書籍の紹介

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《書籍紹介》『過労死落語を知っていますか』を読んで、「落ちる」もの

弁護士 豊川 義明

 桂福車(落語家)、松井宏員(毎日新聞夕刊編集長)両氏の表題の本を読んだ。この本は、第一部が松井氏による「過労死落語」が出来るまでの由来書きである。この由来書きによって大阪を中心とする過労死裁判事件のこれまでの取組、2014年6月の過労死防止法の成立と2018年6月「働き方改革法」の成立をめぐる過労死家族の会の寺西笑子さん、平岡チエ子さん、佐戸恵美子さんらの未来のための懸命な活動、そして私も親しい笑工房の小林康二さんの活動の原点と憲法漫談のエッセンスも紹介される。松丸正、髙橋典明、岩城穣の各弁護士も登場する。

全国に先んじて大阪の地で過労死問題が取組まれたのは、1981年の『大阪急性死等労災認定連絡会』であった。故田尻俊一郎医師(西淀川社医研)や松丸、髙橋弁護士らの研究と実践的な運動体の誕生である。心臓や脳の疾患によって突然に労働者が亡くなるので、当時は急性死と言われていた。過労死家族の会の方々の過労死防止法の制定、そして安倍働かせ方改革法案に反対する、それこそ命がけの献身的な、現在の労働者と未来社会への連帯行動に対して私は深い敬意を抱いている。労働者ではない、その家族の皆さんが現在の労働社会に対し強い警鐘を鳴らされているのだ。その心、意思の深さと広さに感じることのない人はいない筈である。だから安倍首相は家族の会との面談から逃げたのである。

 第二部は桂福車さんの「エンマの願い」(作・小林康二)である。第一部に紹介のあった作家の小林康二さんと桂福車さんとの「打合せ」や「手見せ」の厳しいやりとりが紹介されているので、この創作落語は現実の寄席を聞いている様によくわかる。

閻魔の庁に過労死で亡くなった人が青鬼、赤鬼(なぜか28号とある)とやりとりをする。生者の現在を写す「浄波璃の鏡」が持ち出され過労死家族の国際活動も写しだされるとともに亡くなった人の母親(白髪となり痩せてしまった)の現在が写しだされる。母親への息子の言葉がけに思わず鬼が泣いてしまう(福車さんも演じつつ必ず泣く)。その内、エンマ大王によって過労死で亡くなった人専門の窓口に指名された赤鬼28号、青鬼31号も過労のため倒れてしまう。そこで岩鬼が大王に呼ばれ、岩鬼とその仲間が家族の会とともに戦う過労死弁護団になるという「落」語である。

桂福車さんは、落語を通じて伝えたい「過労死防止」の大切さという題名の下に、落語を通じての世の中へのメッセージの意味について、過労死などの原因や労基法など重い内容でも「落語にすると、わかりやすいので印象に残る、楽しみながら勉強にもなるはずです」、「共鳴とか感激とかは理屈でなく文化の成せる力」であるとして伝統芸能としての落語力の有用性を強調している。

確かに『エンマの願い』は、この物語りの「落ち」より以上に読む者(福車さんの声がきけるCDがないので)にエンマ大王と過労死家族の会の願いである「20??年過労死ゼロの達成にむけての運動の大切さ」を私達の肚に「落とす」のである。

※ご注文は「笑工房」まで
 〒532-0013 大阪市淀川区木川西2-19-17
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 FAX 06-6308-1786

《書籍紹介》 渡辺輝人著『 残業代請求の理論と実務』

弁護士 須井 康雄

 著者である渡辺輝人弁護士は、ブラック企業問題や労災など数多くの労働事件に労働者側としてかかわり、残業代計算ソフト「給与第一」を開発、公開し、近年、最高裁で使用が推奨されている「きょうとソフト」の作成に大きく寄与しました。

また、YAHOOニュースにも個人のサイトをもち、労働問題を始めた多くのエッセーを執筆するとともに、ツイッター(@nabeteru1Q78)でも積極的に情報発信しており、民主法律協会会員の中にも多くのフォロワーがいるかと思います。

本書は、2018年12月に発行され、渡辺弁護士がこれまでの経験・研究をもとに著した残業代請求の理論面及び実務面の最先端の書籍といえます。理論的な部分では、残業代計算の基本となる最低基礎賃金や賃金単価算出方法といった、いざ計算するとなると、細かすぎてよく分からないことがなきにしもあった部分から、国際自動車事件など固定残業代に関する最高裁判例の分析など最新の理論状況まで、常に労働者側に立った解説がなされています。

実務の部分でも、時効の中断方法や労働時間に関する証拠収集方法、打ち合わせでの確認事項など多数の事件を解決に導いてきた著者ならではのノウハウが惜しむところなく盛り込まれています。

定価2800円+税ですが、コストパフォーマンスは抜群です。民主法律協会でも特別価格で販売しています。
また、2019年3月27日午後6時 30分からは大阪弁護士会1205号室で渡辺弁護士をお招きして、残業代請求の学習会を実施します。申込用のチラシを同封しています。最先端の実務・考え方について学ぶことができる絶好の機会ですので、ふるってご参加ください。

旬報社 2018年12月10日 発行
A5版288頁
定価 2800円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。

《書籍紹介》髙岡正美著『財は友なり』 ―― 労働運動と会社再建闘争一筋 “怒り、泣き、笑い”の半世紀

弁護士 奥田 愼吾

 著者である髙岡正美さんは、1934(昭和9)年8月生まれ、現在84歳にして現役。
1957(昭和32)年、学生アルバイトとして、総評・紙パ労連関西地協(全国紙パルプ産業労働組合連合会関西地方協議会)の組合書記になってから現在まで約61年間、労働運動と会社再建闘争に身を投じて来ました。
本書は、著者個人の労働運動の記録にとどまりません。戦後の労働運動の一面を映し出すとともに、労働組合運動の生きた実践例を示すものといえます。

著者は、産業別労働組合のリーダーとして「したたか労働運動」を掲げてきました。製紙業界の小さな組合が解雇、工場閉鎖、会社の倒産といった厳しい事態に直面します。著者は、従業員の雇用と生活を守ることを大事にし、そのためには会社を存続させねばならないと考え、専門家等の多くの「友」の協力も得ながら、組合の枠にとらわれない独自の活動を展開してきました。
例えば、組合による会社更生法申請や新会社設立、組合による水利権の取得、雇用保障協定の締結、銀行や親会社との交渉、組合が根抵当権者となるなど、意外で効果的な手を打つことに驚かされます。

また、著者は、1980~84年までの4年間、大阪地労委労働者委員として、合計134件の審査事件等を担当しました。本書では、労働者委員の立場で勝利和解に関与した大阪工作所事件等の個別事件の経験に加え、労働委員会についての提言や大阪争議団共闘や民法協が取り組んだ労働委員会の民主化運動も紹介されています。

私は、2010年夏から、著者とともに、経営が悪化した某学校法人の労使紛争に関わった経験があります。組合の顧問弁護士として、団交への参加、メインバンク等への要請、未払賃金支払請求訴訟等の活動をしました。その過程で目にした著者の取り組みは、極貧の幼少時代から培われた人間に対する洞察力や共感力、長年の経験と信念に裏打ちされたものでした。
労働運動の継承という観点から見たとき、また、労働者側弁護士として労働組合との関わり方を考える上でも、本書に記された著者の豊富な経験、労使紛争解決に向けた姿勢や取り組みから、貴重なヒントや教訓を得ることができることと思います。

図書出版 浪速社
2018年11月 発行
A5版・382頁
定価 1667円+税
※民法協事務所にて少しお安くお求めいただけます

					

レイバーノーツのレシピ

弁護士 安原 邦博

 2018年4月6~8日にシカゴで開催されたレイバーノーツの大会について、私からは、運動の方法論(レシピ)として人の話を聞く重要性が強調されていたことをご紹介したい。

レイバーノーツの大会では、何度も次の言葉を聞いた:「Union democracy」(組合民主主義)、「Rank and File Unionism」(一部(執行部)ではなく組合員全体による民主的な組合運動)。そして、複数のワークショップで、「Listening: For a Change」(変革のため、人を動かすための、「聞く」)という方法論が強調されていた。内容は次のとおりである。

・People like being listened to(人は、話を聞いてもらうことを好む(他の人の話を聞かされることよりも))
・ People like sharing their opinions and thinking(人は、自分の意見や考えを聞いてもらうことを好む(他の人の意見や考えを聞かされることよりも))
・Meetings go better when there is a chance for everyone to speak(ミーティングは、参加者全員が発言できるものの方がうまくいく)
・ If you want people to really consider a new idea, give them the chance to! People need opportunities to think out loud using their own words and examples(人に何か新しいことについて検討して欲しいのなら、そうしてもらえるようにする!人は、自分自身の言葉や事例を使って考えるものである(物事に対する理解の度合いは、聞くだけ ・When everyone gets to talk and be listened to, the union is stronger and more democratic(全員が発言をできるとき(全員の意見や考えを聞くとき)、組合はより強くなり、民主的になる)
・Easier to listen people into change than talking them into it(変革のため、人を動かすためには、自分の話を押しつけるよりも、相手の話を聞く方が容易である)

このレイバーノーツが発行する「Secrets of a Successful Organizer」の訳本であり、日本労働弁護団が発行している「職場を変える秘密のレシピ47」では、その巻末あたり(260~263頁)で、「基本に立ち返ろう」と題し、組織化において念頭におくべき点として次のことを挙げている:一対一で話す、自信を醸成する、権力に対して立ち上がる、有能なリーダーを獲得する、共通する問題を見つけ要求を共有する、民主的に組織する、具体的な目標を立てる、人に行動させる、団結する、近道はない、だんだんに運動の熱を高めていく、行動しながら評価する、組織がすべて、目標を見失わない。

レイバーノーツは、社会変革をする、人を動かすという運動において人の話を聞くのが重要であると、ごく当たり前のことを改めて強調する(たしかに、人の話を聞かなければ、共通する問題(要求)の共有も、団結も、何もできない)。これは、私たち活動家が、ともすればこの基本中の基本を忘れているか、またはうまく実践できていない、ということであろう。

来年(2019年)春に、レイバーノーツ・アジア大会を日本で開催することが計画中である。また、2020年は次回のレイバーノーツ大会(米国)である。運動の方法論(レシピ)を各国の活動家と学びあう絶好の機会となるので、今度は、是非、民法協で参加団を作ることができればと思う。

【書籍紹介】
『職場を変える秘密のレシピ 』 http://roudou-bengodan.org/secrets/
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《書籍紹介》萬井隆令著『労働者派遣法論』――原理原則から語る労働者派遣の本質論

弁護士  村田 浩治

1 本書の内容

このたび、民法協会長の萬井隆令先生の著書『労働者派遣法論』が出版された。4つの章で構成されているが、第1章「戦後労働法と労働者派遣」のタイトルをみるだけでも本書がこれまで労働者派遣を扱ってきた他の本と全く違うことは分かるだろう。

「労働者派遣」をテーマにした本を探すとノウハウと行政解釈を解説するだけのものが目立つなかで、原理原則に溯って労働者派遣制度から説き起こそうとする本は異色である。

第1章では、労働は商品ではないと宣言した「フィラディルフィア宣言」から「直接雇用の原則」を考え、直接雇用の原則からその例外である「労働者派遣」制度を批判的に検討する。偽装請負と、違法派遣、労働者供給の解釈をめぐる学説、黙示の労働契約をめぐる学説、団体交渉における使用者概念と派遣先使用者をめぐる論点を自説を展開するだけでなく、判例、学説における反対説に対し目配りをして丁寧に説き起こされておりそれが1章から4章にわたって展開される。

2 本書の魅力

本書は、労働者派遣制度を「物心ついた頃にはすでに派遣という働き方が当たり前に存在した」若い学者が「それをネガティブにみることには」「違和感しか感じない」として、労働者派遣を「価値中立的」概念として疑わない姿勢を批判し、原理原則に溯って検討する萬井先生の自説を丁寧に説き起こすため、少々難しいかもしれないが、しかし、労働者派遣を考えるときの基礎的な論点は網羅されている。

労働組合の方々(弁護士も)その多くが働き始めた時は「すでに労働者派遣があった」ため違和感を感じていないであろう。そのような労働者派遣を根本から疑うという姿勢で逃げることなく、その違法性の根本に光をあてて議論をすることは、きわめて重要だ。労働者派遣の事件の取組が大変な中で、この本が多くの方々に読まれ、議論されることを期待している。

但し、日頃議論をしていない者が通読するのは簡単ではないと思われる。じっくり議論をしながら読んで頂きたい。労働組合役員の方々には少なくとも第1章と第4章を読んでいただければ、「労働者派遣」の相談にも必要な知識と観点をもって、事件相談に当たれるようになること間違いない。今後派遣研究会でも通読教材とする予定である。

旬報社 2017年7月25日発行
定価 4600円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。

《書籍紹介》是非、ご活用下さい!『過労死・過労自殺の救済Q&A ―労災認定と企業賠償への取組み―(第2版)』

弁護士 上出 恭子

大阪過労死問題連絡会の弁護士で執筆をしました「過労死・過労自殺の救済Q&A―労災認定と企業賠償への取組み―(第2版)」が平成28年11月に民事法研究会から発行されました。

昨年は、過労死防止対策推進法に基づき過労死白書が初めて作成され、まさに過労死防止に向けての本格的な取組がさらに進む中で、電通新人社員過労自殺事件・労災認定の報道があり、改めて過労死問題への社会的関心が集まった年でした。

本書は、新人弁護士や一般の方にも分かりやすいよう、労災の認定基準を初めとする過労死問題の基礎知識の解説だけでなく、具体的な事例を取り上げての解説や最新の判例等にも言及し、過労死問題の実務を行う上で必要となる論点をほぼ網羅的に押さえています。幅広い立場の方にご活用いただけるものと思っております。

定価2200円(+税金)ですが、民法協にて割引の価格で販売を頂いておりますので、是非、お買い求め頂き、過労死問題の救済に向けてご活用下さい。

西谷敏著「労働法の基礎構造」を読んで

弁護士 河村  学

 「書評」を引き受けたものの、読んで見るとやはり難しく、クチンスキーが出てきて、ラートブルフが出てくると、正直「辛いなあ」という感じだった。ただ、そこを遮二無二乗り越えて行くと、平たく言えば、「労働法って市民法とそんなに違うものなの?」(2章)、「労働法って民法の特別法なの?」(3章)、「労働法の理念って生存権なの?」(4章)など、根本的な議論が展開されている。その後、「労働法における公法と私法」(5章)という毛色の違う論考を挟んで、西谷先生の自己決定論とそれを下敷きにした「労働契約と労働者意思」(6章)がある。労働者の(自由)意思の問題は、有期労働契約の不更新条項の解釈など労働法の多くの論点に関わり、「労働者」「労働法」観が問われる極めて実践的な問題である。

 ただ、読後感としては7章からが面白い。7章の「『労働者』の統一と分裂」では、有期労働・派遣労働・短時間労働・均等待遇の法政策の視点、管理職や多様な正社員をどう捉えるのか、労働者概念をどう考えるのかなど、表面に現れている基本的問題の考え方が述べられている。非正規労働のうち「実際に労働者自身が真に希望することがありうるのは短時間労働のみ」「日本の法制では、有期労働そのものが制約されないので、労働者の雇用生活の不安定性は解消されない」「労働者派遣という間接雇用の形態自体が労働者にとって有意味ということはない」など明快で、痛快でさえある。
労働者概念については、労組法と労働者保護法とで異なるだけでなく、労働者保護法内部でも異なり、例えば労基法上の各条項においても完全には一致しないとされる(西谷先生としては、指揮命令関係に関わる条項と、労働者の経済的地位に着目した条項に分け、その適用が異なる二種類の労働者として分類する立場を支持するようである)。さらには労働者概念に包摂されない労務提供者(非労働者)についても、「そうした存在を正面からとらえて保護・保障を与えることを考えるべき」とする。労働契約法との関係はあまり触れられていなかったが、賛否いろいろ考えさせる内容だった。

 8章は「労働組合と法」。労働組合の(もっと広く労働法における)個人と集団の問題は西谷先生の自己決定論からも関心の高いテーマであると推察されるが、その到達点が簡潔に示されている。その結論部分は、「個人と集団が『自律にもとづく連帯』の形で結合しなければならない」ということである。労働組合の歴史的成り立ちや法的位置づけ、日本の組合状況なども概観してのこの考察は今後の労働組合運動の方向性を考える上でも重要である。「ユニオン・ショップにもとづく企業別組合に発展の展望を見出すのは容易でない」、「地域ユニオンには、…『連帯』の精神が育ちにくい」など論争的な言及もあり、明示はされていないが一つの方向性を示しているようにも読める。

 9章から11章は労働法の解釈や裁判に関する問題である。学説の実務重視の風潮、利益衡量論の隆盛、労働判例の一貫した方法の欠如など、理論的・法的基礎を欠き、首尾一貫しない法解釈のあり方についての批判と考え方が述べられている。労働者保護規制の貧弱さ(労働法における立法の消極性)を補うという側面もあるが、最近の解釈のあり方として、一方では法律の形式的な解釈を貫き、他方では法律の文言を逸脱した目的論的解釈を行い、いずれも労働者保護を拒否する裁判例が続出している状況は「本当にひどいよな」と思ってしまう(p.283~292)。こうした判例・学説の現状、またこうした実務に振り回されている労働組合や労働弁護士の現状が、先生が本書を書かれた動機なのではないかとも思う。

 元にもどって1章から6章は、こうした労働法をめぐる現状を踏まえて、「労働法の基礎構造を解明し、かつ労働法がいかに変わろうとも守らなければならない基本的な価値と原則を明らかにする」(はしがき)ために設けられた諸章といえる(特に4章と6章)。そう読めば、ラートブルフもまた重要なのかも知れない。

法律文化社 2016年6月発行
A5版354頁 定価4000円+税

書籍紹介 『自治体職員の働く権利Q&A』と『新基本法コンメンタール地方公務員法』

弁護士 大江 洋一

4月に相次いで地方公務員の法律関係についての書籍が刊行された。どちらも日本評論社による出版であるが、一つは、自治労連弁護団のメンバーである弁護士たちの手になるものであり、もう一つは研究者による執筆である。

自治労連弁護団は平成6年に結成されているが、その前史として、労働戦線の統一を巡っての労労間の熾烈な「組合費裁判」を通じて、事件に関わった全国の弁護士たちの交流と連携があり、自治労連の結成とともに、その繋がりをもとに生まれ、発展してきたものである。その意味では、まさに、自治体労働者の権利擁護の第一線の実践部隊と言ってよい専門家集団である。

私もその末席をけがした一人であるが、結成の当時も『自治体労働者の権利』というような表題で類似のものをつくった記憶がある。しかし、当時の時宜に適ったものではあったが、パンフレットというのが相応しい体裁と中身であった。

ところが今回は、れっきとした出版社からの書籍である。自治労連弁護団が、広く社会的な存在として認知されたことを示すものと言ってよかろう。内容的にも、まさに今、職場で様々に問題化している実践的な項目が広く取り上げられており、検討すべき問題点を平易に示し、判例・学説・実例等を偏りなく引用して現状の到達点を明らかにしつつ、今後の方向性についても示す努力をしている。

個々の論稿には執筆者の名がない。これは、まず全体討議が尽くされ、個々の原稿について、編集にあたった者が全体に十分目を通して、偏りがないかをかなり厳しくチェックしたことが窺える。文字通り弁護団が集団責任でその叡智を集めたものと言ってよい。
労働者や労働組合幹部などにとってのみならず、弁護士にとっても、検討の指針と解決の方向性を探る上では、この本が極めて有益であり、是非推奨したい。

あわせて、より突っ込んだ検討を希望されるときは、後者の『コンメンタール』と一緒に活用されることをお勧めしたい。こちらはそれぞれの問題について精通した研究者の執筆であり、理論的要請にも十分こたえるものであって、この両書が相まって地方公務員法を正確かつ遺漏なく学ぶことができる。

現業・非現業・特別職・期限付き職員や臨時職員など地方公務員法制は錯綜しているが、編者の西谷先生が、スマートに整理されており、私のもやもやを吹き飛ばしてくれた。継受したドイツ法には無いこの混乱が、正されるどころか悪乗りされていることに対しての憤りがひしひしと感じられる。「抜本的な発想の転換」によって「労働法と行政法の統一」を図る課題が、今後を担う後輩たちに託されたと言えよう。

『企業誘致の闇 ―住民訴訟6年―大阪・堺市のシャープ誘致にみる問題点の分析と提言』を発行しました

弁護士 牧  亮太

 シャープに対する大阪府・堺市の公金支出差止(10年間にわたり、大阪府は補助金262億円を支出し、堺市は184億円の減税を行うことへの差止を求める)訴訟は、2009年7月の訴訟提訴から6年以上が経過しました。2016年1月に尋問を終え、佳境を迎えています。

このタイミングで、シャープへの公金支出差止の住民訴訟と運動を記したブックレット『企業誘致の闇』が発行されました。ブックレットでは、この6年に及ぶ訴訟の内容のみならず、シャープ工場誘致が決まった当時の各地域での多額の補助金を使った誘致合戦とその失敗の模様や、地域経済の発展を大企業誘致に頼ることの誤りが明らかになった今でも総合型リゾート(IR、カジノ)を誘致しようとする大阪の問題にも言及しています。

ブックレットを手にしていただく前に、この住民訴訟の特徴についてお伝えさせていただきます。
本訴訟の最大の特色は、2009年7月の提訴(住民監査請求は2009年4月)以降、シャープ工場誘致を正当化する根拠としての「公益上の必要性」がなかったことが次々と明らかになったことです。
この6年間のシャープの凋落は、改めて述べるまでもなく、多額の公金が流れている「シャープ工場」も今や、実質的には台湾資本である鴻海の所有となっています。また、大阪府も堺市も企業を立地するための条例を改正し(大阪府は、補助金の交付対象を1企業ではなく、1地域に変更。堺市は、減税期間を  年から5年に制限。)、企業誘致に多額の税金をつぎ込んだ自治体(三重県亀山市、兵庫県尼崎市・姫路市)では工場閉鎖が相次ぎ、企業が自治体に補助金を返還する事態も起きています。
そして、最も重要なことは、大阪府・堺市が多額の公金を支出する根拠として掲げた「経済的波及効果(シャープを誘致すれば、府民・市民にも経済的な効果が及び、それが公益に資するという意味)」が全く明らかにされていないことです。シャープ工場は訴訟をしている6年間も稼働し続けているわけですから、液晶パネルを作成するための労働者の雇用、材料の仕入れ、パネルの出荷等、どのように地元の企業に恩恵があり、府民・市民が経済的に恩恵を受けたのか、本来であれば明らかにできるはずです。
しかし、訴訟がはじまり6年以上経過した今も全く明らかにされていません。
上記で述べた明らかになった事実は、決して結果論ではありません。私たちは、一企業に膨大な税金をつぎこみ、優遇することの危険性を6年前から指摘しており、その指摘が正しかったことが時の経過とともに明らかとなったのです。

訴訟の内容を知り、結果にご期待いただくとともに、今後の地域経済やまちづくり、企業誘致のあり方を改めて考えるという意味でも、是非、本ブックレットを読んで下さい
ブックレットは、定価600円ですが、民法協会員の方は500円で購入していただけます。購入希望をされる方は、堺総合法律事務所までご連絡ください(電話:072―221―0016) 。

大川真郎 著 『裁判に尊厳を懸ける 勇気ある人びとの軌跡』

弁護士 宇賀神   直

 人が困難な裁判に臨むとき、試されるのは信念、勇気、忍耐、すなわち人間性である。事件の当事者はいかにして裁判を乗り越えるのか。その思いから大川真郎弁護士は自分が担当した事件から当事者らの知られざる素顔を描き出す思いで7つの裁判の当事者の闘いを書いています。私の読後感ではその思いは達成されています。

 その7つの裁判は、第1話 権力犯罪とたたかった二人の青年―和歌山大学生「公務執行妨害」事件。第2話 守り抜いた憲法の理念―杉山弁護士接見妨害。第3話 暴力から議会制民主主義を守った市議―斎藤八尾市議会議員除名事件。第4話 私たちに青空を―四日市公害訴訟。第5話 それでも私は働き続けたい―日本シェ―リング労働裁判。第6話 『嘘構の嵐』に立ち向かった医師―近畿大学「医療過誤」裁判。第7話 美しい島を後世に―豊島産業廃棄物不法投棄事件。

 この7つの裁判のどれもが裁判本人の苦労と奮闘の足跡が事実に裏付けられて書かれております。民法協の会員には是非とも読んで欲しいと思うのですが、私が特に奨めたいのは第5話の日本シェ―リングの労働裁判闘争です。この会社と労働者、労働組合ではあらゆる不当労働行為と権利侵害の手本がある、と言う、会社から攻撃を受けた労働組合と労働者が20年間も永きに亘り闘い東京地裁(中労委命令に対する会社の取消訴訟)で全面的な解決の和解が成立した。この  年の闘いを振りかえり、その間の単組と上部団体、そして弁護団との時には厳しい遣り取りが書かれています。特に組合員の1人1人が厳しい中での宣伝活動、会社への抗議・申入れ活動などが書かれています。読めば沢山の知恵が付きそれとやる気が起きます。

 大川弁護士は民法協で活動し、労働事件の裁判闘争で頑張り大きな成果を挙げ、その後、国際法律家協会の活動に、そして弁護士会の活動に足を入れて力を出し、日弁連の事務総長、日本司法支援センタ―の常務理事に就きそれをやり遂げて現在に至っています。私は「裁判に尊厳を懸ける」を読んで以前の大川弁護士を思い出しました。

 この本は大川、村松、坂本法律事務所で手にすることが出来ます。
 1700円を1500円で
 電話06―6361―0309

発行 日本評論社
定価 1700円+税