「非正規」公務員の救済を頑なに拒否し、司法の役割を放棄する裁判所を糾弾する ~吹田市非常勤職員雇止め事件~

2018年04月15日

弁護士 河村  学

 本件は、吹田市において、生活指導員として21年ないし25年間にわたって任用(任期は1年)を継続してきた非常勤職員2名が、その担っていた職務の民間委託に伴い雇止めされた事件である。本事件の特徴としては、①吹田市においては、非常勤職員らが正職員と同様に恒常的・専門的職務に従事してきたこと、②非常勤職員の継続雇用を前提にして賃金の経験年数加算制度などが設けられ、現に雇止めされる職員もなかったこと、③職種が廃止された場合も含め、非常勤職員の雇止めは行わない旨の労使合意を文書で交わしてきたことなどが挙げられる。

しかし、吹田市は、同じ職場で働いていた正職員の生活指導員は他に転任させる一方、当該非常勤職員については、(最後は6か月とされた)任期が満了したという理由のみで雇止めした。民間であれば、労働契約法19条が適用される事案であり、かつ、吹田市は、本裁判において、雇止めを行う合理的理由を何ら主張・立証していないので、当然に雇い止めが無効とされる事案である。

 本件につき、第一審判決(大阪地判平28・10・12。裁判官―内藤裕之・菊井一夫・新城博士)、控訴審判決(大阪高判平29・8・22。裁判官―河合裕行・永井尚子・丸山徹)は労働者側の請求を一切認めず、2018年2月13日、最高裁は、記録が届いてからわずか約2か月で上告不受理の決定を行った(第三小法廷。最高裁判事・岡部喜代子・山﨑敏充・戸倉三郎・林景一)。
この期間からして、担当した最高裁判事は、事件記録を精査・熟慮することなく、本件の争点が「公務非常勤職員の雇止め」に対する救済を求めるものという一点で、申立人らの訴えを退けたものと思われる。

本件高裁判決が労働者の請求を認めない理由は、非常勤職員には任用期間終了後に再び採用される権利・要求する権利はなく、非常勤職員が任用継続を期待することは合理的でなく、その期待は「それ自体法的保護に値する利益とは認められ」ないというものであった。

この点、同種の別件である守口市非常勤職員雇止め事件大阪高裁判決(大阪高判平29・4・14。裁判官―山下郁夫、杉江佳治、久末裕子。地裁判決は本件の裁判体と同じ)では、「雇止め制限や解雇に関する法理が類推適用される余地はない」「労働契約法19条を類推適用することができないことは明らか」「信義則違反又は権利濫用により違法かどうか…について判断するまでも」ないとまで述べている。

例えば、自治体が、男女差別目的や不当労働行為目的で雇止めしたとしても、労働者が職を失うことについて裁判所は地位を認めないという判断であり、労働者としての誇りや生活を一顧だにしない裁判所の頑なな態度は、その法的根拠の乏しさ、実質的な結論の不当性、正規職員との不平等性からみても際立っており、このような判断を追認する最高裁は非常識と言わざるを得ない。

 本論点については、2015年12月11日、最高裁の組織である司法研修所が主催して裁判官の研究会が行われ、前記守口市事件と瓜二つの事案を題材に、同事件を担当していた内藤裁判官が講師となって議論をしていたことが明らかになっている。同事件は未だ争点整理の段階であったにも関わらず、当事者が激しく争っていた論点について、担当裁判官が、当局側の主張に沿った事実を題材として提供し、損害賠償請求の可否を議論していたのである。これは裁判所の公平性を疑わせる行為である。

非正規労働者に関する近時の裁判所の判断をも併せて考えると、司法全体の、非正規労働者を使い勝手のよい労働力とのみ考える現政権へのすり寄り姿勢、時には現政権さえ追い越すような非正規労働者に対する権利・救済否定の姿勢は目に余るものとなっている。それは「非正規」を社会的身分と位置づけるかのような風潮、非正規労働者の運動の弱さ、労働者全体の連帯した取り組みの弱さに乗じるものであるが、司法が一部の者に奉仕する機関になり下がりつつあることを示している。大げさでなく今の司法制度のあり方も含め、独自に批判されなければならないと思われる。

 公務非常勤職員の問題については、2017年の地公法改正により会計年度任用職員制度が創設され、民間労働者に認められる保護もない労働者を大量かつ恒常的に生み出す方向となっている。

しかし、今や「非正規」労働者はこの社会にとって大きな勢力となっており、新しい団結と連帯の重要性、政治変革の必要性に気づけば、現在の構造自体を変革する力を発揮できる。労契法20条を手段とする取り組みや無期転換をめぐる運動などはその萌芽である。

「非正規」は諦めない、「正規」のためにも「非正規」を切り捨てない、同じ労働者として連帯する、政治的に強くなる、そういう運動が必要である。