民主法律時報

秋の憲法大学習会が開催

弁護士 須井 康雄

2018年10月14日、大阪憲法会議・共同センターの主催により、中央区民センターホールで秋の憲法大学習会が開かれた。大阪憲法会議には、民法協も参加している。
丹羽徹幹事長の開会あいさつののち、戦争をさせない1000人委員会事務局の山元一英さんから連帯の挨拶があった。山元さんは、北朝鮮情勢に触れつつ、イデオロギーや路線を越えて戦争のできる国づくりに反対することの重要性を訴えた。
続いて、女子高校生と新婦人の女性からの憲法に関するスピーチがあった。高校生は、アルバイトで団体交渉をした経験から、労働基本権をはじめとして憲法が日常生活に密接にかかわっていることを訴えた。新婦人の女性は、署名集め目標の達成状況を報告した。

その後、渡辺治一橋大学名誉教授が「安倍9条改憲の危険性と発議阻止にむけてのたたかい」というテーマで講演した。渡辺教授のお話は次のとおりであった(筆者の理解による。)。
安倍総理は、イメージや参考資料などどんな名目でも、とにかく今秋の憲法審査会に自民党の改憲案を出し、国会の3分の2をとって、来年、再来年で憲法改正を発議するということを考えているとのことである。安倍首相がいる限り、改憲の動きは止まらず、3000万人署名と共同の力をもって止めるしかない。

安倍総理は、戦争法を成立させたが、市民と野党の共同がある限り、アメリカ追随の軍事大国化が実現できないことを知っている。だから、維新の会や公明党の案を唯々諾々と取り込んでまで、憲法改正に執念を燃やす。
市民と野党の共同のもたらした成果は2つあり、1つは、立憲民主党が野党第1党になり、改憲反対を訴えるようになったこと、もう1つは、選挙協力ができれば、改憲派による衆参両院での3分の2の議席獲得を阻止できる状況が生まれたことである。

自衛隊明記案の危険性は4つある。確信をもって署名集めするためによく理解する必要がある。①1950年代の自衛隊ではなく、戦争法により海外で戦争ができるようになった自衛隊が合憲化される。憲法裁判を封殺できる。②9条2項は残るが死文化する。国民が圧倒的に支持している自衛隊は、人殺しの軍隊としての自衛隊ではなく、災害派遣にいく自衛隊であり、海外で人を殺さない国際貢献の自衛隊である。③9条だけでなく日本国憲法全体が変質し、非常事態規定、軍法会議などにつながる。オスプレイの監視もできなくなる。日本の人権状況が大きく変わる。④朝鮮半島の非核化、話し合いの方向と逆行する。

安倍改憲にどう取り組むか。ポイントは2つ。1つは、強行採決をすると支持率が下がるので、強行採決ができない。もう1つは、自公も一枚岩ではない。3000万人署名で改憲勢力の見識が問われ、大運動になる。
改憲を葬る鍵は2つ。3000万人署名と共闘の強化。安倍改憲に反対するという点で一致し、各政党が成長する必要がある。
3000万人署名は4つの力を持つ。①地域選出の国会議員、地方議員に改憲問題を説得して、態度をはっきりさせる。②3000万にとどまらず、5000万、6000万の国民に改憲反対を訴えることになる。③9条の会が増えるにつれ、改憲賛成派が減る。④署名の取組を通じて共闘の土台ができる。
詳しくは渡辺教授著「戦後史の中の安倍改憲」(新日本出版)をお読みいただきたい。
渡辺教授は、最後に「憲法を守る政治を実現しましょう」と高らかに宣言し、会場は大きな拍手に包まれた。
その後、山田憲司事務局長の行動提起、菅義人副幹事長の閉会挨拶で終わった。

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