弁護士 冨田 真平
無期転換権を行使した大阪大学の非常勤講師4名が、大学が行った雇止め(解雇)が無効であるとして地位確認及び賃金の支払いを求めて提訴した事件において、2026年5月15日、大阪高等裁判所第10民事部(裁判長大島雅弘裁判官、竹添明夫裁判官、姥迫浩司裁判官)は、一審の大阪地裁判決を取り消して、大阪大学が行った雇止めが無効であるとして、非常勤講師らの地位確認を認めて大阪大学に(総額1500万円余りの)賃金の支払いを命じる判決を言い渡した。
1 原告らは、大阪大学で5年以上勤務していた非常勤講師であり、2020年ないし2021年に5年の無期転換権の行使を行った。しかし、大阪大学は、非常勤講師らとの間の契約が(2022年4月に雇用契約に切り替える以前は)委嘱契約(準委任契約)であり労働契約ではなかったとして無期転換権の発生を否定した。さらには、2023年3月末で、勤続10年以上の原告ら非常勤講師約100名全員について雇止めを行った。そこで、原告らは、無期転換権の行使により無期雇用になっているとして、地位確認及び賃金の支払いを求めて提訴した。
2 一審の大阪地裁判決(2025年1月30日、大阪地裁第5民事部)は、「労働者である教員とは異なり、被告から、委嘱に係る授業以外の業務を義務として命じられることはなく、諾否の自由があることがうかがわれる」、「業務の遂行に当たり、被告から一般的のみならず、具体的な指揮監督を受けることが想定されていないことがうかがわれる」などとし、さらに雇用契約に切り替わった2022年4月以降とそれ以前で就労実態に有意な差があるなどとして、原告ら非常勤講師が2022年3月以前は労働者でなかったと判断し、原告らの請求を棄却した。
3 高裁での審理においては大部にわたる控訴理由書を提出するとともに地裁判決を批判した学者の評釈をいくつも提出した。また、大阪大学の専任教員についての証人尋問も行い、専任教員にも非常勤講師にも大学からの指揮監督が及んでいることを証言してもらった。さらに、高裁での審理中の本年1月15日に同じく非常勤講師の労働者性が問題となった東京海洋大学事件で労働者性を認める逆転勝訴判決が東京高裁で出たことも大きな追い風となった。
4 そして、高裁判決は、一審判決を取り消して労働者性を認め大阪大学が行った雇止めを無効として原告らの地位確認・賃金請求を認めた。同判決は、労働者性の判断において、講師の業務内容についてきわめて詳細な事実認定をした上で労基研報告の当てはめを行い、①業務遂行上の指揮監督についてシラバスの作成、審査、シラバスに基づく授業の実施、その他の幅広い具体的な指揮監督の事実を詳細に認定し、大学による指揮監督を認め、②また報酬の労務対償性を認め、その他の要素は労働者性を認めることに矛盾しないなどとして労働者性を認めた。本来当たり前の判断ではあるが、不当な地裁判決を覆して詳細な事実認定に基づいて大学の指揮監督をきちんと認めた点は意義が大きい。この点、高裁での理論面・運動面での闘いにより1回結審とさせずに証人尋問を認めさせたことも高裁判決に大きく影響していると思われる。
5 被告らが上告・上告受理申立てを行ったため、闘いの舞台は最高裁に移ることとなった。この点、東京海洋大学事件についても上告がされており、大阪地裁労働部・東京地裁労働部で出された不当な判決を覆して労働者性を認めた両高裁判決がいずれも最高裁にあがることになった。
大阪大学の雇止めにあった非常勤講師のうち、声を上げることができたのはわずか数名に過ぎず、多くの非常勤講師は、自分たちに何ら非がないにもかかわらず無期転換逃れのために職を奪われ声をあげることすらできなかった。このような他の非常勤講師のためにも、原告らの職場復帰及び雇用の安定、さらにはすべての大学において非常勤講師が当たり前の権利である無期転換権を行使でき、雇用の安定が図られるよう高裁判決を維持させるべく引き続き一丸となって闘い続ける所存である。(弁護団は、中村和雄、鎌田幸夫、中西基、喜久山大貴各団員と筆者)








