動に司法の逆風が続くなかで「信義則」を用いて違法性を認めさせた点が画期的であるということでした。

阪大事件は、非常勤講師の無期転換の申込みに対し、大学が従前の契約は委嘱契約(準委任契約)であって労働契約ではないとして約100名を雇止めにしたものです。本年5月15日、大阪高裁は一審判決を覆し、労働者性と無期転換を認めて雇止めを無効としました。弁護団の中村和雄弁護士からスピーチをいただき、大学教員に占める非常勤講師の割合が5割を超え、複数の大学を渡り歩かなければ生活できない実態を紹介したうえで、裁判所が労働者の実態に基づいて判断するという労働法の基本を離れ、契約の定めから労働者性を判断する立場に立っていることを厳しく批判されました。

役員選任

事務局次長の加苅匠弁護士・西川翔大弁護士、事務局の島袋博之弁護士が退任されました。2年間のご尽力に、厚くお礼を申し上げます。新たに、事務局次長として西川裕也弁護士・川村遼平弁護士、事務局として窪田航弁護士・那須幸実弁護士・松村隆志弁護士が選任されました。新体制で、民法協の活動を前に進めてまいります。

70周年記念行事

午後3時からは、70周年記念行事を実施しました。鎌田幸夫実行委員長の開会挨拶から始まりました。

問題提起

豊川義明会長(弁護士・労働法研究者)からは、「私達の権利運動と現在の課題 ―労働の尊厳と協働―」と題して問題提起をいただきました。冒頭に掲げられたのは、末川博元会長の「法の理念は正義であり、法の目的は平和である。だが法の実践は社会悪と闘う闘争である」という言葉です。結成から1970年までの戦前回帰態勢づくりとの対抗、そして1971年以降を、解雇、差別、配転・出向、国鉄分割民営化と国労「解体」攻撃、非正規と裁判運動、過労死・過労自死、団結権の擁護、「維新」市政における団結破壊という8つの課題に即して振り返られました。

現在の課題として示されたのは、人間の尊厳と労働の尊厳・協働・連帯、労働の価値と役割の見直し、そして裁判運動は社会運動であるということです。労働は人格の実現であり、賃金は人格の「対象」である。裁判によって法は生命を吹き込まれ、人権は現在によみがえるとし、結びの言葉(定言)として、「法の理念と目的は『人間の尊厳』と正義であり、法の実践は人権を実現する社会運動である」ということを掲げられました。

パネルディスカッション

続いて、「声を上げ、共に繋ぎ、未来を創る ~歴史に学び、激動の社会をのりこえる運動のデザイン~」と題してパネルディスカッションを行いました。コーディネーターは河村学幹事長、パネリストは緒方桂子さん(南山大学教授)、坂田俊之さん(大阪自治体労働組合総連合執行委員長)、青木克也さん(弁護士・立命館大学准教授)でした。学者・労働組合・弁護士という民法協の三者構成が、そのまま登壇者の構成となりました。

緒方さんからは、労基法1条1項の「人たるに値する生活」とは何かという問いや、ケアを中心に据えた政治や労働法制の構想が示されました。人間は、人生のどこかの時点で必ず他者からのケアを必要とする存在であり、潜在的に「ケアの受け手」であるという捉え方に変えていくことが必要であるということ等を語られました。青木さんからは、均等・均衡処遇をめぐる立法と裁判例の到達点、そして若い世代が労働組合に偏見を持っているというより「知らない」状態にとどまっていること等が語られました。坂田さんからは、公務の現場における格差是正の歩みと、なお残る格差、そして「やっぱり闘ってこそ労働組合だ」と実感した経験等が語られました。門真市職労は、勝てるか分からなくても闘う姿を見せることが大事であるとして闘争した結果、勝訴し団結も守られ、今年4月には新規採用者18人のうち15人が組合に加入したそうです。

会場からも活発な発言が相次ぎ、最後に、Zoomでご参加の中島副会長にまとめのコメントをいただきました。労働は社会の富の源泉であり人間の人格形成に欠かせないものであるという豊川会長の問題提起の重要性を確認したうえで、「運動のデザイン」に関してお話しいただきました。今後も自由闊達な意見交換を行いながら権利闘争を牽引していこう、と結ばれました。なお、問題提起とパネルディスカッションの詳細は、労働法律旬報に掲載される予定です。

70周年記念レセプション

記念行事終了後、同じ会場でレセプションを開催し、80名にご参加いただきました。河村学幹事長の開会挨拶に続き、大阪弁護士会会長の中井洋恵先生、日本労働弁護団会長の小島周一先生、日本共産党の清水忠史さん、自由法曹団大阪支部幹事長の増田尚先生、青年法律家協会大阪支部事務局長の安原邦博先生からご挨拶をいただき、全大阪労働組合総連合議長の福岡泰治さんの音頭で乾杯しました。日本労働弁護団からは、中村優介事務局長にもご参加いただきました。ありがとうございました。

歓談の合間には民法協の歴史を振り返るスライドを投影し、日本音楽家ユニオン関西の皆さまによる演奏もお楽しみいただきました。世代も立場も異なる方々が入り交じって語り合う光景は、まさに民法協らしい時間でした。

さいごに

総会・記念行事・レセプションと長時間にわたる企画となりましたが、会員の皆さまのご協力により、無事に終えることができました。ご参加・ご協力いただいた皆さま、そして準備にあたっていただいた70周年記念行事実行委員会の皆さまに、あらためてお礼を申し上げます。労働組合・学者・弁護士・市民による組織として、関西の勤労市民・労働組合の権利闘争を牽引してきたことが、私たちの財産です。立場の違いを超えて腹を割って議論できる組織であり続けることを、次の10年に引き継いでいきたいと思います。

2027年度も、民法協の活動へのご参加とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします

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