書籍の紹介

民主法律協会でお求めいただけます。

岩波ブックレット 最低賃金』ご購読のお願い

弁護士 中村 和雄

 岩波書店より、日弁連貧困本部編集による岩波ブックレット『最低賃金』(580円+税)が発売されました。https://www.iwanami.co.jp/book/b482302.html

貧困の解消と格差の是正のために今取り組むべき重要政策が「最低賃金」の大幅引き上げです。そして、若者の地方からの流出をくい止め、地方経済を活性化するためには、地域別最低賃金の東京と地方との格差を是正していくことが不可欠です。そのために「全国一律最低賃金」制度の導入が考えられます。

今、世界の流れは「全国一律最低賃金」です。アメリカやブラジルなど国土のきわめて広い地域を除けば、ほとんどの国は最低賃金は全国共通です。わが国でも全国一律最低賃金をもとめる運動が高まっています。自民党の中にも「最低賃金の全国一元化推進議員連盟」が設置され活発に活動しています。全国一律最賃制を実現するためには、中小企業への支援策の充実が決定的に重要です。政府は最低賃金引き上げに伴う中小企業の賃金引き上げの支援策として、業務改善助成金制度を創設しました。しかし、支給要件とされる「生産性向上のための設備投資」などが達成困難であるために利用企業は少なく、全国で年間200件程度だけです。韓国では雇用者 人未満の事業主に対し、労災保険料、国民年金等の事業者負担部分を80%以上減額する制度を採用しています。韓国では、最低賃金の大幅な引上げによって月給15万円未満の若者が大幅に減少しました。

本書では「最低賃金」制度とはどのようなものなのか、なぜ、今、最低賃金の引き上げが必要なのか、世界各国の最低賃金制度はどうなっているのか、最低賃金引き上げのためには何が必要なのか、とりわけ中小零細企業に対してどのような支援策を講ずべきなのか、最低賃金引き上げや全国一律の実現のための運動はどうすれば良いのか、など最低賃金に関する重要な課題について、簡潔でわかりやすい本にしたつもりです。
多くの皆さんが購入頂き、最低賃金の大幅引き上げと全国一律最低賃金制度実現の運動にご理解・ご協力・ご支援をいただければ幸いです。

※民法協で少しお安くお買い求め  いただけます。

《書籍紹介》岩波ブックレット 『過労死110番  働かせ方を問い続けて30年』森岡孝二・大阪過労死問題連絡会 編

弁護士 上出 恭子

1988年4月に全国にさきがけて大阪で初めて実施をされた、弁護士による過労死に関する無料相談「過労死110番」は、過労死救済に向けて大きな取組みとなりました。2018年4月に大阪過労死問題連絡会が行った「過労死110番30周年記念シンポジウム」の内容を一部加筆してまとめたものを、この度、岩波ブックレットとして発刊しました。

本ブックレット発行の発案者である、大阪過労死問題連絡会の会長であった森岡孝二先生は2018年8月1日に急逝しました。亡くなる当日も、本書の執筆を担当された方々に「なんとか実現をしたい」とブックレット発行に向けての強い思いが現れたメールを送られていました。折から国会で審議されていた働き方改革関連法案が出される中、その内容は過労死防止の流れに逆行するということへの切実な危機感が森岡先生を突き動かしていたように思われます。

そのような経緯でしたので、亡くなる直前まで森岡先生が手がけたこのブックレットの発行は、森岡先生から我々に託された「過労死をなくすための大切な取組」、いわば森岡先生からの遺言だと受け止めて、作業を進めてきました。

シンポジウムは、(1)大阪過労死問題連絡会森岡孝二会長(当時)による冒頭の挨拶、(2)過労死110番活動に当初から関わってきた松丸正弁護士による30年の歩みを振り返る基調報告、(3)過労死110番が1988年開始をした当時に製作された、「NHKドキュメンタリー『過労死・妻は告発する』のディレクターの織田柳太郎氏による講演、(4)3人の過労死・過労自殺遺族の報告、そして、岩城穣弁護士の司会によるこの3名の遺族によるリレートークで構成をされています。

過労死救済の30年の歩みが、過労死遺族の肉声とともにコンパクトに整理をされていることに加えて、織田さんのご講演の中では、過労死による被災者は、命を失った先にあった未来だけでなく、「亡くなった人、倒れた人、そしてその家族が死の前に、倒れる前にすでに人間らしい生き方、豊かな暮らしを奪われている」という過労死問題の本質が指摘されています。

過労死遺族が中心となって立法制定に向けて活動をした結果、2014年6月に過労死等防止対策推進法(通称「過労死防止法」)が、衆参両院の全会一致で可決され、その後、啓発事業等が進められています。しかし、その後も、過労死・過労自殺が減る兆しは見えません。そのような中、改めて過労死をなくすために、どういった取り組みが真に必要となるのか。

民法協にて、定価520円(消費税別途)のところ、税込み500円「ワンコイン」というお手頃価格で販売をしていますので、過労死防止の具体策を考える出発点として、是非、お買い求め下さい。

《書籍紹介》豊川義明著『労働における事実と法 ――基本権と法解釈の転回』(日本評論社)をどう読むか

弁護士 鎌田 幸夫

1 本書の特徴はどこにあるか

本書は、実務家の執筆した数少ない理論書である。学者の理論書との違いは、著者が自ら担当した数多くの事件を素材に、実務家の視点から労働法の基礎理論、解釈論、権利運動の課題を幅広く展開しているところにある。本書は、2つの特徴がある。

第1は、時代を反映した裁判闘争史という性格を持つことである。判決の字面だけでなく、どのような時代背景のもとに、当事者のどのような攻防を経て判決が導かれたのか、また、判決は雇用社会にどのような影響を与えたのかという観点も含めて洞察しなければ、その判決を本当に理解したとものはいえない。関電人権訴訟、東亜ペイント事件、朝日放送事件、松下PDP事件、ビクター・サービスエンジニアリング事件など著名な最高裁判決の意義と克服すべき課題、方向性を筆者は明瞭に提示している。事件を担当した著者だけに説得力がある。

第2は、根源的な視点から最高裁判例や通説に批判的なアプローチを展開していることである。実務家の書物は、判例、通説を整理し、事件をどう処理するか、最高裁判決があれば、その射程距離や考慮要素の分析を中心とするものが多い。目の前の裁判に勝つためには必要なことである。しかし、手軽なマニュアル本に頼らず、最高裁判決の前に思考停止にならず、基礎理論から自らの頭で批判的なアプローチを試みてこそ、個々の実務家の力量は上がり、トータルとして我が国の裁判理論、労働運動の進歩があると著者は考えているのである。

本書が取り上げるテーマは個別的労働関係から集団的労働関係法まで多岐にわたる。個々のテーマに立ち入る余裕はないので、本書のバックボーンである①基本権と法解釈の転回、②裁判における事実と法という根本問題に絞って本書の問うていることを紹介し、若干の私見を述べることをお許しいただきたい。

2 「基本権と法解釈の転回」とは何か

著者は基本権を「類的存在としての人間社会がよき社会の実現に向けて」「自らも他者とその集団である社会も、相互に歴史的に確認し合ってきたもの」とし、その土台に自由・平等・連帯という法原理と「人間の尊厳」という根本理念を据える。そして「自己決定論」は、他者との関係において価値ある内容を含むことはないと批判し、人間の尊厳を指導理念とした「対等共同決定論」を提示する。また、著者は、労働基本権を団交権中心に狭く捉える立場(菅野説等)を批判し、企業内の正規労働組合中心主義から脱却し、企業・産業の労働者全体の労働条件向上を実現する団体交渉権確立を説く。

そして、労働者の地位・待遇に影響を及ぼす地位にある産業別使用者団体も「当該要求に影響を及ぼすことができる地位にある」として団交応諾義務を肯定する。この見解は、労組法上の使用者概念の支配力説の発想に立って、産別使用者団体にまで使用者概念を拡張すると同時に義務的団交事項の概念も広げる試みである。本書のいう「基本権と法解釈の転回」とは、企業内組合の団交を中心とする企業内労使関係を、労働者(労働組合)集団と産業別使用者集団の共同対等決定の労使関係に180度転回させて、それに相応しい労働基本権を再構築しようとする試みとして理解できる。

わが国の企業内組合の組織率と役割の低下、存在意義の希薄化と、団体行動権(労働三権)を企業の所有権、施設管理権の劣位におくような最高裁判例の流れに鑑みると、著者の大胆な問題提起、構想は共感できる。もっとも、著者の法解釈が幅広く現実の基盤を持つためには、それに見合う産業別の運動の拡大と労働組合運動の活性化による労使関係の大転換が不可欠のように思われる。これは労働組合運動に向けられた提起でもある。

なお、西谷敏大阪市立大学名誉教授の自己決定論は、裸の自己決定ではなく、国家法や労働協約などの規制に支えられた自己決定を説く。また、自己のみに関わることに限らず自己にも他者にも関わることの決定も肯定し、連帯を媒介する労働者の関与権として労働基本権を構成する。他者とのかかわりのなかで真の自己決定を目指すものといえ、著者の立場と方向性は共通するようにも思える。

3 「労働における事実と法」の関係とは何か

著者は、法が第一に存在し、続いて事実があり、事実に対して法が適用されるという

法的三段論法をとらず、「法と事実の相互媒介」による法の選択・確定と事実の選択・確定を提起する。その意味するところは、当該事案において、複数の法規範のなかから適切なものを選択し、同時に多数の事実のなかから意味のあるものを選び出し、両者を照合し、適切な事実の認定・評価とそれに適する法の適用、解釈、さらには法創造をするということであろうか。そうであれば、大切なことは、事案の実態と正義に適った結論に導くために、裁判官の「法的三段論法」に我々としてどのように働きかけるのか、ということに帰着するのではないか。著者は、適用すべき法律の選択や権利義務の存否の確定にあたり、法曹としての経験と人間性を背景にした直感力を支える法解釈の基本原則に「人間の尊厳」があるとする。わかりやすく言えば、差別され、解雇された労働者の人格権や生存権、ひいては人間の尊厳が侵害されている実態を自ら感じ取り、それを具体的な事実として余すことなく裁判官に伝え、その良心を動かして、労働者を救済するための法適用、法解釈さらには法創造に至らせるということである。例えば、思想信条を理由とする人権無視の孤立化策による労働者の人格権侵害の実態を法廷に出しつくすことで「職場における自由な人間関係を形成する自由」が認められた関電人権訴訟、使用者の法適用を回避する脱法目的を許さず、法の趣旨と実態を重視した労働者概念が認められたビクター・サービスエンジニアリング事件などにおける闘いは、そのような文脈で理解できる。

4 さいごに

本書はこれから裁判闘争や労働組合運動を担う若い弁護士、組合活動家にとって是非一読すべき書といえる。本書と格闘することで、今後の裁判闘争や労働組合運動の糧にしていただきたい。

日本評論社2019年9月発行
A5版364頁
定価 5800円+税

《書籍紹介》『過労死落語を知っていますか』を読んで、「落ちる」もの

弁護士 豊川 義明

 桂福車(落語家)、松井宏員(毎日新聞夕刊編集長)両氏の表題の本を読んだ。この本は、第一部が松井氏による「過労死落語」が出来るまでの由来書きである。この由来書きによって大阪を中心とする過労死裁判事件のこれまでの取組、2014年6月の過労死防止法の成立と2018年6月「働き方改革法」の成立をめぐる過労死家族の会の寺西笑子さん、平岡チエ子さん、佐戸恵美子さんらの未来のための懸命な活動、そして私も親しい笑工房の小林康二さんの活動の原点と憲法漫談のエッセンスも紹介される。松丸正、髙橋典明、岩城穣の各弁護士も登場する。

全国に先んじて大阪の地で過労死問題が取組まれたのは、1981年の『大阪急性死等労災認定連絡会』であった。故田尻俊一郎医師(西淀川社医研)や松丸、髙橋弁護士らの研究と実践的な運動体の誕生である。心臓や脳の疾患によって突然に労働者が亡くなるので、当時は急性死と言われていた。過労死家族の会の方々の過労死防止法の制定、そして安倍働かせ方改革法案に反対する、それこそ命がけの献身的な、現在の労働者と未来社会への連帯行動に対して私は深い敬意を抱いている。労働者ではない、その家族の皆さんが現在の労働社会に対し強い警鐘を鳴らされているのだ。その心、意思の深さと広さに感じることのない人はいない筈である。だから安倍首相は家族の会との面談から逃げたのである。

 第二部は桂福車さんの「エンマの願い」(作・小林康二)である。第一部に紹介のあった作家の小林康二さんと桂福車さんとの「打合せ」や「手見せ」の厳しいやりとりが紹介されているので、この創作落語は現実の寄席を聞いている様によくわかる。

閻魔の庁に過労死で亡くなった人が青鬼、赤鬼(なぜか28号とある)とやりとりをする。生者の現在を写す「浄波璃の鏡」が持ち出され過労死家族の国際活動も写しだされるとともに亡くなった人の母親(白髪となり痩せてしまった)の現在が写しだされる。母親への息子の言葉がけに思わず鬼が泣いてしまう(福車さんも演じつつ必ず泣く)。その内、エンマ大王によって過労死で亡くなった人専門の窓口に指名された赤鬼28号、青鬼31号も過労のため倒れてしまう。そこで岩鬼が大王に呼ばれ、岩鬼とその仲間が家族の会とともに戦う過労死弁護団になるという「落」語である。

桂福車さんは、落語を通じて伝えたい「過労死防止」の大切さという題名の下に、落語を通じての世の中へのメッセージの意味について、過労死などの原因や労基法など重い内容でも「落語にすると、わかりやすいので印象に残る、楽しみながら勉強にもなるはずです」、「共鳴とか感激とかは理屈でなく文化の成せる力」であるとして伝統芸能としての落語力の有用性を強調している。

確かに『エンマの願い』は、この物語りの「落ち」より以上に読む者(福車さんの声がきけるCDがないので)にエンマ大王と過労死家族の会の願いである「20??年過労死ゼロの達成にむけての運動の大切さ」を私達の肚に「落とす」のである。

※ご注文は「笑工房」まで
 〒532-0013 大阪市淀川区木川西2-19-17
 電話 06-6308-1780
 FAX 06-6308-1786

《書籍紹介》 渡辺輝人著『 残業代請求の理論と実務』

弁護士 須井 康雄

 著者である渡辺輝人弁護士は、ブラック企業問題や労災など数多くの労働事件に労働者側としてかかわり、残業代計算ソフト「給与第一」を開発、公開し、近年、最高裁で使用が推奨されている「きょうとソフト」の作成に大きく寄与しました。

また、YAHOOニュースにも個人のサイトをもち、労働問題を始めた多くのエッセーを執筆するとともに、ツイッター(@nabeteru1Q78)でも積極的に情報発信しており、民主法律協会会員の中にも多くのフォロワーがいるかと思います。

本書は、2018年12月に発行され、渡辺弁護士がこれまでの経験・研究をもとに著した残業代請求の理論面及び実務面の最先端の書籍といえます。理論的な部分では、残業代計算の基本となる最低基礎賃金や賃金単価算出方法といった、いざ計算するとなると、細かすぎてよく分からないことがなきにしもあった部分から、国際自動車事件など固定残業代に関する最高裁判例の分析など最新の理論状況まで、常に労働者側に立った解説がなされています。

実務の部分でも、時効の中断方法や労働時間に関する証拠収集方法、打ち合わせでの確認事項など多数の事件を解決に導いてきた著者ならではのノウハウが惜しむところなく盛り込まれています。

定価2800円+税ですが、コストパフォーマンスは抜群です。民主法律協会でも特別価格で販売しています。
また、2019年3月27日午後6時 30分からは大阪弁護士会1205号室で渡辺弁護士をお招きして、残業代請求の学習会を実施します。申込用のチラシを同封しています。最先端の実務・考え方について学ぶことができる絶好の機会ですので、ふるってご参加ください。

旬報社 2018年12月10日 発行
A5版288頁
定価 2800円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。

《書籍紹介》髙岡正美著『財は友なり』 ―― 労働運動と会社再建闘争一筋 “怒り、泣き、笑い”の半世紀

弁護士 奥田 愼吾

 著者である髙岡正美さんは、1934(昭和9)年8月生まれ、現在84歳にして現役。
1957(昭和32)年、学生アルバイトとして、総評・紙パ労連関西地協(全国紙パルプ産業労働組合連合会関西地方協議会)の組合書記になってから現在まで約61年間、労働運動と会社再建闘争に身を投じて来ました。
本書は、著者個人の労働運動の記録にとどまりません。戦後の労働運動の一面を映し出すとともに、労働組合運動の生きた実践例を示すものといえます。

著者は、産業別労働組合のリーダーとして「したたか労働運動」を掲げてきました。製紙業界の小さな組合が解雇、工場閉鎖、会社の倒産といった厳しい事態に直面します。著者は、従業員の雇用と生活を守ることを大事にし、そのためには会社を存続させねばならないと考え、専門家等の多くの「友」の協力も得ながら、組合の枠にとらわれない独自の活動を展開してきました。
例えば、組合による会社更生法申請や新会社設立、組合による水利権の取得、雇用保障協定の締結、銀行や親会社との交渉、組合が根抵当権者となるなど、意外で効果的な手を打つことに驚かされます。

また、著者は、1980~84年までの4年間、大阪地労委労働者委員として、合計134件の審査事件等を担当しました。本書では、労働者委員の立場で勝利和解に関与した大阪工作所事件等の個別事件の経験に加え、労働委員会についての提言や大阪争議団共闘や民法協が取り組んだ労働委員会の民主化運動も紹介されています。

私は、2010年夏から、著者とともに、経営が悪化した某学校法人の労使紛争に関わった経験があります。組合の顧問弁護士として、団交への参加、メインバンク等への要請、未払賃金支払請求訴訟等の活動をしました。その過程で目にした著者の取り組みは、極貧の幼少時代から培われた人間に対する洞察力や共感力、長年の経験と信念に裏打ちされたものでした。
労働運動の継承という観点から見たとき、また、労働者側弁護士として労働組合との関わり方を考える上でも、本書に記された著者の豊富な経験、労使紛争解決に向けた姿勢や取り組みから、貴重なヒントや教訓を得ることができることと思います。

図書出版 浪速社
2018年11月 発行
A5版・382頁
定価 1667円+税
※民法協事務所にて少しお安くお求めいただけます

					

レイバーノーツのレシピ

弁護士 安原 邦博

 2018年4月6~8日にシカゴで開催されたレイバーノーツの大会について、私からは、運動の方法論(レシピ)として人の話を聞く重要性が強調されていたことをご紹介したい。

レイバーノーツの大会では、何度も次の言葉を聞いた:「Union democracy」(組合民主主義)、「Rank and File Unionism」(一部(執行部)ではなく組合員全体による民主的な組合運動)。そして、複数のワークショップで、「Listening: For a Change」(変革のため、人を動かすための、「聞く」)という方法論が強調されていた。内容は次のとおりである。

・People like being listened to(人は、話を聞いてもらうことを好む(他の人の話を聞かされることよりも))
・ People like sharing their opinions and thinking(人は、自分の意見や考えを聞いてもらうことを好む(他の人の意見や考えを聞かされることよりも))
・Meetings go better when there is a chance for everyone to speak(ミーティングは、参加者全員が発言できるものの方がうまくいく)
・ If you want people to really consider a new idea, give them the chance to! People need opportunities to think out loud using their own words and examples(人に何か新しいことについて検討して欲しいのなら、そうしてもらえるようにする!人は、自分自身の言葉や事例を使って考えるものである(物事に対する理解の度合いは、聞くだけ ・When everyone gets to talk and be listened to, the union is stronger and more democratic(全員が発言をできるとき(全員の意見や考えを聞くとき)、組合はより強くなり、民主的になる)
・Easier to listen people into change than talking them into it(変革のため、人を動かすためには、自分の話を押しつけるよりも、相手の話を聞く方が容易である)

このレイバーノーツが発行する「Secrets of a Successful Organizer」の訳本であり、日本労働弁護団が発行している「職場を変える秘密のレシピ47」では、その巻末あたり(260~263頁)で、「基本に立ち返ろう」と題し、組織化において念頭におくべき点として次のことを挙げている:一対一で話す、自信を醸成する、権力に対して立ち上がる、有能なリーダーを獲得する、共通する問題を見つけ要求を共有する、民主的に組織する、具体的な目標を立てる、人に行動させる、団結する、近道はない、だんだんに運動の熱を高めていく、行動しながら評価する、組織がすべて、目標を見失わない。

レイバーノーツは、社会変革をする、人を動かすという運動において人の話を聞くのが重要であると、ごく当たり前のことを改めて強調する(たしかに、人の話を聞かなければ、共通する問題(要求)の共有も、団結も、何もできない)。これは、私たち活動家が、ともすればこの基本中の基本を忘れているか、またはうまく実践できていない、ということであろう。

来年(2019年)春に、レイバーノーツ・アジア大会を日本で開催することが計画中である。また、2020年は次回のレイバーノーツ大会(米国)である。運動の方法論(レシピ)を各国の活動家と学びあう絶好の機会となるので、今度は、是非、民法協で参加団を作ることができればと思う。

【書籍紹介】
『職場を変える秘密のレシピ 』 http://roudou-bengodan.org/secrets/
★民法協で少しお安くお求めいただけます。

《書籍紹介》萬井隆令著『労働者派遣法論』――原理原則から語る労働者派遣の本質論

弁護士  村田 浩治

1 本書の内容

このたび、民法協会長の萬井隆令先生の著書『労働者派遣法論』が出版された。4つの章で構成されているが、第1章「戦後労働法と労働者派遣」のタイトルをみるだけでも本書がこれまで労働者派遣を扱ってきた他の本と全く違うことは分かるだろう。

「労働者派遣」をテーマにした本を探すとノウハウと行政解釈を解説するだけのものが目立つなかで、原理原則に溯って労働者派遣制度から説き起こそうとする本は異色である。

第1章では、労働は商品ではないと宣言した「フィラディルフィア宣言」から「直接雇用の原則」を考え、直接雇用の原則からその例外である「労働者派遣」制度を批判的に検討する。偽装請負と、違法派遣、労働者供給の解釈をめぐる学説、黙示の労働契約をめぐる学説、団体交渉における使用者概念と派遣先使用者をめぐる論点を自説を展開するだけでなく、判例、学説における反対説に対し目配りをして丁寧に説き起こされておりそれが1章から4章にわたって展開される。

2 本書の魅力

本書は、労働者派遣制度を「物心ついた頃にはすでに派遣という働き方が当たり前に存在した」若い学者が「それをネガティブにみることには」「違和感しか感じない」として、労働者派遣を「価値中立的」概念として疑わない姿勢を批判し、原理原則に溯って検討する萬井先生の自説を丁寧に説き起こすため、少々難しいかもしれないが、しかし、労働者派遣を考えるときの基礎的な論点は網羅されている。

労働組合の方々(弁護士も)その多くが働き始めた時は「すでに労働者派遣があった」ため違和感を感じていないであろう。そのような労働者派遣を根本から疑うという姿勢で逃げることなく、その違法性の根本に光をあてて議論をすることは、きわめて重要だ。労働者派遣の事件の取組が大変な中で、この本が多くの方々に読まれ、議論されることを期待している。

但し、日頃議論をしていない者が通読するのは簡単ではないと思われる。じっくり議論をしながら読んで頂きたい。労働組合役員の方々には少なくとも第1章と第4章を読んでいただければ、「労働者派遣」の相談にも必要な知識と観点をもって、事件相談に当たれるようになること間違いない。今後派遣研究会でも通読教材とする予定である。

旬報社 2017年7月25日発行
定価 4600円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。

《書籍紹介》是非、ご活用下さい!『過労死・過労自殺の救済Q&A ―労災認定と企業賠償への取組み―(第2版)』

弁護士 上出 恭子

大阪過労死問題連絡会の弁護士で執筆をしました「過労死・過労自殺の救済Q&A―労災認定と企業賠償への取組み―(第2版)」が平成28年11月に民事法研究会から発行されました。

昨年は、過労死防止対策推進法に基づき過労死白書が初めて作成され、まさに過労死防止に向けての本格的な取組がさらに進む中で、電通新人社員過労自殺事件・労災認定の報道があり、改めて過労死問題への社会的関心が集まった年でした。

本書は、新人弁護士や一般の方にも分かりやすいよう、労災の認定基準を初めとする過労死問題の基礎知識の解説だけでなく、具体的な事例を取り上げての解説や最新の判例等にも言及し、過労死問題の実務を行う上で必要となる論点をほぼ網羅的に押さえています。幅広い立場の方にご活用いただけるものと思っております。

定価2200円(+税金)ですが、民法協にて割引の価格で販売を頂いておりますので、是非、お買い求め頂き、過労死問題の救済に向けてご活用下さい。

西谷敏著「労働法の基礎構造」を読んで

弁護士 河村  学

 「書評」を引き受けたものの、読んで見るとやはり難しく、クチンスキーが出てきて、ラートブルフが出てくると、正直「辛いなあ」という感じだった。ただ、そこを遮二無二乗り越えて行くと、平たく言えば、「労働法って市民法とそんなに違うものなの?」(2章)、「労働法って民法の特別法なの?」(3章)、「労働法の理念って生存権なの?」(4章)など、根本的な議論が展開されている。その後、「労働法における公法と私法」(5章)という毛色の違う論考を挟んで、西谷先生の自己決定論とそれを下敷きにした「労働契約と労働者意思」(6章)がある。労働者の(自由)意思の問題は、有期労働契約の不更新条項の解釈など労働法の多くの論点に関わり、「労働者」「労働法」観が問われる極めて実践的な問題である。

 ただ、読後感としては7章からが面白い。7章の「『労働者』の統一と分裂」では、有期労働・派遣労働・短時間労働・均等待遇の法政策の視点、管理職や多様な正社員をどう捉えるのか、労働者概念をどう考えるのかなど、表面に現れている基本的問題の考え方が述べられている。非正規労働のうち「実際に労働者自身が真に希望することがありうるのは短時間労働のみ」「日本の法制では、有期労働そのものが制約されないので、労働者の雇用生活の不安定性は解消されない」「労働者派遣という間接雇用の形態自体が労働者にとって有意味ということはない」など明快で、痛快でさえある。
労働者概念については、労組法と労働者保護法とで異なるだけでなく、労働者保護法内部でも異なり、例えば労基法上の各条項においても完全には一致しないとされる(西谷先生としては、指揮命令関係に関わる条項と、労働者の経済的地位に着目した条項に分け、その適用が異なる二種類の労働者として分類する立場を支持するようである)。さらには労働者概念に包摂されない労務提供者(非労働者)についても、「そうした存在を正面からとらえて保護・保障を与えることを考えるべき」とする。労働契約法との関係はあまり触れられていなかったが、賛否いろいろ考えさせる内容だった。

 8章は「労働組合と法」。労働組合の(もっと広く労働法における)個人と集団の問題は西谷先生の自己決定論からも関心の高いテーマであると推察されるが、その到達点が簡潔に示されている。その結論部分は、「個人と集団が『自律にもとづく連帯』の形で結合しなければならない」ということである。労働組合の歴史的成り立ちや法的位置づけ、日本の組合状況なども概観してのこの考察は今後の労働組合運動の方向性を考える上でも重要である。「ユニオン・ショップにもとづく企業別組合に発展の展望を見出すのは容易でない」、「地域ユニオンには、…『連帯』の精神が育ちにくい」など論争的な言及もあり、明示はされていないが一つの方向性を示しているようにも読める。

 9章から11章は労働法の解釈や裁判に関する問題である。学説の実務重視の風潮、利益衡量論の隆盛、労働判例の一貫した方法の欠如など、理論的・法的基礎を欠き、首尾一貫しない法解釈のあり方についての批判と考え方が述べられている。労働者保護規制の貧弱さ(労働法における立法の消極性)を補うという側面もあるが、最近の解釈のあり方として、一方では法律の形式的な解釈を貫き、他方では法律の文言を逸脱した目的論的解釈を行い、いずれも労働者保護を拒否する裁判例が続出している状況は「本当にひどいよな」と思ってしまう(p.283~292)。こうした判例・学説の現状、またこうした実務に振り回されている労働組合や労働弁護士の現状が、先生が本書を書かれた動機なのではないかとも思う。

 元にもどって1章から6章は、こうした労働法をめぐる現状を踏まえて、「労働法の基礎構造を解明し、かつ労働法がいかに変わろうとも守らなければならない基本的な価値と原則を明らかにする」(はしがき)ために設けられた諸章といえる(特に4章と6章)。そう読めば、ラートブルフもまた重要なのかも知れない。

法律文化社 2016年6月発行
A5版354頁 定価4000円+税