民主法律時報

メーデーの起源の地シカゴで 労働運動について学んできました!――レイバーノーツ大会@シカゴ

北大阪総合法律事務所 事務局 三澤 裕香

 2018年4月6~8日にシカゴで行われたレイバーノーツの大会に参加してきました。日本からの参加者は全部で27人。日本各地(東京・大阪・京都・愛知・三重・高知・鳥取)から弁護士や労働者が参加しました。大阪からの参加者が安原邦博弁護士、伊藤大一さん(大経大)、私の3人だけで、少数だったのが残念です。もっと大阪からも多くの労働者や弁護士に参加してほしかったです。

大会に先立ち、現地の労働組合などたくさんの労働者と交流したり、労働の歴史を学ぶツアーに参加しました。
個人的にメキシコ移民の労働者の話が印象的で、トランプ政権下で移民への弾圧が強くなっており逮捕や投獄がなされていること、移民労働者は非正規労働者であること(正規になれないようです)、労働者としての権利やそもそもの人権が侵害されている中で労働者や移民としての権利を学び、コミュニティで協力し、力をあわせ支えあっている姿に心からエールを送りたいと思いました。AVA(シカゴのストリートベンダー(屋台みたいに通りで食べ物を販売している人たち)の協同組合)のみなさんがもてなしてくれたメキシコ料理がおいしかったです。

 労働の歴史を学ぶツアーに参加して初めて知ったのですが、シカゴはメーデーの起源の地だったんですね。1886年、シカゴで8時間労働を要求する労働者の大集会が開催され、その後の5月4日にヘイマーケット広場で労働者と警官隊の衝突があり、その際に爆発が起こり、労働者4人が証拠もないままにその爆発事件の首謀者とされて死刑になりました(ヘイマーケット事件)。労働者側はそのことを忘れないように、直前に大集会が行われた5月1日を労働者の日として毎年集会を開くことにしたのだとのこと。それを聞いて私の中でメーデーの意味が変わりました。これからは先人たちに感謝し、労働者として誇りを持って過ごそうと思います。写真はヘイマーケット事件で犠牲になった人たちを慰霊する像の前で撮ったものです。

大会には世界各地から3000人近い人々が参加したようです。年齢も性別も人種も職業も本当に様々な人たちが参加していました。会場はオヘア空港近くにあるハイアット・リージェンシーホテル。私は参加するのも初めてだし、レイバーノーツ及びその大会の存在を知ったのも最近ですが、レイバーノーツの歴史は古く、設立は1979年とのこと。そもそもレイバーノーツとは、「労働運動に運動を取り戻す」を合言葉に設立された「労働教育・研究プロジェクト」というNPO組織であり、月刊誌を発行し、ウェブサイトを運営し、労働者向けの教育プログラムを実施したりしています。

大会は6日の午後から始まりましたが、それに先立ち、日本の参加者向けにファシリテーターワークショップを開催してもらいました。このワークショップのおかげで、日本で日常的に行われているワークショップとは明らかに違うワークショップの進行にも、そんなに戸惑うことがありませんでした。日本だったら、進行役・発言者が決まっていて、参加者は話を聞いて、質疑応答のときに何人かが発言をするけれど、一言も話さずに帰る人が多いですが、この大会では、ワークショップの途中でペアもしくはグループでテーマに沿ってディスカッションをする時間が設けられるし、ディスカッションがない場合でも次々に会場から発言があって、退屈する暇がありませんでした。

大会が開催された3日の間に、ワークショップ(1コマ90~105分)が全部で9回(1日間3回、2日目4回、3日目2回)も行われ、多い時間帯には同時に42種類ものワークショップが開催されました。1日にこんなに勉強したのは大学以来じゃないかというぐらいのハードスケジュールで、特に1日目は頭がパンパンになってキャパオーバー状態でした。

私が参加したワークショップ(訳し方が間違ってたらすみません)は、①成功するオーガナイザーの秘訣(無関心に打ち勝つ)、②レイバーノーツとは?、③アジアの連帯と軍事力、④職場での人種差別・性差別の克服、⑤日本の労働運動、⑥国際連帯の構築、⑦日本の映画上映(メトロレディースブルース、アリ地獄天国)、⑧アジア労働交流会、⑨地域と労働者の協力による組織づくり。
日本のワークショップでは、メトロコマース裁判の後呂さん、日本郵便20条裁判の筒井さん・渡邊さんが報告をされました。メトロコマース裁判はシカゴに行くまで知らなかったので(すみません)、そういう意味でも参加してよかったです。

アジア地域の交流会では、アジア版レイバーノーツ大会を開催する話で盛り上がり、早ければ来年春に東京で開催予定です。海外にはなかなか行けないという方はぜひこちらにご参加ください。

大会に参加して得られたものは多かったです。みんな普段は色んな悩みや苦労を抱えているかもしれませんが、自分たちの活動や経験を発言する彼らは誰もが輝いていて、労働者って素敵だなと思ったし、同じ労働者として誇らしかったです。

「組織化」のためのヒントがほしいというのがこの大会に参加した動機のひとつでした。たくさんのワークショップに参加するなかで、現実を諦めてまわりと対話していなかった自分に気づきました。私の悩みに対して得られたキーワードは「対話」「共感」「共有」「連帯」「協力」。これからは組合のメンバーはもちろん、未組織の人とも諦めずに会話してみようと思います。会話の中から共通点や共有できるものを見つけ出すことができるかも知れないし、自分自身の認識も高めることができるからです。あと、当たり前ですが組合は一人で動かせるものではありません。1%の中心メンバーだけでいくら頑張ってもダメで、まわりに活動の担い手になりうる信頼できる10%を作り出すことが大事です。ついつい目に見える結果を求めがちですが、変化は1日で訪れるものではありません。一歩一歩少しずつでいいから前に進めばいい。当たり前のことばかりですが、大事なことを再認識することができました。

大会に参加して、改めて労働運動って素敵だなと思いました。簡単ではありませんが、自分たちの要求実現をするのはもちろん、地域と協力して社会を変えたり、政府を動かすこともできるし、国際連帯を通じて世界を変える可能性もあるのだと思ったら、その「可能性」にワクワクしました。課題は山積みだし、人材不足とか弱体化とか悩みは尽きないし、目の前のことで手一杯なのが現状ですが、労働者・労働組合・労働運動に希望をもらうことができた大会でした。

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