民主法律時報

緊急集会 働き方改革の真偽を問う ~やりがい搾取企業ともぐり残業~

NPO法人働き方ASU-NET理事 北出 茂

2017年3月22日に、エル・おおさかで、過労死をさせない残業規制を求める緊急集会「働き方改革の真偽を問う~やりがい搾取企業ともぐり残業~」が「NPO法人働き方ASU-NET」と「民主法律協会」の共催で実施されました。

『電通事件』(旬報社)の著者である北健一さんの講演会が行われました。

電通では1991年に入社1年目の男性が過労自死しています。2015年12月25日のクリスマス。高橋まつりさんが過労自死しました。同じ会社でまた新入社員が過労死をしたわけです。
高橋まつりさんは死の直前、母に遺書を残していました。
「大好きで大切なお母さん、さようなら。ありがとう。人生も仕事もすべてがつらいです。お母さん、自分を責めないでね。最高のお母さんだから。」
2016年9月30日 三田労基署、高橋さんの自死を労災認定。
そして、「過労死等防止対策白書」公表と同じ日に「電通女性社員の過労死労災認定」が公表されました。高橋さんのご遺族が、名前と顔(写真)を公表された勇気に敬意を表します。

ところが、期を同じくして、「働き方改革実現会議」が開始されます。アベノミクスの失敗を隠すために、出てきた「生産性改善の切り札」です。
そもそも、2006年に第1次安倍内閣がWE(ホワイトカラーエクゼンプション)の導入を図ろうとしたように、「残業代ゼロ法案」とセットになっており、嘘で固められた「働き方改革」の検討といえます。
このことに抗議する緊急集会であるため、後半の発言、リレートークも “過労死ラインと同じ上限の残業規制 ”に異を唱える発言が相次ぎました。

とりわけ、労働時間規制が「最初から過労死ライン」となっていることに「遺族は怒り狂っている」(全国過労死を考える家族の会代表の寺西笑子さん)という発言が胸にしみました。
産業力、経済成長戦略が重視される一方で、人権的な視点が全く欠け落ちています。一体、誰のための何のための改革か。
働き方改革の名で、命にかかわることに、最悪の合意がなされてしまっているわけです。
政府主導で、過労死ラインを合法化するものであり、「過労死ラインの残業を政府が公認する、放任する、ということに他ならない」(大阪過労死問題連絡会会長の森岡孝二さん)という指摘もありました。
裁量労働制、長時間労働については、損保業界における現場の事例の紹介や「一言で100時間というが、 時までが法定労働時間だとすると、 時まで」(1日5時間×月 日)という具体的な指摘もなされました(裁量労働制に詳しい松浦章さん)。

成果主義は長時間労働を招きやすく、時間外が月 時間を超えると健康障害リスクが増加します。これは医学的知見です。
世紀にもなって、死ぬぎりぎりまで働かせていい、というようなルール作りをすること自体がおかしいのです。
他方で、長く働くことがよいことだと思っている人がまだまだ多いのではないかとも思います。
私たちは、「過労死防止法」の理念に則り、社会全体で長時間労働をなくすことの意識改革をこれからも求め続けます。

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