民主法律時報

どうなる子どもと教育――大阪教育集会2017を開催しました

子どもと教科書大阪ネット 運営委員・弁護士 楠 晋一

2017年6月3日、PLP会館にて大阪教育集会2017を開催しました。70名を超える参加をいただきました。

講演の前半は、大阪教文センター事務局長の山口隆さんが、新学習指導要領、道徳の教科化等に関して、現在学校で起きていることとその背景についてお話しされました。大津市のいじめ自死問題を端緒として、いじめ対策とは無関係の道徳の教科化をねじ込んでいきました(大津市の学校は、事件当時からすでに道徳教育の指定校でした。)。また、文科省は道徳の教科について数値による評価を行わないと述べていますが、一部の地域で道徳の市販テスト(4択問題を答えさせる)を活用する動きがあり、教員の多忙化に付けこむ形で数値評価を行う動きもあるようです。新学習指導要領の下では、それまでの学習時間を削ることなく英語の早期教育が追加されるため、小学4年生で1989年に週6日で実施していた年間1015時間を週5日でこなす必要に迫られることになりました。そのため、小学校では、休み明け直後の短縮授業がなくなり、連日1日6時間の授業を受けるという(下手すれば1日7時間の日も出てくる)中学3年生と同じスケジュールで学ばされる事態になっています。その他にも、小学校には英語の教員免許取得者が少ないにもかかわらず、英語の早期教育が実施されるため、無免許者による指導が行われる見通しであること、技はのどと心臓を「突く」しかなく、競技人口わずか3万人余り(そのうち8割が自衛隊関係者)しかいない銃剣道が中学校体育に取り入れられようとしていること、幼稚園教育要領や保育指針に「国歌に親しむ」と記載され幼児期からの洗脳を進めようとしていることなどが語られました。

後半は、子どもと教科書大阪ネット21の道徳教科書検討チームが、「感謝」「礼儀」「伝統と文化、国や郷土を愛する態度」「国際理解・国際親善」「家族愛、家庭生活の充実」「勤労、公共の精神」「規則の尊重」というテーマから、実際の教科書はどのような題材が取り上げられ、そこにはどのような意図が込められているのかについて報告しました。生の教材を示しながら、問題点を説明することで、参加者からも非常に分かりやすかったという感想をいただきました。

本来であれば教育は、憲法、教育基本法の理念にのっとり、自分も、他人も、個人として尊重し、多様な価値観を育む場でなければなりません。ところが、道徳は国語や社会など他の教科と異なり、学問的な標準が存在しません。そのため「あなたも正しい、私も正しい」という場面が多分に存在します。それにもかかわらず、教科書が提示する断片的な物語が唯一の正しい考え方であるかのような教え方に誘導することは、かえって画一的な価値観を植え付けることになりかねません。

道徳教科書の検討で浮かび上がってきた問題は行きつくところ、道徳の教科化の問題、ひいては安倍第1次政権から推し進められている教育改悪の問題にたどり着きます。

来年は中学校道徳教科書の検定があり、育鵬社も教科書を出版します。しかし、今回の検定で明らかになったのは、育鵬社の執筆メンバーが小学校道徳教科書でも各出版社の執筆メンバーに入り込み、彼らの見解に近いものを作って、小学生に考え方を刷り込もうとしている現実です。引き続き、道徳教科書の問題に皆さまも注目していただきますようお願いします。

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