不当労働行為・労働委員会制度の改善のために

2020年04月05日

島根大学名誉教授 遠藤 昇三

権利討論集会の第1分科会(労働委員会をどう戦うか)で最後に発言の機会を得ましたが、それを以下に文章化します。併せて、報告・議論で出された不当労働行為・労働委員会制度の改善(私も一部その発言に含めましたが)について、提言させて頂きます。

1.発言

当該事例における様々な差異や事情を捨象して基本的なスタンスとして言えば、不当労働行為に対する戦いは、まずは労働者・労働組合の自力による解決が必要であり、それが不十分なり成功しなかった場合、労働委員会の救済制度(裁判を含め)に頼るということであることです。そして、労働委員会(裁判を含め)の戦いを、孤立したまたは担当者任せの扱いにするのではなく、労働組合運動全体の一環に正しく位置づけ取り組むべきです。また、戦前以来強調された「モ・ヒ・ベの団結」を徹底させることが、必要です。即ち、労働委員会の救済を求めた当事者(労働者・労働組合)、弁護団、当事者を取り巻く労働者・市民の団結、そしてその総力で以て、労働委員会・裁判所という初めからは労働者の味方ではないものを味方にする(救済を求めた側にとって有利な判定・判決を引き出す)という取組みが、必要です。

迅速性や実効性等にいろいろ疑問なり問題がある労働委員会制度ではありますが、もし労働委員会制度がなければどれだけのまともな労働組合が生き残れたか、と総括して良いところです。それだけに不当労働行為・労働委員会制度のより良いあり方を目指して、改善が求められるところです。

2.不当労働行為・労働委員会制度の改善に向けた提言

(迅速性の確保)

不当労働行為・労働委員会制度は、不当労働行為の迅速な救済を目的としています。しかし、それに反する状況にあるのですが、その最たる問題は、5審制となっていることです。即ち、使用者に異議ある限り、労働委員会段階では命令が確定せず、地裁・高裁・最高裁でようやく確定する(命令支持であれ)ため、紛争が長引くということです。これを改善するためには、労働委員会段階で命令を確定する制度に変える必要があります。これに対する不安は、申立て棄却の場合、裁判の道が閉ざされることにならないかということでしょうが、これに関しては、たとえば不当労働行為を理由とする損害賠償請求訴訟を起こすといったことが考えられますので、いずれにしても、当事者たる労働者・労働組合にデメリットはないと思います。

(実効性の確保)
緊急命令制度及び労委命令の確定判決による支持の場合の違反に対する刑罰と確定命令違反における行政罰があります。しかし、緊急命令制度においては、労働者・労働組合は当事者ではなく、労働委員会任せである上に、望ましい緊急命令が出る保証はありません(その上、必ずしも活用されていません)。後者とりわけ刑事罰は、不当労働行為と違反との間の間隔の開きもあって、現実には機能していません。
不当労働行為の厳格な禁止としての実効性の確保だとすると、不当労働行為処罰規定の導入が考えられます。しかしそれは、旧労働組合法時代に経験があり必ずしもうまくいかなかったことから、次のようなことが考えられます。上記の労委命令確定制度を前提として、その命令違反に対する処罰とする(現行の行政罰の処罰化)のです。

(労働委員会の再編成)
中労委が東京に一つしかなく、中労委にかかった場合の労働者・労働組合の負担は大きなものがあります。この負担軽減のためには、中労委の「支局」をたとえば高裁のある地域に設け、そこで審査・判定を行えるようにすることが、望まれます。
他方、ほとんど事件がない県労働委員会を、たとえば中国ブロックで一委員会とする改革を、求めて良いと思います。各県最少でも公・労・使15名を任命することになりますが、大きな無駄のように思います。そして、たとえば東京・大阪等申立ての多い地域の委員を増やせば、迅速性を確保出来るでしょう。