民主法律時報

国に対しても雇用責任の追及を ~医療刑務所偽装請負事件~

弁護士 河村 学

1 はじめに

本件は、偽装請負の状態で、刑務所及び少年鑑別所の車両運転業務に従事していた労働者が、国を相手に、採用その他適切な措置を講じること、損害賠償を支払うことなどを求めた事案である。2017年11月21日大阪地裁に提訴した。
本件は、2012年に改正された労働者派遣法40条の7を活用した初めての訴訟となる。

2 事案の概要

(1) 原告は、2012年4月から2017年3月末まで、6年間にわたって、大阪医療刑務所及び大阪少年鑑別所において車両運転業務に従事してきた。形式上の雇用主はいくつか変わったが、業務自体は全く同じ業務を継続的に行ってきた。

具体的な業務内容は、マイクロバスを運転しての施設収容者の移送・移入の護送を行う業務、救急車を運転して同所収容者の病院(外医診察)への護送を行う業務、官用車を運転して会計課の用務等の送迎業務等で、医療刑務所に用いられている発電機のメンテナンス、施設間の連絡用のバイクのメンテナンスなどの業務にも従事していた。

これらの業務は、国の職員が毎朝作成し原告に示す運行計画に基づいて行われ、また、計画書にない個別の運行指示・整備指示などにより行われていた。

まさに、偽装請負(違法派遣)状態での就労であった。

(2) 原告は、好き勝手に原告を使っておきながら、何か問題が生じた際には、請負会社を使って幕引きを図るという国のやり方が問題と考え、大阪労働局に是正申告を行い、同年11月16日、同局は労働者派遣法違反の事実を認定し施設に対し是正指導を行った。

その後、国は、就労関係を労働者派遣に切り替えようとしたが、医療刑務所から少年鑑別所への派遣は二重派遣にあたり違法であるなどと労働局からさらに指摘され、違法状態は解消されないままであった。

(3) ところが、その直後、国は、2017年4月1日からの運行管理業務の入札を行い、同業務を落札した請負会社(この会社は、かつて同業務につき原告の雇用主であった)は、今回は原告を雇用しないとし、原告は現雇用主より雇止めされた。

3 労働者派遣法40条の7に基づく請求

(1) 労働者派遣法40条の7は、国又は地方公共団体が偽装請負等派遣法違反の行為を行った場合、行為が終了した日から1年を経過する日までの間に、労働者が同一の業務に従事することを求めるときには、採用その他適切な措置を講じなければならないとしている。

しかし、本件において、医療刑務所は、労働者の雇用の安定に資する何らの措置もとらないばかりか、これまで事実上、請負会社が変わっても同業務に従事させ続けてきたのに、今回は、まさに偽装請負状態を利用し、おそらくは請負会社と図って原告を職場から放逐した。

このような違法行為を国が率先して行うことは許されない。

(2) 請求の構成は、「採用その他適切な措置」を講じないことの不作為確認請求と、その義務付け請求、損害賠償請求からなる。

国又は地方公共団体については、民間会社が派遣先の場合に適用される労働契約のみなし申込み制度(労働者派遣法40条の6)が適用されないため、訴訟上の工夫は必要であり、また、脱法の意図や、故意・過失などあいまいな要件も付加されている。しかし、国会答弁でも、同法40条の7は、みなし申込み制度と同様の措置をとるものとされおり、就労実態を真摯にみれば適切な判断をなし得る事案である。

国・地方公共団体の雇用責任をどう判断するのか、まさに司法の真価が問われる訴訟である。

4 労働者全体の利益を代表する運動を

労働者派遣の問題に限らず、国・地方公共団体の一部は、民間会社と競い合うようにして、生活のため抵抗できない非正規労働者を買いたたき、使い捨て、極めて貧弱な労働者保護法制すら守らずに済まそうとしている。そして、その行為を支えているのが、何をしても裁判所は国・地方公共団体の味方、困難を排して抵抗に立ち上がった労働者がいても、きっと裁判所がその労働者を叩きのめしてくれる、見せしめにしてくれるという自信である。

労働組合をはじめ労働運動に携わる人たちは、このことを忘れず、連帯を強め、政治を変え、裁判所を変える運動を強めることが必要である。

(弁護団は、村田浩治、河村学、小野順子)

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP