民主法律時報

裁判・府労委委員会例会 「東リ偽装請負事件」の報告

弁護士 長瀬 信明

2021年6月3日(木)18時30分からオンライン(Zoom)とリアル併用で裁判・府労委委員会の例会が開催され、15名が参加した。

今回のテーマは、東リ偽装請負事件であった。この事件は、東リ株式会社の伊丹工場に「請負」名目で派遣され、東リの従業員と全く同じように就労していた労働者が、当時の偽装請負会社社長からのパワハラを契機として労働組合を結成し、偽装請負に気付き、東リに対して派遣法のみなし規定による直接雇用確認を求める中での争議であり、現在、①地位確認請求訴訟(対東リ、控訴審で審理中)、②不当労働行為救済申立(対東リ及び現在の派遣会社、中労委で審理中)、③損害賠償請求訴訟(対現在の派遣会社)の3つの手続きが進行している。

本件は、偽装請負だけではなく、東リと現在の派遣会社による組合を嫌悪しての「採用拒否」(旧偽装請負会社から新派遣会社への労働者の移籍の際に組合員のみ不採用とした不利益取扱い)など、複数の問題が絡み合った紛争になっている。

当日は、原野早知子弁護士の司会進行で、まず、原告の方から上記事件の概略について説明があった。その後、弁護団の安原邦博弁護士が長年行われていた偽装請負の点について、様々な証拠を示して熱く語った。結果として、地裁では偽装請負と認定されなかったのであるが、裁判所がまったく証拠(工場長の(原告らと他の社員とで業務の内容が)「まったく変わらない」という供述等)を見ていないのか、見て見ぬふりをしているのではないかと述べるなど、悔しさがひしひし伝わってきた。

質疑応答では、偽装請負が否定された理由について質問がなされ、弁護団から、指揮命令についての解釈、行政(労働局)が違法であると認定していないことの影響、証拠を厳選しすぎたのではないか等の回答があった。また、弁護団としてもう少しやれたことはないかという質問もなされ、弁護団の村田浩治弁護士、大西克彦弁護士から反省点や課題について述べられた。

その後も出席者で意見交換も行われ終了した。
中労委も地裁にかかっている事件も大阪高裁の結果待ちとのことであるが、大阪高裁で完全勝利を祈るばかりである。

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