東リ伊丹工場みなし雇用確認事件 ―― 19年間の「偽装請負」から派遣法で社員化を目指す5名の闘い――

2018年01月15日

弁護士 村田 浩治

1 事実経過

床材、カーペット、カーテン、住宅建材等の製造販売をする東リ株式会社の伊丹工場では、その主力製品である巾木(部屋の床と壁の狭間に使用される建材)工程に遅くとも 年前から株式会社ライフイズアート(LIA)に所属する労働者が仕事をしてきた。契約上は、構内で巾木と化成品の工程は業務委託の形式で 名が働き、他の工程と事務の労働者派遣が6名という陣容だが代表者一人の事務所はマンション一部屋の個人会社であり、代表者が工程に関わることは全くなく、派遣先も東リだけの実質個人事業者だった。

2015年夏、派遣法改悪の最中、代表者のパワハラに我慢できず、連合兵庫ユニオン傘下の労働組合が結成され、瞬く間に80パーセントの従業員が組合員となった。当初は、LIA社長のパワハラに抗議し割増賃金を求め、未締結の36協定を締結するなどしていたが、やがて、東リからの契約次第で賃金が決定する会社から賃下げが一方的にされるなどの不当労働行為が起きた。これがきっかけとなり、組合が相談にやってきた。

2 偽装業務委託(偽装請負)の実態

しかし、就労の実態を聞く限り、彼らが、東リの組織に組み込まれ、毎日ノートやメールを通じて製造課、品質管理課から指示がされ、さらに東リ社員と何ら変わりなく、クレーム対応や品質改善の報告書を提出させられているという実情を知るにいたった。このような実態は労働者派遣に間違いないと判断した代理人の助言を受けて組合執行部は、LIA所属の就労から抜けだし東リの直用を求める方針を打ち出すにいたった。2015年10月1日から施行された労働者派遣法のみなし規定(40条の6、5項)の適用に基づいて、2017年3月に内容証明郵便にて「承諾通知」を発信し、3月27日付で東リに対し承諾による契約成立後の労働条件を協議するための団体交渉を申し入れたが、東リがこれを拒否したため、2017年11月21日、神戸地方裁判所に提訴するにいたった。

3 新会社による採用拒否の不利益取扱と団交拒否で不当労働行為救済申立

実は東リは、2017年4月から大手人材派遣会社に切り替え、従前のLIA従業員らを全員新会社に移籍させ、なんと労働者派遣契約を締結しなおした。労働組合内では承諾通知を発送する方針を巡って、16名いた組合員の大半が組合を脱退し、5名の組合員が残留したが、残留した組合員5名だけが新会社から「不採用通知」を受けたため4月に兵庫県労働委員会に対し東リと採用拒否した新会社であるシグマテックに対し、不利益取扱と団体交渉拒否の救済を求める申立も行っており、現在調査期日を重ねている。

4 訴訟の争点と課題

残留した組合員は、仕事を奪われ、雇用保険とアルバイトで生活を支えながら、労働委員会闘争と訴訟を余儀なくされている。長い者で19年、短い者でも4年以上、工場内で東リ社員と変わりなく仕事をしていた人達である。派遣法のみなし規定の適用には、会社が派遣法の適用を免れる目的をもっていたこと、違法であることを知っていたか知らなかったことに過失があることが必要とされる。しかし、製造業が許されていなかった19年前から偽装請負を続け、派遣法施行後もその契約を継続したうえ、当然2017年4月から突然労働者派遣契約に切り替えた会社に労働者派遣法の適用を免れれる目的がなく、善意無過失である等という判断を裁判所にさせてはならないと考える。当事者は連合兵庫ユニオン加盟のまま闘いを続けているが、今のところ上部団体からの支援は受けられず、孤独な闘いを続けている。民法協の組合の応援もぜひお願いしたい。

(弁護団は、村田浩治、大西克彦、安原邦博)