《書籍紹介》『日韓比較労働法3 韓国労働法の展開』(旬報社)を読んで

2020年04月15日

弁護士 中村 和雄
(京都/市民共同法律事務所)

 民法協の会員であり民法協がもっとも頼りとする労働法学者の一人である脇田滋さんが編者の一人である『日韓比較労働法3 韓国労働法の展開』が旬報社から出版されました。この本は、2010年に始まった日韓の労働法研究者らの共同研究「日韓労働法フォーラム」での報告内容をまとめたものの第3弾です。2014年第7回以降のフォーラムの研究成果報告がまとめられています。フォーラムは毎回テーマを設定して日韓の報告が行われているのですが、本書では読者に理解しやすいように各回のテーマを並び替えています。第1章「朴政権下の労働市場改革と労働法の課題」、第2章「文政権下の労働法改革」、第3章「雇用平等法の現状と課題」、第4章「労働者派遣法の分析」、第5章「労働時間規制の現状と課題」、第6章「個別労働紛争の解決」となっています。

本書は全部で16節から構成されており、うち2節が脇田さんの報告、うち4節が韓国研究者の報告を脇田さんが翻訳したものです。ご承知のとおり、脇田さんはわが国の労働法学者の中で最も韓国労働法と労働運動を理解している学者です。1985年にわが国で派遣法が成立しました。多くの労働法学者がその有用性を指摘する中で、派遣法の適用対象は年々拡大し、もはや例外とは言えない存在になってしまいました。脇田さんは、成立前から派遣という働き方の危険性を指摘し、一貫して派遣の導入・拡大に反対してきました。韓国労働界がこうした脇田さんの研究や活動をネットで知り韓国での講演を依頼したことが、日韓の労働法研究交流の契機となっています。

韓国労働法も、他の法分野と同様に以前は日本法を見本としていました。しかし、その後欧州の進んだ法制を積極的に取り入れて制度改革をはかるなど、労働者の立場から見てわが国より進んだ法制が随所に見られます。労働時間規制や非正規の正規化などは大変参考になります。わが国と韓国の労使関係を始めとする労働環境はかなり近似しています。これまでわが国の労働法や労働運動の研究・交流はヨーロッパに偏重していましたが、韓国の法制度や労働運動はわが国の制度や運動の在り方を考えるにあたって、極めて学ぶことが多いのです。多くの皆さんが、本書をお読み頂き、わが国の制度改革や運動の在り方を考える参考にして頂ければ幸いです。そして、民法協でもさらに韓国との交流を深めていきましょう。

旬報社
2019年11月30日 発行
A5・300頁
定価 5000円+税