《書籍紹介》髙岡正美著『財は友なり』 ―― 労働運動と会社再建闘争一筋 “怒り、泣き、笑い”の半世紀

2019年01月15日

弁護士 奥田 愼吾

 著者である髙岡正美さんは、1934(昭和9)年8月生まれ、現在84歳にして現役。
1957(昭和32)年、学生アルバイトとして、総評・紙パ労連関西地協(全国紙パルプ産業労働組合連合会関西地方協議会)の組合書記になってから現在まで約61年間、労働運動と会社再建闘争に身を投じて来ました。
本書は、著者個人の労働運動の記録にとどまりません。戦後の労働運動の一面を映し出すとともに、労働組合運動の生きた実践例を示すものといえます。

著者は、産業別労働組合のリーダーとして「したたか労働運動」を掲げてきました。製紙業界の小さな組合が解雇、工場閉鎖、会社の倒産といった厳しい事態に直面します。著者は、従業員の雇用と生活を守ることを大事にし、そのためには会社を存続させねばならないと考え、専門家等の多くの「友」の協力も得ながら、組合の枠にとらわれない独自の活動を展開してきました。
例えば、組合による会社更生法申請や新会社設立、組合による水利権の取得、雇用保障協定の締結、銀行や親会社との交渉、組合が根抵当権者となるなど、意外で効果的な手を打つことに驚かされます。

また、著者は、1980~84年までの4年間、大阪地労委労働者委員として、合計134件の審査事件等を担当しました。本書では、労働者委員の立場で勝利和解に関与した大阪工作所事件等の個別事件の経験に加え、労働委員会についての提言や大阪争議団共闘や民法協が取り組んだ労働委員会の民主化運動も紹介されています。

私は、2010年夏から、著者とともに、経営が悪化した某学校法人の労使紛争に関わった経験があります。組合の顧問弁護士として、団交への参加、メインバンク等への要請、未払賃金支払請求訴訟等の活動をしました。その過程で目にした著者の取り組みは、極貧の幼少時代から培われた人間に対する洞察力や共感力、長年の経験と信念に裏打ちされたものでした。
労働運動の継承という観点から見たとき、また、労働者側弁護士として労働組合との関わり方を考える上でも、本書に記された著者の豊富な経験、労使紛争解決に向けた姿勢や取り組みから、貴重なヒントや教訓を得ることができることと思います。

図書出版 浪速社
2018年11月 発行
A5版・382頁
定価 1667円+税
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