民主法律時報

パワハラ・過労死110番 実施報告

弁護士 西川 翔大

 2019年12月7日(土)、10時から15時にかけて、パワハラ・過労死110番を行いました。今回の110番は、トヨタや三菱電機の社員がパワハラによって自殺したことが大きく報道され、パワハラ防止に関する指針案が不十分な内容のまま成立間近であることなど、近年ますますパワハラ・過労死問題に関する関心度が高まっている中、緊急で全国一斉に電話相談会を実施することになり、開催されました。

大阪では、テレビや新聞などによる報道の影響も大きく、ハラスメントの相談に関しては38件、労災補償の相談に関しては3件、その他労働相談が3件の総計44件もの多数のご相談が寄せられました。また全国では、179件ものご相談が寄せられました。

今回寄せられたご相談の中には例えば、納期の管理が厳しい中で2人がメンタルを害して離脱し、人員不足の中でより厳しく納期の管理をされて厳しい叱責を受けることはパワハラに当たるのかといったご相談や、取引先の社長から無理難題を言われるがなんとかならないのかといったご相談がありました。ほかにも、労働者の皆さんが普段の職場でハラスメントかどうか気になりつつ誰にも聞けない疑問やご相談が多数寄せられ、多くの会社や自治体でハラスメントを防止するための職場環境の整備や人員配置が不十分な現実が浮き彫りになりました。

現在、ハラスメント防止法が成立し、パワハラに関する指針の素案が提示されていますが、その内容は極めて不十分なものです。「ハラスメントに該当しないと考えられる例」として挙げられている記載については使用者の弁解を助長するような内容になっています。

今回、これだけ多くの方々から相談が寄せられた現状からすると、職場で不当な扱いを受けているにもかかわらず、どこに相談すればよいのか、何をすればいいのか分からない方がまだまだ多くおられるのではないかと思います。そうした方々の声を拾い、働きやすい職場を実現するきっかけとして、110番という無料電話相談の重要性を改めて認識することができました。また、今年の権利討論集会の第4分科会では、「ハラスメントのない職場をどう実現するか」というテーマでのご報告や意見交換を行いますので、少しでも興味がある方はぜひともお越しいただければと思います。

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