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再審法改正案に反対する声明

2026年6月19日
民主法律協会 会長 豊川 義明

 

1 再審法改正案の状況

2026年6月16日、政府が提出した「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(再審法改正案)が、衆議院本会議において可決された。本法案の基礎となった法制審議会の答申は異例の複数の反対・棄権を伴って採択され、元の政府案は一部修正されたうえで衆議院に提出・可決に至った。しかし、本法案の内容は、2025年の衆院解散により廃案となった超党派の議員連盟案の内容からは大きく後退している。えん罪は、市民の誰もが巻き込まれる可能性のある深刻な人権侵害であり、国家による最大の権利侵害の一つである。戦後長らく「開かずの扉」と批判されてきた再審規定の見直しは、えん罪被害者の迅速な救済を最優先とすべきである。しかし、以下の通り、本法案はかえって救済を困難にする危険性をはらんでいる。

2 検察官抗告の例外規定

本法案は、検察官の抗告を原則禁止としつつも、「十分な根拠がある場合」に例外を認めている。しかし、再審請求手続において検察官は当事者ではなく、抗告の権限を認めること自体が上訴制度の趣旨と整合しない。ドイツ等では検察官の抗告は禁止されている。本法案のように抗告の余地を残すことは、袴田事件等で繰り返された救済遅延のリスクを温存させるものであり、検察官の「公益の代表者」たる要請にも即さない。実体判断は再審公判で行うべきであり、抗告は全面的に禁止されるべきである。

3 証拠開示要件と「原則開示」見合わせ

証拠開示を命じる制度が新設されたものの、対象は請求理由との「関連性」が認められる証拠に限定され、裁判所が「必要性」や「弊害」を総合考慮する仕組みとされた。これでは、証拠開示の範囲が不当に狭められる危険がある。また、えん罪証明の糸口となる「証拠一覧表」の弁護人への義務的開示が見送られたことも、検察官の証拠隠しを事実上許すものであり、容認し難い。えん罪被害者救済のためには、証拠の原則全面開示、最低でも証拠一覧表の義務的開示が不可欠である。

4 罰則付きの「目的外使用禁止」規定

プライバシー保護を名目に、開示証拠の法所定の目的以外での使用を禁じ、1年以下の拘禁刑などの罰則を設けたことは、弁護団が支援者と連携して行う検証活動等を強く萎縮させるものである。袴田事件では、支援者が開示された証拠を入念に検討した結果、捜査機関による証拠の捏造等が明らかとなり、再審無罪となった。目的外使用禁止は、このような支援者による真実解明の道を閉ざしうるものであり、容認できない。

5 「調査手続」と「裁判官除斥」規定

書面審理のみで請求を棄却できる「調査手続」の導入は、獄中からの手紙で再審が開始されその後無罪となった財田川事件のようなケースをも門前払いする危険性をはらんでいる。また、再審開始決定に関与した裁判官を再審公判から除斥する規定は、事案を熟知した裁判官を交代させ、徒に審理を長期化させる懸念がある。再審請求審と再審公判は一連の手続であり、同一の裁判官が担当することは当然のことであって、現にドイツや台湾ではそのような制度となっている。

6 抜本的な改正案の成立を求める

本法案の目的は、えん罪被害者の「非常救済手続としてより適切に機能するようにする」点にある。再審請求審について、検察官の抗告に制限を付した点、抗告がなされた場合裁判所は1年以内に決定する努力義務が設けられた点等は、この目的に整合するものであり、一定の評価に値する。もっとも、上述した通り、本法案は、その目的に逆行する効果をもたらしうる規定も含むものである。当協会は、上記の目的を実現し、えん罪被害者を一人も出さない刑事裁判を実現するために、検察官抗告の全面禁止と、証拠一覧表の交付を含む全面的な証拠開示の義務化を盛り込んだ、抜本的な改正案の成立を求めるものである。

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