日本放送協会不当労働行為救済申立事件 勝利判決のご報告

2017年05月15日

弁護士 野矢 伴岳

1 事案の概要及び争点

本件は、原告である日本放送協会(NHK。以下、「協会」という)が、協会の契約取次等を行う地域スタッフで組織する全日本放送受信料労働組合堺支部(以下、「全受労」という)からの団体交渉の申し入れに対し、協会が外部の者であるとする坂元氏(組合の特別執行委員で堺労連事務局長)の出席を理由として団体交渉を拒否したことが不当労働行為にあたるとして、全受労から不当労働行為救済命令申立てを行った事件で、府労委及び中労委において、協会の団交拒否があったとして文書手交が命じられたことにつき、協会から同命令の取消訴訟が提起された事件です。

本件の争点は、1.全受労の組合員である地域スタッフは協会との関係で労働組合法上の労働者と言えるか、2.平成23年11月2日団交申し入れに対する協会の対応は、正当な理由のない団交拒否にあたるか、の各点でした。

2 裁判所の判断

東京地裁平成29年4月13日判決では、結論として、いずれの争点についても全受労の主張が容れられ、原告の請求が棄却されました。

争点1について判断するに当たり、裁判所は前提として労組法の趣旨に触れ、「労組法上の労働者は労働基準法上の労働者よりも広く解し、労働契約によって労務を提供する者のみならず、これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含むと解するのが相当である」と述べました。

その上で、判断基準については、INAX、ビクターの最判事例と同様の規範に従って検討しています。この点については地労委及び中労委の枠組と同様であり、目新しい点は無いため割愛しますが、その中で協会が目標数(ノルマ)を通じて地域スタッフを管理している点については、「管理の態様は相当強度なものである」、「一般的な委任契約や請負契約の形態とは一線を画す相当強度なものというべき」と認定しています。

結論としては、「地域スタッフは、事業継続に不可欠な労働力として原告の事業組織に組み込まれ、契約内容の重要部分は原告により一方的に決定され、その報酬には労務対価性が認められる。一方で、個別的な業務の依頼に応じるべき関係や、個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え、あるいは、指揮監督を行うという関係は見出し難いものの、他方で、目標達成に向けて業務に関する事細かな指導を受け、目標達成に至らなかったときは委託業務の削減や本件委託契約の解約等の段階的な措置を講じられることが予定されている等、その業務遂行が原告の相当程度強い管理下におかれていることに鑑みれば、本件委託契約で委託された業務全体について、原告の業務依頼に応ずべき関係が存在し、その労務の提供について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められる反面、顕著な事業者性を認めることはできない」として、地域スタッフは労組法上の労働者に該当するとしました。

争点2については、前提として協会の対応について、義務的団交事項に関する団交申し入れに対し、地域スタッフではない部外者を除いたメンバーとの交渉を望み、その対応を変えなかったことは団交拒否にあたる、としています。

さらに、原告はそのような交渉申し入れへの対応を行ったことに正当理由が認められるとも主張しましたが、これについて裁判所は、団体交渉に部外者が出席するにあたり労使双方の了解が必要とするルール(交渉ルール)の合意があったと推認させるだけの事情は無いと判断し、また同様の慣行が成立しているということもできず、その他、坂元氏が出席することで紛争の蒸し返しや混乱が生ずるとする根拠も無い、として、原告が主張する理由はいずれも団体交渉拒否の正当な理由であるとは認められない、と結論付けました。

3 本件命令の持つ法的・実践的意義

本件は、NHKの地域スタッフからなる諸組合にとって、使用者側が、不当にも長年に渡り争ってきた労組法上の労働者性に関し、最高裁判例の枠組みに従って正当な判断を示したものであり、今後の当該組合の活動にとって重要な意義があるといえます。

法的には、労基法上の労働者性よりも労組法上の労働者性の方がより広い概念であることを明言したうえで、労組法上の保護を及ぼすべきかどうか、という観点から労働者性を検討すべしとした点については、目新しいと言えるかもしれません。

判決内容としては、労組法上の労働者性を認めた点に関しては、本件事案のもとでは「極めて当然」の結論であり、私見として敢えてこれを画期的な判決と評価することは致しません。ただ、協会の地域スタッフの管理の仕方に関する文脈として、管理の態様が「相当強度」であるとしている点は、地域スタッフに労組法上の労働者としての保護を及ぼすべきと言う価値判断が強く感じられるところであり、組合側の主張に沿ったものと評価できるところです。

また、団交拒否の点についても、組合の交渉担当者は組合が決定すべき事項であることを明言し、これを制限する正当な理由を認めなかったことは、当然のことではありますが、これからの交渉を行う上での実践的な意味を持つと思われます。

4 最後に

本件は協会側から控訴されました。弁護団としても、手綱を緩めず、さらなる労働者の地位向上に向け、奮闘を続けます。
なお、関連事件として、地域スタッフの不当解雇につき、地位確認を求めた事件(労働契約法上の労働者性等が争点)については、最高裁で上告棄却・不受理となり、敗訴が確定しました。これについては、非常に遺憾な結論であり、労働者の実態を省みない不当な判決です。本件を踏まえ、団体交渉を通じ、今後はこのような不当な扱いが改められるよう望みます。

(本件の弁護団は、河村学、井上耕史、西澤真介、野矢)