民主法律時報

大阪府労働委員会との懇談会を開催

弁護士 遠 地 靖 志

 2012年6月27日、大阪府労働委員会との懇談会が開催されましたので、ご報告します。
府労委との懇談会は、2008年以来4年ぶりの開催です。府労委からは井上隆彦会長をはじめ8名の公益委員が出席、民法協からは大江洋一、出田健一両副会長、城塚健之幹事長をはじめ10名が参加しました。

 懇談会は、井上会長、城塚幹事長の双方からのあいさつ、府労委事務局から主に審査事件を中心とした状況が報告された後、8項目にわたり意見交換が行われました。

① 口頭申請、主張書面のFAX提出、正本・副本等の提出部数について
まず、口頭申請については、平成  年以降では1件だけである旨回答がありました。また、府労委として口頭申請に対応する体制をとってはいるが、原則、書面での申請を求めているとの回答がありました。また、主張書面のFAX提出については、申立のうち半数以上の事件に代理人が就いておらず、FAXが未設置又は役員等が常駐していない労組がある現状では、申立人に不利に働くこともあるので原則認めていない、との回答がありました。また、提出部数の問題については、委員数、事務局、速記者用等必要であり、現在の部数をお願いしていること、また、府労委側での複写も人手や予算の問題があり、財政的に厳しいとの回答がありました。ただ、何とかしたいとの思いはあるとの意見もありました。

② 審理の進行について
次に、事案に応じて集中審理を行うことについては(現在は1回2時間)、労働委員会では証人調べを特に重視しており、そこに全力を注ぐとなると1日2時間が限度であること、これまでの経験から1日2時間程度が適切な時間と考えている、との認識が示されました。また、1回の審問で主尋問を集中的に行い、次回に反対尋問を行う現状について、代理人が就任していない場合は当事者が1回の審問で反対尋問を行うことは負担が大きく、そのため、このような審理方式をとっているとの回答がありました。ただ、双方に代理人が就任している場合には、主尋問に続けて反対尋問を行うなどの柔軟に対応したいとの回答もありました。
また、第1回期日の調整については、できるだけ早く第1回期日を入れた方が全体として迅速な審理ができるとの経験的な判断から、申立人とも日程調整をせずに、委員のみで日程調整をしているとの回答がありました。ただ、申立人側との日程調整については検討するとの回答がありました。

③ 物件提出命令について
まず、物件提出命令が出された例は、平成  年以降、1件あるとの回答がありました。また、棄却や翌年度への繰越が見受けられる点については、条文上、物件提出命令が最後の手段と位置づけられており、そのため、判断が後回しになったり、他の証拠による認定が可能なため必要性がなく棄却される例があるためである、との回答がありました。また、労働委員会として物件提出命令を積極的に活用する方策は検討していない旨の回答がありました。
その後の意見交換では、公益委員から、できるだけ柔軟に対応したいが、要件が厳しいと言う問題があり、できるだけ任意の提出を求めている運用も紹介されました。また、同様の問題が証人出頭命令でもあること、中労委が証人出頭命令を出した例が平成  年に1件あることが報告されました。

④ 証人の採用、当事者である補佐人の退席について
次に、補佐人の退席について、府労委では、在室させる方が労組にとって好ましい場合が多く、原則在室を認めていること、それとのバランスで使用者側の補佐人にも在室を認めているとの回答がありました。もっとも、公益委員からは、立証趣旨によっては在室を認めないこともあり、ケースバイケースで考える、との意見も出されました。
この点に関しては、民法協からは、双方代理人が就任している場合には、訴訟と同じように退席の扱いをする必要があるのではないか、との意見を述べました。

⑤ 結審から命令までの期間について
結審から命令までの期間については、審理計画策定時に事案の難易によって決定までの期間を決めており、目安として単純2号事件の場合は4か月、通常で6か月、困難な事件の場合は8か月としていること、実際には、計画より1か月ほど早く命令が出ているとの報告がありました。また、訴訟と比べて長いとの指摘に対しては、委員会制度(合議制)をとっていること、委員が常勤ではないという点があるがゆえに訴訟より長くならざるを得ないが、努力はしており、少しずつ前進していると思う、との認識が示されました。

⑥ 使用者性の認定について
使用者性の認定については、府労委としても最重要テーマと考えているとの回答がありました。また、使用者性が問題となる事案が多々あるが、朝日放送事件の判断基準では現状に対応できず、労働委員会としても判断基準を作る必要があると感じている、との意見も出されました。また、使用者性の問題は府労委側の努力だけで解決できる問題ではなく、組合、代理人側の努力も必要であり、がんばってほしいとの注文もありました。このような府労委側の認識、注文を受けて、民法協としても学者会員とも協力して、研究していきたいと答えました。

⑦ 不当労働行為事件審査の実効確保の措置勧告の手続、運用基準について
この点については、最初に最近の2例(ひとつは、いわゆる大阪市思想調査アンケートに対する不当労働行為申立の事案)が紹介されました。また、実効確保の申立があった場合は、すべて公益委員会議で判断すること、公益委員会議で勧告をしないとの判断をした場合でも、個々の委員のもとで、口頭で事実上の要望を行うことがあるとの運用が報告されました。
また、判断基準は特になく、個別に対応しているが、参考になるものとして労働委員会施行規則通知(昭和27年5月26日中労委文発221号)の紹介がありました。

⑧ 申立組合、代理人に対する要望について
意見交換事項の最後として、府労委側から、代理人が複数いる場合には代表者だけでも日程があう日に日程を入れたい、書面提出期限、尋問時間の遵守等の要望がありました。また、和解に積極的に協力して頂きたい、手続き選択や当事者申立の場合の書面の作成等について当事者に適切なアドバイスをお願いしたい等の要望がありました。

 さいごに、出田副会長から、忙しい中、懇談会の時間をとって頂いた公益委員にお礼を申し上げるとともに、今後も労働委員会を充実したものにすべく民法協としても努力を重ねていく決意及び労働委員会が労働者や労働組合を鼓舞するような命令を出すことへの期待を述べて、1時間半の懇談会は終了しました。

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