民主法律時報

辺野古・高江の今

北大阪総合法律事務所 事務局 三 澤 裕 香
(写真提供も三澤さん)

 2015年8月29日から9月1日まで、高江・辺野古に行ってきました。
沖縄を訪れるのは今回で6回目。4回目までは沖縄=観光地でしたが、昨年11月に知事選挙の応援で訪れてからは、沖縄はもっと身近で守るべき大切な場所になりました。
選挙の応援では、辺野古のある名護の事務所に配置され、朝から晩まで練り歩きやポスティング等、沖縄ならではの選挙活動を体験しました。知事選挙の結果は、みなさんご存じのとおり、新基地建設反対の翁長さんが当選しました。その前に行われた名護市長選挙でも同じく反対派の稲嶺さんが市長になり、その後に行われた衆議院選挙でも反対派の候補者が当選し、新基地建設反対が沖縄の圧倒的民意であることが明らかになりました。

衆議院選挙が終わったとき、これだけみんなが反対しているのだから新基地建設は中止されると思いました。しかしながら、実際は中止どころか、国は工事を強行したのです。そのとき、民主主義って何なのか?と思わずにはいられませんでした。圧倒的な民意がたやすく踏みにじられる、その現実にぞっとしました。そして、この問題は沖縄だけの問題ではないのだと改めて実感しました。大げさかも知れませんが、これは民主主義を守るための、全国民の問題なのだと思うようになったのです。

今回、高江と辺野古を訪問しました。
高江は、沖縄本島の北部、やんばるの森の中にある集落です。豊かな自然の中、米軍のヘリパッドが建設されようとしています。2007年から6か所のヘリパッド建設が始まり、現在2か所のヘリパッドが完成してしまいました。訪れたのが日曜だったので静かでしたが、高江のヘリパッドにはオスプレイも離着陸します。
高江のテントは、非暴力・不服従の意思表明をする場なのだと説明されました。ヘリパッド建設を中止することはできていないけれど、反対運動をしていなければ、とっくにヘリパッドは全て完成していた、激流の中でただ立ち続けるだけでもどんなに大変なことか想像してみてください。静かな口調でしたが、日々の暮らしの中、何年もの間、毎日抗議行動を続けることがどんなに大変なことなのかがよく伝わりました。

 辺野古では、知事選挙のときに友だちになった抗議船の船長と行動を共にしたおかげで、朝8時からの船団・カヌー隊のミーティングに始まり、汀間(ティマ)漁港で船を陸から海に入れる作業、海上行動、カヌー隊を辺野古の港に牽引する作業、汀間漁港に戻って船を海からあげる作業、最後のミーティングまで、ほぼ丸一日の作業を体験させてもらうことができました。
朝、汀間漁港から出港すると、海上にオレンジのフロート(浮具)が見えてきました。これは制限区域を示す目印です。カヌー隊が簡単に乗り越えられないように1玉がかなり大きくて、なんと1玉1万5000円もするのだとか。いったい何玉あるのか・・・。
制限区域に近づくと、すぐに警備船が数隻近寄ってきて警告を始めました。「制限区域だから出て行くように」機械的な声で繰り返しアナウンスが続きます。海上には「ODB(沖縄防衛局)」の旗を掲げた小型漁船が何隻も浮かんでいます。監視役として、地元の漁師たちが1日5万円で雇われているとのこと。生活のためにやむなく監視船に乗っている人も多いそうで、お金で地元を分断させる汚いやり方だと腹が立ちました。

私たちが辺野古を訪れたときは、ちょうど移設に関わる全ての工事が中断されている最中で、沖縄県が珊瑚の損傷状況を確認するべく、潜水調査を開始した日でした。ところが、昼前にキャンプシュワブの浜に浮き桟橋が設置されたのです。全工事が中断されるはずだと、浮き桟橋の撤去を求めて、カヌー隊・船による海上抗議行動が始まりました。私たちもハンドマイクを握りました。みんなで抗議をした甲斐あって、浮き桟橋は無事撤去されました。しかし、その前日に沖縄を訪れた菅官房長官が「期限を過ぎれば工事を再開する」と明言しており、油断も隙もありません。

海では、抗議行動だけでなく、自然豊かな美しい辺野古の海を見せてもらうことができました。400年の歴史をもつハマサンゴが見える場所に連れて行ってもらい、箱メガネで水中をのぞいたら、青いきれいな魚も見えました。この美しい海を埋め立てて、基地を作ろうとしているのです。今、海底に沈められたブロックやそれに繋がる鎖が、海底の珊瑚を傷つけています。それだけでも環境破壊なのに、この海に土砂を流し込めば、生態系が一瞬のうちに崩れてしまうことぐらい、素人の私でも分かります。この美しい海を埋め立てること、軍事基地をつくること、絶対に許せません。

 3泊4日でしたが、観光をする暇もないぐらい、高江・辺野古一色でした。辺野古では、ゲート前の座り込みにも参加しました。当初、工事が中断されたと聞いて、ゲート前で体を張って工事車両の進入を止める気満々だった私たちは、行ってもすることあるのかなと思っていましたが、そんな心配は無用でした。辺野古でも高江でも、工事が中止されるまで、毎日が闘いなのです。日々頑張っている現地のみなさんには本当に頭が下がります。

まだ、辺野古や高江に行ったことがない方は、ぜひ行ってください。実際に行って、自分の目で見て、聞いて、肌で感じないと分からないことがたくさんあります。でも、なかなか難しいですよね。実際に現地を訪れた私たちがすべきこと、それは自分が見聞きしたことを少しでも多くの人に伝えることだと思います。私のつたない文章を読んで、少しでも多くの方に辺野古・高江に関心を寄せてもらえたなら、とてもありがたいです。

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