民主法律時報

大川真郎 著 『裁判に尊厳を懸ける 勇気ある人びとの軌跡』

弁護士 宇賀神   直

 人が困難な裁判に臨むとき、試されるのは信念、勇気、忍耐、すなわち人間性である。事件の当事者はいかにして裁判を乗り越えるのか。その思いから大川真郎弁護士は自分が担当した事件から当事者らの知られざる素顔を描き出す思いで7つの裁判の当事者の闘いを書いています。私の読後感ではその思いは達成されています。

 その7つの裁判は、第1話 権力犯罪とたたかった二人の青年―和歌山大学生「公務執行妨害」事件。第2話 守り抜いた憲法の理念―杉山弁護士接見妨害。第3話 暴力から議会制民主主義を守った市議―斎藤八尾市議会議員除名事件。第4話 私たちに青空を―四日市公害訴訟。第5話 それでも私は働き続けたい―日本シェ―リング労働裁判。第6話 『嘘構の嵐』に立ち向かった医師―近畿大学「医療過誤」裁判。第7話 美しい島を後世に―豊島産業廃棄物不法投棄事件。

 この7つの裁判のどれもが裁判本人の苦労と奮闘の足跡が事実に裏付けられて書かれております。民法協の会員には是非とも読んで欲しいと思うのですが、私が特に奨めたいのは第5話の日本シェ―リングの労働裁判闘争です。この会社と労働者、労働組合ではあらゆる不当労働行為と権利侵害の手本がある、と言う、会社から攻撃を受けた労働組合と労働者が20年間も永きに亘り闘い東京地裁(中労委命令に対する会社の取消訴訟)で全面的な解決の和解が成立した。この  年の闘いを振りかえり、その間の単組と上部団体、そして弁護団との時には厳しい遣り取りが書かれています。特に組合員の1人1人が厳しい中での宣伝活動、会社への抗議・申入れ活動などが書かれています。読めば沢山の知恵が付きそれとやる気が起きます。

 大川弁護士は民法協で活動し、労働事件の裁判闘争で頑張り大きな成果を挙げ、その後、国際法律家協会の活動に、そして弁護士会の活動に足を入れて力を出し、日弁連の事務総長、日本司法支援センタ―の常務理事に就きそれをやり遂げて現在に至っています。私は「裁判に尊厳を懸ける」を読んで以前の大川弁護士を思い出しました。

 この本は大川、村松、坂本法律事務所で手にすることが出来ます。
 1700円を1500円で
 電話06―6361―0309

発行 日本評論社
定価 1700円+税

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