民主法律時報

「固定残業代」について議論しました  ~ブラック企業対策! 判例ゼミ

弁護士 清水 亮宏

1 2018年9月の判例ゼミ
2018年9月27日(木)18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。約20名が参加し、大いに盛り上がりました(司法試験合格者の方にも3名ご参加いただきました。)。
今回のテーマは「固定残業代」です。固定残業代はブラック企業で悪用されるケースが多く、残業代不払いや長時間労働の温床になっています。昨年から今年にかけて、注目判例が出ていることから、テーマとして取り上げました。

2 検討した判例・裁判例
まず、康心会事件(最判平成29年7月7日 労判1168号49頁)(差戻審 平成30年2月22日 労判1181号11頁)について、安原弁護士から報告いただきました。高報酬の勤務医について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないとして、固定残業代を無効と判断した事例です。給与が高額であること等を理由に固定残業代の有効性を肯定したモルガン・スタンレー事件(東京地判平成17年10月19日)の判断が最高裁によって実質的に否定されたこと、労基法 条の趣旨が時間外労働等の抑制にあることを最高裁が改めて確認した点に意義があること等を確認しました。

続いて、加苅弁護士から、日本ケミカル事件(最判平成30年7月19日 ジュリスト1523号4頁)について報告いただきました。ある手当が時間外労働等に対する対価として支払われたものといえるか否かについて、一定の判断基準を示した判例です。判例のあてはめをどのように解釈すべきか迷う部分もあり、実務にどのように影響するかについて様々な意見が出されました。

最後に、私からPMK事件(東京地判平成30年4月18日)の報告を行いました。会社説明会・入社説明会・事前研修において固定残業代について説明したとする会社側の主張を否定し、固定残業代の合意を否定した事例です。採用過程における労働者のメモ等が固定残業代の合意の有無を示す有力な証拠になり得ること等を確認しました。

3 さいごに
その他、固定残業代制度そのものの問題点、清算条項・清算実態が固定残業代の有効要件といえるか、割当金額・割当時間のいずれかが明示されていない場合に明確区分性が認められるかなど、様々な点について議論しました。

次回の判例ゼミは11月28日(水) 時 分~@民法協事務所です。ぜひご参加ください!(ゼミの中盤では、西田弁護士の岡山土産「源吉兆庵のお月見羊羹」をおいしくいただきました~。西田弁護士、ありがとうございました。)

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