民主法律時報

職員の政治的行為制限条例 市民との共同を妨害する時代錯誤の条例案

橋下徹・大阪市長は、6日に始まる大阪市議会に「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を提出する意向を明らかにしています。条例案は、大阪市の職員について、国家公務員並みに政治的行為を制約し、違反した場合には原則として懲戒免職にするというもので、職員の政治活動の自由を侵害する違憲、違法の条例案です。

★政治活動の自由は重要な基本的人権★

誰もが、ある時の社会や政治のあり方について意見を持ち、その意見を表明して共感を得たり、異なる意見を持つ人と議論をすることにより、より望ましい社会・政治へと変革させることに加わることができます。そうした議論や政治への参加を保障してこそ、社会や政治の発展・成長がもたらされます。そうした意見表明・意見交換や政治過程への参加が時の権力者によって妨げられることになれば、その社会は窒息させられるでしょう。誰もが自由に政治活動を行うことのできる権利を保障することは、自由で民主的な社会にとって不可欠といえます。この自由は、公務員であっても、等しく保障されるべきであることは言うまでもありません。

橋下市長は、市職員が特定の市長候補を応援することがさも市の運営を阻害するかのように述べて、条例案を正当化しようとします。しかし、上記のような自由と民主主義の基本的な理解に欠けるものであり、重要な基本的人権である政治活動の自由を制約する根拠とはいえません。

★国公法の規制は時代錯誤★

条例案は、規制の対象となる職員の政治的行為の範囲について、国家公務員法の規制に準じたものにしようとしています。

しかし、国家公務員法・人事院規則14-7による国家公務員法に対する政治活動の規制について、2008年には、国連自由権規約委員会が、日本政府に対し、表現の自由および政治に参与する権利に対するあらゆる不合理な制限を同法から撤廃すべきである旨の勧告を行っています。このように国際的にも問題視されている国公法に準じて、職員の政治的行為の規制を広げようというのは、時代に逆行するものというべきです。

★条例案では市民と公務員の共同を妨げる★

加えて、条例案のような規制がなされれば、よりよい市政の実現をめざして市職員が市民と共同することが妨げられてしまいます。

例えば、橋下市長は、関西財界の意を受けて、地下鉄民営化を掲げていますが、条例案2条(5)では、市の職員が休日を含む勤務時間外に参加した集会で、地下鉄民営化反対を訴えることも、懲戒免職の対象になりかねません。

橋下市長の条例案提出のねらいは、物言わぬ職員・職場へと市役所を変質させ、住民の願いに背く政策をごり押しする体制をつくる点にあるといえます。異論を許さない非民主的な市政を許すわけにはいきません。

★条例案の提出・成立の阻止を!★

民主法律協会は、2012年6月8日、会長声明「大阪市職員の政治活動禁止条例案に対する声明」を公表して、自由と民主主義、よりよい市政の実現を願うすべての市民のみなさまと共同して、条例案の提出・成立を阻止する決意を明らかにしました。条例案NO!の声を大阪市役所に集中させてください。

抗議文例(wordファイル)

抗議先:大阪市人事室人事課 FAX 06-6202-7070

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